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万年筆の普及を阻む“伏兵”の正体はコレだ〔後編〕

“書く文化”までも破壊するなかれ
アメリカの映画やドラマには、役者がボールペンでグイグイと〈握り書き〉するシーンがしょっちゅう出てきます。
早くにタイプライターが普及した欧米諸国では、重要書類や原稿の類はタイピングで清書すればよいこともあって、手書き文字はあまり得意でない人が多いのです。そこをとやかく言わない大雑把さが、時には羨ましくなりますが。

日常の立ち居振る舞いにも“所作”が求められるのは、日本独特の文化でしょう。あらゆる所作には倣うべき“正しい型”があり、どれも細やかな配慮の上に成り立っています。そして何より、見た目に知的で美しい!

そう、正しい振る舞いは美しいのです。筆記具の持ち方ひとつにしても、例外ではありません。

前回から繰り返しますが、精緻な構造を持つ万年筆は、誤った使い方をしたら例外なく壊れるデリケートな筆記具です。
文章を紡ぐための繊細なツールを、お願いですからぞんざいに扱わないでほしい。結局はそこなんですよ。

なお「ヘタ字も万年筆なら味が出る」は、ある程度は真実ですが、力いっぱいの〈握り書き〉では、ヘタのヘの字もクリアできないので念のため。

アナログ世界は知的贅沢の宝庫
鉛筆やペンなどの“硬筆”筆記のツボは、毛筆の延長という心持ちにある、と教わった経験があります。
つまり、自然に伸ばした3本の指で、軸を軽く支えるだけでOK。特に万年筆の場合、それ以上の余計な力は要りません。
軽やかなタッチでペン先の感触とインクの軌跡を楽しめるようになったら、堂々と万年筆ユーザーを名乗りましょう。

PCやモバイル端末での文字入力が主流の今、手書きの機会は減る一方です。
ただ、万年筆への憧れが〈握り書き〉からの卒業と、美しい所作の習得のきっかけになるのだとしたら、かなり喜ばしいことではないでしょうか。

スッと指を伸ばし、流れるようにペン先を動かして文をしたためる自分を想像してみてください。あ、ここで笑ったら負け。指先に施したジェルネイルも上品に映えるし、何より本人自身が知的度5倍増しに見えますよ。
控えめでいて、しっかり知性をアピールする万年筆の真価が、今こそ若い世代にも受け入れられますように!

《Sheilaブログ》塩キャラメルをひと粒

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