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アンティークコインの世界

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前7世紀に世界で初めて金属製の円形コインがリディア(現在のトルコに位置した古都)で発行された。物々交換の効率の悪さから解放され、小さく軽く携帯しやすいコインによって人間はさらに商…
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2019年11月の記事一覧

アンティークコインの世界 〜コインから紐解くオリエント神話の世界〜

【推論】 表面にカナンを中心に信仰されたウガリット神話の主神バアルが描かれている。彼は玉座に座し、右手に王笏、左手にブドウを持っている。背後には祭壇がある。また、アラム文字で「タルソスのバアル」と刻印されている。 裏面にはアヌ神殿内で対話する裸のアヌとペルシアの総督ダタメスが表されている。アヌはバビロニア神話『エヌマ・エリシュ』によれば、神々の王であり、天空を司る男神とされる。天罰を下す能力があり、暴君ギルガメシュを抹殺するためエンキドゥを召喚した。ダタメスはペルシア帝国

アンティークコインの世界 〜哲人皇帝マルクス・アウレリスの叫び〜

ローマ帝国で発行された7枚のコインからマルクス・アウレリウスの胸の内に秘められた叫びに迫る。異民族の侵略に苦しみ、戦争に明け暮れた一人の皇帝の壮絶な人生。そこには、ギボンが提唱するところの輝かしい「五賢帝時代」とはかけ離れた真実があった。 『自省録』で著名な哲人皇帝マルクス・アウレリウス。人格者として知られ、当時でも現在でも高い人気を誇るローマ皇帝である。幼い頃からストア派に傾倒していた彼は、哲学によってあるべき皇帝の理想像に近づこうとした。だが、彼の時代は四方八方から異民