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万年筆の普及を阻む“伏兵”の正体はコレだ〔前編〕

拳の中に守りたいものって一体
若い人の間でアナログな万年筆が静かな人気、と最初に報じられてからだいぶ経ちました。
万年筆ビギナー向けガイドは、どれも判で押したように種類と選び方、インクやお手入れの説明に続けて「自分だけの一本を育てて、長く愛用しよう」でシメられています。

ところが世の中には、どんなに万年筆に憧れても、絶対に使いこなすことがかなわない人がいるのです。
見た方が早いでしょう、筆記具を、たとえばこんな風に持つ人。

握り02-01

手首を丸めて筆記具を握りしめるこのスタイルを、ここでは仮に〈握り書き〉と呼びます。
〈握り書き〉は、小学生から社会人までの幅広い層に見られ、無数のバリエーションが存在します。

とりあえず書けてて読めれば文句ないだろとかのご意見もおありでしょう。
その通り、筆記具の持ち方なんか原則本人の自由ですし、成績や評価に響くと聞いたこともありません。ボールペンやサインペンならとりあえず使えますから、当面困るようなこともないはずです。

誰も言わないので言うんだけど
しかしですよ。〈握り書き〉スタイルで万年筆を使おうとしたら、文字を書くどころか1本の線すら引けません。だって無理無理、構造的に無理ですもん。メーカーにクレームつけても無理だしムダだから。
万年筆は、紙に対してペン先の角度が45~60°を保つことで、インクがスムーズに流れて筆記が出来る仕組みになっています。
よって、〈握り書き〉の持ちグセはペン先を傷めるだけなのです。

さらに〈握り書き〉は、筆記に必要な部位以外の筋肉に過剰な負荷をかけていることが、見ただけでも分かります。
こうしたクセは年月が経つほど直しにくく、姿勢を崩し、手や腕、肩に要らない負担をかけます。そんなダメージの蓄積が、長期的にどんな影響をもたらすかも心配です。

人気ドラマのあの人も
話題沸騰のドラマ『半沢直樹』新シリーズで、若手社員の森山が、ストーリーのキーアイテムである万年筆を用いて、幼なじみの瀬名に謝罪の手紙を書くシーンがありました。
「相変わらず、へったくそな字だな」と瀬名は呆れた風に返すのですが、あの持ち方でよく便箋1枚を埋められたなと、ワタシ的にはそっちに感心した次第。いやいや、感心してる場合じゃない、こんな大事なシーンなのに、監督も演出も、どうして皆スルーしてんの?

少年時代に瀬名からもらったその万年筆を、森山が手入れしながら大切に使っていたという涙の設定も、おかげで説得力が半減してしまいました。


幼稚園でのお絵描きのクレヨンを筆記具に持ち替えてからの短い期間が、正しい持ち方指導のベストタイミングに思えますが、やること山積な教育の現場では、そこまで手が回らない、ということなのでしょうか。
(後編に続く)

《Sheilaブログ》塩キャラメルをひと粒

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