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等身大の具体的な抽象


分かっている
とても感覚的なものに近いけれど



わたしがひとたび文章にすると
それらが孕んだ気配は
何故かとても辛辣で的確なのだそうだ。
抽象的な表現であっても憂いを帯びる

等身大の、具体的な感情
わたしの中ではまるで辛辣ではないこと、
ただこう感じている、
ちょっと聴いてほしい程度の話

それでも何か打ち明けたとき
今にも居なくなってしまいそうに映るそうで
どう転んでも仄暗くなってしまう
だからまた、口を閉じる



世間ではよく人柄の印象を月や太陽に喩えたりして
人はみな、わたしを月だという
普段文章とは別人のような明るさで笑っているはずのわたしは、それでも月だそうだ


いつかの誕生日、深夜の伊豆
ひとり浜辺を散歩していた
煌々と輝く月に黒雲が立ち込め
捉えどころのない妖しさと仄暗さが辺りを覆い
月は尚も輝いている
その気配、不安、薄気味の悪さ、
経験したことのないあまりの恐怖に
ホテルへ飛んで帰ったことがあった
捉えどころのない、妖しい月



音楽は時間芸術だ
その瞬間、その空間を魅了する
そうして瞬く間に消えて
人々の記憶を彩り
いずれ色褪せ再び消える


絶対に消えたりしない音もある
色褪せても細胞が、感覚が、こころが覚えている


その繰り返しなのだろう

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