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29歳がアーニャになった話

私は29歳でアーニャになった。

学生時代は陰キャを極め、就職もとりあえず、現在も一人カラオケや一人焼肉に行くようなしがない経歴である。
そんな私が、何を言っているか分からないと思うが、SPY×FAMILYの主人公の娘、アーニャになった。

経緯はというと、学生時代の先輩でもある友人と会った際、ノリで彼女にコスプレをしてみたいと話したのがきっかけだ。
私は可愛くなりたい願望があった。
コスプレで別人になってしまえば簡単に可愛くなれるのではという下心があった。
コスプレの内容は何でもよかった。
元よりコスプレを嗜んでいる彼女は、突然の私の願望に関わらず快諾してくれ、さらにコスプレをしたいわりに内容も決まってないというクソみたいな私にSPY×FAMILYを提案してくれた。
SPY×FAMILYのコスプレといえば、主人公家族のアーニャとヨルさんがすぐに浮かぶ。

こんな感じで巻き込んでしまった友人は高身長スレンダー美人。
彼女がヨルさんを担当するのは自然の摂理。
彼女のヨルさんを絶対に見たい。
何としてでも見たい。
という事は。
153センチ、低身長の私がアーニャになるのも自然の摂理。
「私がアーニャになるんですか…!?」
真理に辿りついた瞬間、人生で一度言うか言わないかのそんな言葉が無意識に出た。

私がアーニャになる事は何ら問題ではない。
この世は多様性の時代。
いつどこで誰がアーニャになろうと不思議ではない。
気持ち的には「えっ?私がプリキュア!?」
とプリキュアに抜擢された少女達と同じだ。
ものすごく光栄だが、三十路にリーチがかかった自分にアーニャが務まるかという恐れ多い心境だ。
アーニャと言えば、可愛い女の子というのが共通認識だろう。
対して私はクソ面長だ。

それでもアーニャになると決めたからには、YouTubeで先人達のメイクを覚えることにした。
私はアイシャドウやチークはチップや指派で、初めて使ったブラシの便利さだったり、日常生活では決してないほどのメイクの濃さだったりに驚きっぱなしだった。
届いた衣装とウィッグをしてYouTubeのメイク動画を見ながら宅コスをしてみると、思ったよりはなんとかなった。
メイクは何とかなる。
だが、アーニャといったら緑の瞳。
最初にして最大の壁は、カラコンだった。

私はコンタクトが初めてだった。
目に手を突っ込んで異物を入れる。
そして目に手を突っ込んで外す。
手術?
その様子を見た第一印象がそれだった。
これは裸眼族の総意ではないだろうか?
小学生の頃は眼鏡だったのが、いつの間にかコンタクトになっていた多くの同級生。
彼らは毎日こんな凄いことをしていたのかと思うと頭が上がらない。

初めてコンタクトをするには、カラコンだろうと医師の診察と処方箋が必要という。
早速コンタクト検査ができる眼科に走った。
技師さん曰くコンタクトは綺麗なゴミを目に入れている状態のため、違和感がすごい。
コンタクトの皆さんは毎日綺麗なゴミを目に出し入れしているのかと思うと、さらに頭が上がらない。
初めは技師さんに着脱してもらえるが、自分で着脱できなければ意味がないため、練習をすることに。
その内容は、自分で2回着脱出来たらよいというものだった。
技師さんの手を借りずに自力で2回着脱できるまで帰れま10だった。
いや帰れま2か?
手を清潔にして、コンタクトの向き、角度に気を付けながら異物感に耐えて入れる。
外すときは目玉に触りながら一思いに掴んで引っ張る。
目玉に触ろうとする指から目を逸らしたくなるけど、逸らしてはいけない。
恐怖から目を逸らし続ければ解決は遠くなる。
コンタクトの着脱は自分との戦い。
逃げない者だけが次のステージへ行けるのだ。

今この記事を読んでいて、これからコンタクトデビューの予定があり怖いと思っている方へ。
コンタクトの着脱は恐怖から逃げず、恐怖をまっすぐ見据える力(物理)が身につきます。
それに、一思いにやるという思い切りのよさも身に付いて、コンタクトを通してあなたを成長させてくれると思います。
安心してデビューに挑んでください。

アーニャになることになった時は私がアーニャとか早速ネタだろうとか、本当に自分でいいのかとか不安があったが、もう私がアーニャになることが当たり前に思えるくらい覚悟ができていた。
むしろ私がアーニャだ。
当日はドヤ顔で得意げにカラコンを入れ、研究したメイクをし幼児のような無垢な表情を作って、ヨルさん役の友人と挑んだ。

結果はというと、惨敗だった。
写真写りの悪さに膝から崩れ落ちた。

どうあがいてもアーニャ(29)だった。
対して、友人のヨルさんは絶景の中の絶景で、自分はこの程度なのだと現実を突きつけられた。
コスプレに勝ち負けはないのに、こればかりは自分の理想に負けた。

今回のイベントで分かったことが2つある。
コスプレでの撮影はとても体力がいる。
数時間屋外で直射日光に晒されながら背景に人が映らない場所という理想郷を探して長距離を練り歩き、たどり着くたびにカメラに笑顔を作る。
私は半日のコスプレと撮影だけで疲れたのに、中には日中の他イベント帰りの夜にコスプレをするレイヤーさんもいると。
世のレイヤーさんは何でこんなに体力あるの?と凄さを感じた。

もうひとつは、中途半端なコスプレでは可愛くも別人にもなれない。
「コスプレすれば可愛くなれる」というのは幻想で、自分の準備不足が目立った。
初めてのコスプレで楽しくはあったけど、納得できる出来とは限らない。

そんな私だったが、友人はなんと夏のイベントにも誘ってくれた。
こんな私でいいならいくらでも参戦してやらぁ!!!!!
と熱い約束を交わしその日は終わった。

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実は上記は去年の冬のことでしたが、なかなか書けず久しぶりの投稿になってしまいました。
いくつになっても青春はあるのだと思った楽しくも苦い本当に大事な思い出で、友人にはとても感謝しています。
ヘッダーに私のアーニャを載せるつもりでしたが、やっぱりやめました!
写真は自分が納得できるアーニャになってから載せたいと思います。
次回イベントはまだ先なので、気まぐれペースですがまた読んでいただけたら嬉しいです。


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