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ロマンチックでノスタルジック

子供の頃「ポニーランド」という施設が家の近くにあって、そこで時々ポニーに乗せてもらっていました。
親は見ているだけ、子供しか乗れないその生き物に乗る体験は、とても特別な時間でした。
彼らはとても優しく、温かく、いつも大きな瞳でこちらをじっと見ていました。
ポニーとはいえ、子供のわたしにとって彼らは未知の大きな生き物でしたが、その温かさと優しさのおかげで、怖いと思ったことは一度もありませんでした。

数年前の夏、石垣島で馬に乗る機会がありました。
海辺を馬に乗って歩けるという謳い文句のホームページを見たとき、子供の頃感じたポニーのぬくもり、大きな瞳、優しさをふいに思い出し、気づいたら申込みをしていました。
白い砂浜で出会った馬はとてもお茶目で、わたしの言うことをどこか「ふうーん」という態度で聞いていて、海にザブザブと入ってみたり、突然草を食み出したり、控え目に言って、言うことを全然聞いてくれませんでした。
でも、そんな風に言うことを聞いてくれなくても、馬のことを思い出すとき、なぜか必ずノスタルジックな気持ちになるのです。
子供だったあの頃に感じた親しみを、どうしてももう一度感じたくて、馬に会いに行ってしまうのです。

今回、体験乗馬募集の案内メールを見たときも、胸がキュンとするような気持ちになりました。
そして、また気づいたら申込みをしていました。それは衝動にも近い感覚でした。
もしかすると、何か子供の頃に感じて、忘れてしまった想いを取り戻そうとしているのではないか?

一体、わたしは何を取り戻したいのだろう?

今回初めて「速歩」で馬に乗った時、やっとその答えが分かったのです。
一瞬、ほんの一瞬だけですが、馬場を吹き抜ける扇風機の風と、彼らの走るリズム、それに合わせて自然と動く自分の身体、それらが一体化した瞬間があったのです。
子供の頃、河川敷を吹き抜ける風の中、なんの恐れもなく彼らに乗せてもらっていたときの軽やかで、ロマンチックな想いが、ふわっと沸き起こりました。

乗馬はロマンチックな体験だった。

わたしはそれを忘れていたのです。
彼らと、風と、一体になるとき、それはとてもとてもロマンチックな瞬間だったのです。

随分と時間がかかった気もするけれど、やっとこの感覚を思い出すことができました。またこの気持ちを味わいに、彼らに会いに行きたいです。


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