まざまざと平穏

淋しい夜が淋しいまま明けゆく絶望や、押し殺した激情で喉の奥が焼ける感覚が分かりますか。かつては瀕死の金魚のように浮いたり沈んだりしていて、それは良くも悪くも紛いのない自分そのものでした。生きづらさに息を詰まらせながらも、何ものにも染まらない自身を愛していたのだと思います。長いトンネルを抜けたあの日、皆んなが目を潤ませながら拍手とクラッカーで出迎えてくれました。少し照れくさくて、そして幸せでした。ところが翌日、ひとりで外に出て愕然としました。太陽がただ永遠と一本道を照らしていて、私はそれに心底うんざりしてしまったのです。昨日より背後の影が濃くて、どこにも帰れないと思いました。やがて健康に成り下がった私は、あの夜の絶望を思い出すこともないのでしょう。

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