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「元」通関士が語る「通関士に通関依頼をする意外な人たち」(後編)

 前編に引き続き「通関士は夢があるなあ」と思っていただきたく、貿易を行っている会社や個人ではない依頼者を「意外な人たち」と位置づけることで、「意外な人たち」からの通関依頼にスポットをあてています。

 「貿易会社や商社、メーカーからの依頼により、ただただ申告書を作成しているだけが通関士の仕事では、ありませんよ」

ということを、今回もお伝えしていきたいと思います。

意外な依頼者②「地方公共団体」

 通関士を行っていると「この通関依頼、一体どういう経緯でココに来るの?」と思うことがありました。

今回は、そんな一例の紹介となります。

 今度、ヨーロッパの姉妹都市において活躍している『劇団』を地元に招いて、市民ホールでの公演を予定している。その舞台で使われる「衣装」や「小道具」を含む「舞台道具一式」の通関をお願いしたい

この通関の依頼者は「地方公共団体の職員」の方でした。いわゆる「○○市、地域振興課」みたいなところです。

 イベント企画会社が絡むような「東京、大阪等を巡る日本公演」的なものでなく、「姉妹都市との交流」や「地域の活性」を目的とした地方都市が独自で開催するイベントであることで、「地方公共団体の職員」の方が直接の窓口となっていた事例でした。

当時の「○○市のホームページ」にも大々的に宣伝、紹介されており、「公演」自体には疑う余地がなかったのですが、数百にも及ぶアイテム数の「舞台道具」が記載された通関書類を見た時には途方に暮れ、「通関どうしよう?」となってしまう状況でした。

ところが、税関の方に相談すると「意外なほど簡単に」輸入許可をいただくこととなり、イベントも無事に終了。

このように、通関士は「姉妹都市との交流イベントのお手伝い」を始めとした「地方公共団体」のイベント等と関わって仕事をすることもあるということです。

意外な依頼者③「大学病院の先生」

通関士は「日本の先端医療の研究のお手伝い」をすることもあります。

少し「大げさ」な話となっていますが、

具体的には

「実験用のマウス(ねずみ)」などが輸入される場合です。

通関としては「ねずみ」が他法令に該当することもあり、提出書類としては難しいのですが、今回、お話したいのは

「LIVE MAGGOTS」

の通関依頼となります。つまり「うじ虫」と呼ばれるものです。

通関依頼者は「大学病院の○○外科、先進医療チーム」的な名称でした。(これでも、かなりボカシてます)

 「大学病院の先生」案件は、珍しいことではありません。
 ただ「(その道の研究者の方にとっては、当たり前であろう用途としての)説明を受けても、イメージが湧かない」ことが多いのが、この手の案件であり、

「研究段階で、きっと『うじ虫』君が活躍する場面があるんだろう」

という、ざっくりとした理解のもと「税関申告」を行っていました。

この貨物が、とにかく「税関検査」になり、私も、何回も税関検査の立ち会いを行いました。昔で言う「フィルムケース」くらいの容器に「緑の葉っぱ」と一緒に入っていた「糸くず程度の細さの『うじ虫』」を

「コレかなぁ、細くてわかんないなぁ」
「多分、コレでしょう」

といいながら、税関職員の方とワチャワチャしながら検査を行っていたことを思い出します。

そして、あの時の「うじ虫」君が、現在の医療の発展に寄与し、難病の患者の方を救えることになっているのであれば、通関士として「なかなか、いい仕事をしたなぁ」と自分を褒めてもいいのではないでしょうか。(少し飛躍し過ぎですが)

今回は「通関士に通関依頼をする意外な人たち」をテーマに記事をまとめてみました。
 事例がボンヤリしすぎていて、魅力が伝わりにくかったかもしれませんが、通関士にも「いろいろな義務」があることは、通関士の勉強されている皆様であれば、ご理解いただけるのではないかと思います。(それ以外の読者様は「空気感で」お願いいたします)

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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