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アンティークコインの世界

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前7世紀に世界で初めて金属製の円形コインがリディア(現在のトルコに位置した古都)で発行された。物々交換の効率の悪さから解放され、小さく軽く携帯しやすいコインによって人間はさらに商…
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2020年10月の記事一覧

アンティークコインマニアックス パート3 〜ローマ帝国の崩壊 軍人皇帝時代からテオドシウス朝時代まで〜

アンティークコインマニアックス パート3 ローマ帝国の崩壊 軍人皇帝時代からテオドシウス朝時代まで さあ、とうとうアンティークコインマニアックス古代編の最終章だ。これ以降、世界は古代から中世に入る。ローマ帝国は395年にテオドシウス1世が崩御したことにより、彼の二人の息子たちによって分割統治されることになる。これ以降、ローマ帝国が再び統一されることはなかった。アルカディウスとホノリウスにより東西に分割された帝国をビザンツ帝国という。もちろん、これは歴史の区分上の便宜的な呼称

アンティークコインの世界 〜貨幣の発行背景を知る〜

今回のテーマは「貨幣の発行背景を知る」である。ローマコインには様々な意匠のパターンが存在しているが、そのどれにも発行背景がある。発行者の出自や功績などにまつわるものが多く、この意匠を辿っていくと当時のローマで何が起こっていたのか、その謎の真相に迫ることができる。 今回は共和政期に発行された一枚のコインに着目し、その発行背景を紹介していく。一見つまらなそうに見える意匠でも、発行背景が分かると見え方が変わることもある。そんな体験をぜひ一緒に味わってほしいというのが私の願いである

アンティークコインの世界 〜エジプト属州貨〜

見出しの写真の「AEGYPVTVS(アエギュプトゥス」とはエジプトの古名で、ラテン語で現在のエジプトを指す。ローマ帝国の重要な属州だったエジプト属州。麦の生産地として有名で、ローマ本土の人々の食を支えていたほどだった。エジプトはローマの支配下に入った後も、貨幣は従来のギリシア幣制を使用することが許された。それゆえ、ローマとは異なる貨幣単位を利用していた。今回はそんなエジプト属州で発行された貨幣を紹介していく。エジプト属州貨は原則表面は皇帝の肖像だが、裏面にはエジプトの伝統的な