「元」通関士が語る「通関士が携わる保税蔵置場」(前編)
通関士試験にも登場する「保税蔵置場」。「保税」を理解する意味とは?
さて、通関士を目指している皆様、「保税倉庫(保税蔵置場等)」と「一般倉庫」とは何が違うのでしょう?
関税法の勉強時に出てきましたよね?
「外国貨物」を置く(つまり、蔵置する)ことができるということです。
「保税蔵置場じゃなくても、うちの倉庫にはベトナム製の衣類を保管してるんだけど。これ、外国貨物じゃないの?」と疑問を持たれた物流関係者の方に対して、
それは「内国貨物となった」ベトナム製の衣類なので、一般倉庫に保管しても問題ありません
と答えることができれば、「外国貨物」と「内国貨物」の意味を正確に理解していることになります。
この「外国貨物」と「内国貨物」の取り扱いを行うのが「保税蔵置場」であり、通関士試験の出題範囲です。
さらに、保税蔵置場は「通関士の方の異動先になる」可能性は十分にありますし、もっと言えば「あなたが転職を考えた時の選択肢にもなる」ことになります。
私は「保税蔵置場」に約8年従事していました。
「通関士試験に合格しても、倉庫作業員になる可能性があるの?通関士試験って、バカバカしい!!」
と思われた方は、「大きな誤解」をしています。
今回のテーマは、「元」通関士が語る「保税蔵置場」です。
もちろん、今回も皆様が混乱しないよう「ざっくり」とした説明を予定しています。
「通関士の方が、保税蔵置場責任者である」と、税関からの印象が良い。
私は「税関職員」の方の名刺を約20枚持っていましたが、そのうち約10枚が「税関保税部門」に所属している職員の方です。
つまり、「税関職員の方は保税蔵置場を訪れることがある」ということです。それゆえ「通関士の方が保税蔵置場の担当窓口であることは、好印象につながる」ことになります。
保税蔵置場での最大の「命題」は、
絶対に「外国貨物」と「内国貨物」の混同があってはならないということです。
税関も、この「貨物管理」の部分に関しては厳しい目を持っています。
では、この「貨物管理」に関して、「輸入貨物」を例に、少し具体的に掘り下げてみましょう。
まず、皆様に考えていただきたいのが、海外から貨物が到着した場合、「外国貨物」と「内国貨物」は、一体どこで区別しているのか?ということです。
海外から到着した、すべての貨物に「わかりやすい目印」が付いていれば便利なのですが、
実際には
「その貨物を取り扱う人の認識」
で区別されています。
よって、倉庫の片隅で「何コレ?」みたいな「認識できない貨物」が発見されてしまった場合は、「大変なことになる」ということになります。
『外国貨物』は「法律に則った手続き」を行い「適正な納税」を経て、「輸入許可」を得ることにより、『内国貨物』として国内に流通しなければなりません。
なぜなら、
外国貨物が法律に則った手続きを経ない場合は
「麻薬でも、銃でも、人体に害のある違反食料品でも、国内に流通し放題」
になってしまい、
適正な納税を経ない場合は
関税や消費税を始めとした「国の財源を、とりっぱぐれる」
ことになってしまうからです。
それゆえ、税関にとっては「なんかよくわからない、出所不明な貨物が次から次へと発見されるような保税蔵置場」は信用できなくなり、
逆に、「関税法等の知識を持った通関士の方が携わっている保税蔵置場」であれば、正しく貨物管理されているに違いないという認識にも繋がることになるのです。
「関税法」を勉強する際に、何気に出てきた「外国貨物」「内国貨物」という言葉は「保税」に携わる人にとっては「核心となる最重要ワード」ということになるのです。
後編に続く