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『OCTOPATH TRAVELER 2』《感想・評価》

 オクトパストラベラー2、やりました。
 1週間狂ったようにやりましたが、いわゆるJRPGが好きという方なら「買い」で良い作品かと思います。体験版をやった時点では「まあ前作とほとんど同じだなこりゃ…」という感じで様子を見ようかと思いつつ、発売前のメタスコアがやたら高かったのを見て、結局発売日に購入してしまいました。
 結果、微塵も後悔していません。前作と同じなようで、確実に進化しているのが非常に好印象でした。

『オクトラ』からの進化

 『オクトパストラベラー』(初代)は2018年7月に第1作が発売された正統派JRPGであり、「君だけの物語」をテーマに、8人の主人公から好きなキャラクターを選んで編成し旅に出るというシステムを採用しています。8人はそれぞれが特徴的なスキルと「フィールドコマンド」を有しており、組み合わせ次第でさまざまな冒険を楽しめます。
 そのゲームプレイ全体の中において、

「HD-2D」という革新的なピクセル表現。

西木康智氏の楽曲(中でも各主人公のテーマ曲と汎用ボス戦闘曲の接続を行う「バトルエクステンド」は大変評判になりました)。

③古き良きコマンドバトルに「ブレイク」と「ブースト」によるメリハリを加えた戦闘システム

などが特に高く評価されていたかと思います。
 対して、各主人公それぞれのストーリー自体は平凡との評価に収まっていた印象です(裏ボスまでの展開はかなり意外性がありましたが)。また、8人で旅をしているテイになってはいるものの、目的も境遇も大きく異なる8人が共に旅をしていることに非常に違和感がある……より正確に言えば、その違和感に物語的なフォローが無いことが度々指摘されているのも目にしました。

 そして、2023年2月に発売された『オクトパストラベラー2』は上記の評価点を確実に進化させながら、ストーリに関しても改善が見られる出来となっています。
まずは評価点から見ていきましょう。

HD-2D表現
 前作から今作までの間に、『TRIANGLE STRATEGY』『LIVE A LIVE』(リメイク版)といったHD-2Dを利用した作品が発売され、作品を追うごとに確実に進化を重ねていました。「オクトラ2」では、前作より精緻になった描き込みや立体的な戦闘時の表現やマップの構造にその進化が現れています。

マップを遷移する際の方向のバリエーションも豊富になっている印象です。下記動画では縦軸方向に下側、横軸方向、そしてプレイヤーから見て奥側という3方向のマップ遷移が一つの街の狭い範囲に集まっているのがお分かりいただけると思います。
単に綺麗になっただけでなく、前作でも既に高かったマップの密度がさらに強化されており、探索のモチベーション向上にも繋がります。


楽曲
 
楽曲に関しては正直一切心配していませんでしたが、こちらは前作でも行いつつ更にできることを増やしたという印象です。
特に昼夜を変更した際に全く違和感なくBGMが切り替わるのは、昨今のゲームでは基本と言えるかもしれないとは言えやはり流石です。

また、前作同様「バトルエクステンド」……各主人公のテーマ曲から非常に自然にボス戦曲にBGMを遷移させる曲作りを行っています。今回は主人公のテーマ曲だけでなく、主人公のテーマ曲ではないBGM(下記動画冒頭)までもが汎用のボス戦BGMに遷移されており、前作プレイヤーの予想を上回ることもありました。

各主人公の最終章のボス戦のBGMは、最初に聴いたとき非常に驚くと共に感動すら覚えましたが、これに関しては是非プレイして確かめて頂きたいなと思います。

戦闘システム
 
今作の戦闘も、基本的には前作の「ブレイク」(弱点を突き、敵を行動不能にさせる)と「ブースト」(毎ターン蓄積されるBPを消費して技の性能を高める)を軸にしたものを継承していますが、追加で「底力」「EXアビリティ」が実装されています。
 各主人公にはそれぞれ「ベースジョブ」=「主人公固有の変更できないジョブ」と「バトルジョブ」=「付け替え可能なジョブ」があります。「神官」ベースのキャラに「狩人」ジョブのスキルを扱わせたり、「剣士」ベースのキャラに「薬師」ジョブのスキルを扱わせたりできるのです。このシステムによって非常に高いパーティのカスタマイズ性を誇っている本シリーズですが、前作ではジョブ間の格差が大きいことで明確な主人公格差が生まれていました。それを踏まえてか、今作では各主人公にしっかりとした固有の能力が与えられています
 「底力」は、敵の攻撃を受けたり、敵をブレイクしたりすることで蓄積される「底力ゲージ」を消費して発動する技です。「2回行動をする」や、「全体対象の魔法を単体対象に変化させて、威力を高める」など、各主人公の得意分野をより明確にしていると言えます。また、「EXアビリティ」は、各主人公の「ベースジョブ」のみが使えるアビリティです。例えば、「神官テメノス」のEXアビリティは、「神官」のバトルジョブを装備した別の主人公では使うことができません。こちらのEXアビリティはかなりユニークなもの揃いで、「盗賊ソローネ」の「変装」(他の主人公に変身して、変身相手のスキルを使えるようになる)などは非常に面白いと思います。「神官テメノス」の「超過回復の祈り」(味方のHP上限を実質的に増やせる)に関しては、前作で「神官」バトルジョブを育成することで誰でも取得できた「回復上限突破」の互換と言える性能であり、これを「神官テメノス」しか扱えないのを見るに、やはり各主人公の差別化はかなり意識して行っているように見えます。
 「このキャラだからこそできること」が前作に比べて圧倒的に多く、いわば「ビルド」を考えるような面白さが高まっており、この試みは成功していると言っていいでしょう。

 以上を見ていくと、「昼夜の変更」システムが個人的にはかなり上手く働いているように思います。探索の幅の広がりやBGMの更なる進化にそれが現れているかと思います。昼夜2パターンの探索をしなければいけないのは手間が増えたと感じるプレイヤーもいるかもしれません。個人的にはRPGの探索要素は多くてなんぼ・豊かでなんぼだと思うので歓迎したい手間ですね。
 加えて、これは戦闘のみならず物語での描写にも言えますが、各主人公により強い個性を与えようとする試みも上手く行っています。

正統な進化だが、予想を上回る進化である

 本当はストーリーにも言及したいのですが、大大大ネタバレなので一旦まとめてしまった後に。
 私は、RPGをシリーズとして作るのであれば、2作目が1作目と比べて進化していないということは可能な限り無くして欲しいと思います
 「進化するシリーズ」という観点で言えば、ガストの「アトリエ」シリーズ…特に「不思議」以降を高く評価しています。「ソフィー」で築かれたパズル式調合がその後の「フィリス」「リディー&スール」を経て進化していったり、「フィリス」で挑戦され、その時はまだ発展途上だった「広大なフィールドでの採集と『旅』」が「ライザ」「ライザ2」で着実に進化し、「ライザ3」で結実しようとしていたりする点が非常に好印象です。
 ですので、最初に体験版を1時間ほどプレイした時に感じた「変化がない」という感想はかなりバッドイメージでした。しかし主人公全員の第1章をクリアした辺りになれば、もうこの作品の進化にただ頷くことしかできません。前作の悪い部分を改善し、新鮮な感動や楽しさを与えようとする意識が感じられることに感謝を禁じ得ません。スクエニ浅野チームの次なる作品がますます楽しみになる出来栄えであり、多くのRPGファンに遊んでほしい傑作と言えるでしょう。



以下ネタバレありの感想






『オクトラ2』のストーリー

以下は書き殴った感想のようなものなので結構グダグダです

 前作では、各主人公のストーリー全てが1人の黒幕を元凶に起こったものだったという事実が、裏ボスに向かうストーリーの中で明らかになります。どちらかと言えば、「繋がりがないと思っていた彼らの物語が、実は繋がっていた」という驚きによって「面白い」と感じる構造であるように思います。
 対して今作では「クロスストーリー」が実装されました。これは8人の主人公のうち2人が主役となって進行されるサブストーリーのようなもので、前作で指摘されていた主人公同士が何故一緒に旅をしているのか分からないという疑問に対する多少のフォローになっています。正直なところ、こういったキャラクター同士の絡みがあっても彼らが共に旅をする必然性はないのですが、少なくとも彼らが互いに居心地の良い関係性であるのだろうと感じることができます(バトル中に互いの名を呼び合う掛け合いが追加されているのも、その関係性の描写に一役買っています)。
 しかしながら、8/2=4種類あるクロスストーリーをクリアすると「エクストラストーリー」が追加されます。それまでの8人のストーリーやクロスストーリーで提示されていた、「夜」「暗黒」「明日を望まぬ者」といったテーマやサブキャラクターに隠された秘密を回収する、まさしく「最終章」と呼ぶべきものです。
 この最終章では、それまでの8人の物語に全く違和感なく溶け込み、重要な良くわりを果たしさえしていたサブキャラクターたちが実は「明日を望まぬ者」の一員だったという恐ろしい事実が明らかになります(プレイしている時はお前もかよ!!お前もなのかよ!!!!!って叫んじゃいましたね)。今作は前作よりもサブキャラが豊富な上に頻繁に登場するキャラも多いので、そこそこ思い入れのあるキャラが黒幕の一味でしたというのはなかなか衝撃がありました。
 しかし、これでは正直に言って前作とほとんど変わりません。サブキャラクターの魅力的な描写によって驚きが強化されていますが、「繋がりがないと思っていた彼らの物語が、実は繋がっていた」というのは前作と同じ構造です。
 私は、最終章まで来てついに8人の主人公が共闘することに必然性を感じられたのに感動したのです。一連の事件に深く関係があるテメノス、ソローネ、オズワルド、ヒカリは勿論、他の4人…キャスティ、パルテティオ、アグネア、オーシュットに関しても、それぞれのストーリーの中で「他者の明日のために強大な敵にも立ち向かう」であろうと感じられるキャラクターに仕上がっています(アグネアについてはやっぱり踊り子としては強靭すぎるだろ!という感想と板挟みになっていますが…笑)。最終章、いよいよ「共通の脅威」が出現することによって彼らが「8人のパーティ」として成立した感触がありました。そのことにとても感動したのです。
 この「8人のパーティ」は開発陣も少し意識しているのではないかな、と思います。エクストラストーリーに入った後は宿屋に行かずにメニューからパーティを編成できるようになる(つまり、彼らが常に行動を共にしている)ことや、ラスボス戦において「8人全員が前線で戦う」というギミックが実装されていることがその理由です。
 また、そもそも「夜迫る」「夜が明けない」という脅威の描写も、今作で実装された「昼夜の変更」をより活かせているので上手いですよね。
 
 そしてめちゃくちゃに強いラスボスを撃破してエピローグに向かいます。
 旅の終わり、一筋になった道がまた8本に分かれていく。しかし、恐らく数年後、「スター」となったアグネアが再びニューデルスタ大劇場の舞台に立ちます。恐らくは、パルテティオらが完成させた大陸横断鉄道による巡業の始まりに…
 

馬鹿みたいだけどつい感動してしまう。師匠(人外)浮きすぎだって!

旅人たちのみならず、彼らが助け、彼らの助けとなったサブキャラたちまでもが一同に会し「スター」アグネアの口上を聞くのです。

「生きるとは、旅をすること」
「何処に行くのか、何をするのか」
「そして、どの物語の主人公となるのか」
「全ては君に託される」

これ………..これね…………..「Project OCTOPATH TRAVELER」のいっっちばん最初のトレーラーとか公式サイトとかに出てるシリーズ全体のキャッチコピーみたいなものなんですよ……もう反則出てるから……オタクが好きなやつ………

 
 そして、これまでの旅路を振り返り、希望を願うことの大切さを説くアグネア。そのアグネアが披露する曲目、それは……

 ドン!!!(尾田栄一郎)


 それはズルだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 そういうのは何となく感動しちゃうから反則技!!!!!!!!!
 あと確信があるけどオクトラ3は出ません!!!綺麗すぎるし!!キャッチコピー回収しちゃったし!!そもそもこれ以上進化できる気もしないし!(これ以上キャラクター同士の旅の必然性を求めようとすると、「あなたが主人公だ」というコンセプトを根幹から覆す必要があると思います)
 実のところストーリーは伏線の貼り方の甘さとかツッコミどころとか色々あるけどぉ〜〜〜終わりよければ何とやらすぎて〜〜〜どうでも良くなっちゃった!

 まとめきれないから良かったところ全部言っちまうぜ……
・熱演すぎて喉が心配になる子安武人氏
・熱演すぎて精神が心配になる堀内賢雄氏
・明らかに人のものではない声を出す三宅麻理恵氏
・組織の役割から解放され、少女の保護者となった2人の「ただの老人」
・パルテティオの光属性っぷりに心が敗北してしまった新聞記者オリさん
・もう1人の自分と「試合」
・80000000000リーフをゲット!!!!契約書を「商談」で買収!!!
・記憶を巡る旅を総括する「調合」
・アクタ覚醒、相棒覚醒が「やって欲しい展開」すぎる
・「『きぼうのうた』を習得しました」
・「『究極魔法』が使用可能になった」

キリねえな!!!
一応文句もあって、ぶっちゃけかなり「男性的な」ストーリーだからちょいちょい欧米とかでは叩かれそうだな〜〜って思ったし、僕個人としても「これは…」って感じの場面はありましたね。
でもまあこれ明らかに「産業革命直前の近世」っていう世界観だからそれがおかしいって訳でもないんですよね。まぁ〜この話をし始めるとややこしいのでおしまい。

とりあえず私自身は前作より好きな物語でした。
書き殴り始めたらこっちの方が長くなっちゃった…。下書きを晒しているようなものですね。個人的にはとにかく「印象が良い」ゲームだったので浅野チームは本当に信用できます。ネタバレ読んでしまった方も全く問題なくプレイできますし、そもそも人によってかなり感想のバラけるゲームだと思うので是非是非遊んでください。よろしくお願いします。


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