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娘に贈る回顧録 13/7300  あれは神様?   

スーパーからの帰り道。

ご機嫌でおしゃべりしながら、
ベビーカーを楽しんでいた。

坂道の途中で、

『歩く!』

天気も良いし、買い物もスムーズに
出来たし。

うっかり、降ろしたのがいけなかった。

しばらくは景色を見ながら、
ゆっくりと進む。

突然座り込む。
疲れたか?飽きたか?

「ベビーカーに乗ろうか。」
「たくさん歩いたね」

『乗らない!』

いやな予感。

いきなり泣き出す
乗らない、歩かない、大泣き。

何がきっかけで泣き出した?
疲れてグズっているのか?
乗らない!ってどういう事?

なだめてもダメ。
励ましてもダメ。

何分そうやっているつもり?
そろそろ帰らないと。
洗濯物取り込まないと。
夕飯のしたくしないと。

無理やり乗せようとすれば、
ひっくり返ってさらに大声で泣く。

「もう!先に行っちゃうよ!」

置いてけぼりにも気がつかない。

2メートル先から声をかける。
聞こえていない。

仕方なく戻って抱き上げる。
暴れて落としそう。

暗くなってきたし。

「いい加減にしてよ!」
「いつまでそうやってるの!」
「なんで言うことがきけないの!」

自分でも驚くほどの大声だった。

止まらない。

どなりつけていた。

手が出そうだった。

※※※※※※※※※※※※

「あらあら。
    大変なことになっているわ。」

振り向くと、母と同じくらいの年配の女性。 

あぁ、嫌だ。
ダメな親子だと思われてる。

言うことをきかない娘。
上手に子育て出来ない母親。

大声で怒る。
大声で泣き叫ぶ。

嫌だ。
構わないで欲しい。

「大丈夫よ」
「お母さんは深呼吸ね」

「あなたは歩きたいのね」
「でも、足が疲れているのよ」
「おうちに帰ってお風呂に入りなさいな」
「さぁ、ベビーカーね」

知らない人に話しかけられて、
驚いたのか。
素直に乗り込む。

助かった。

何とか落ち着いて、挨拶しなきゃ。

顔をあげると、
誰もいない?

※※※※※※※※※※※※※※※

こんなことがあったのよ。

あれは誰だったのか。
なんだったのか。
わからないの。
不思議よね。

なんであんなにグズったの?
覚えてないよね。

『きっと、やりたいけど出来ない
    ジレンマだったんじゃない?』
『今でもそんな感覚をよく感じるし』

『そんな時は深呼吸してる』

『お母さん、よく
   "深呼吸しなさい" って言うよね』



そうね。
あの時から。
大事なおまじない。

"深呼吸"

あの人はきっと………。