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玄米と虫

◎白米から玄米へ

私は今まで、何も考えずに、本当に文字通り何も考えたり思いを馳せたりすることなく、お米を食べていた。
実家でお米と言えば白米で、だからわたしも何の迷いもなくスーパーで白米を買うことが普通だったし、白米を食べることが普通だったし、そのわたしの「普通」に対して何か思ったり考えたりしたことは一度もなかった。

川崎町に来てから、玄米を食べる機会が多くなった。
というのも、よく一緒に食事をする利奈ちゃんの家のお米は玄米だからだ。
だけど、「利奈ちゃんの家はなんで玄米なんだろう」と思ったのも一瞬ぐらいで、ここでも深く考えることはなくて、利奈ちゃんの家では当たり前に美味しく玄米をいただいた。
わたしは利奈ちゃんの家以外で玄米を食べたことはなかったように思うけれど、たぶん、白米と玄米についてわたしは関心を持っていなかったので、気に留めるまでもなかったのだと思う。
ちなみに、川崎町に来てからも、自分の家で食べるお米にはスーパーの白米を買っていた。

ある日の会話の中で、「カス」という漢字が話題に上がった。
「カス」は漢字で書くと「粕」で、「米」に「白」と書く。
また、「米」に健康の「康」と書いたら「糠」という漢字になる。
会話をしながら、お米を精白するときに出る糠には栄養素がたくさんあって、白米はそれが取り去られたものなのかもしれない、だから、「白いお米」と書いて粕なのかもしれない、と、そんなことをふわりと思った。
今まで、自分が食べるお米の種類や白米と玄米の違いについて何か思ったことも考えたこともなかったので、この日の会話は、わたしにじんわりと確かな衝撃をもたらした。

1か月ほど前、家にストックしていた白米が無くなったので、玄米を買ってみることにした。
わたしは普段土鍋でお米を炊いていて、玄米は白米よりも炊くのに少しだけ時間が多めにかかり、少しだけ手間が増える。
時間と手間を思うと、やっぱり白米にしようかなぁと思いかけたりもしたけれど、せっかくだからと玄米を買うことにした。
日々食べるものなので、できればスーパーではなく知ってる方から買いたいと思い、いつも利奈ちゃんが玄米を買っている方を紹介してもらって、その方から購入した。

◎虫がわいた

お米に虫がわくということを、聞いたことはあってもわたしは体験したことはなかった。
わたしが川崎町に来て間もない時、利奈ちゃんが「お米には虫がわくからね」と言っているのを聞いて、「都市ではなく里山ならではなのかなぁ、わたしも対策しなきゃなぁ」と思っていた。
でも、川崎町で暮らしを始めても、東京や仙台の時と同様に家でお米に虫がわくことはなかった。
お米に虫がわかないことに対して、特に何も疑問を持つことはなかった。

昨日、炊く前の玄米を洗っていると、何だか小さいものが動いていた。
よく見ると小さい虫(コクゾウムシ)だった。
気のせいだろうと見て見ぬふりをしたけれど、今日米びつを見ると、米びつの中でも小さい虫が動いているのを見つけた。わたしは虫が得意でないので最初はぞっとしたのだけれど、その後何だかすごく感動してしまった。
「この玄米は虫も食べたいぐらい美味しいんだ」と思うと同時に、「虫が食べたいと思わなかった今までのお米はなんだったのだろう」と思った。

同じ環境下で、同じ保存方法で、白米では1度もわいたことがなかった虫が玄米でわいた。
それはもしかしたら、白米と玄米という違いによるものかもしれないし、スーパーで買ったお米と町内の方から買ったお米という違いによるものかもしれないし、単なる偶然かもしれない。
それに、玄米に虫がわいた感動なんて束の間で、コクゾウムシに頭を抱える日がすぐにやって来るのかもしれない。
玄米に虫がわいたことも、その出来事に対して抱くわたしの感情も、分からないことがたくさんあるけれど、「お米に虫がわいた」という確かな事実について、もう少し考えたり思いを馳せたりしたいと思う。


写真:2020年7月24日 @川崎町
みんなで田んぼの草取りをした時の一枚。


(おわり)

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