さらば僕らの地方社会。

さらば僕らの地方社会。
地方創生なんて幻想は捨ててしまおう。
人口3000人にも満たない小さな田舎町で生まれた僕だから言える言葉がある。
地方創生なんてクソだ。
そもそも場所がクソなのに、そこに生まれた人間がクソじゃないわけがない。
都市の人間が描く「地方はいい場所」だとか「地方の人は優しい」みたいな幻想はそこにはない。
それはないが故に虚構でしか描くことができず映画やドラマ、アニメと言ったフィクションの中で完結される夢物語なのだ。

僕たちが住む場、そして生体系として見た時
私の20年余りをすごした町は、閉鎖的でいわゆる村社会だった。お互いに監視しあい、自分がなにかしようものならすぐに親にそれは伝わる。
そしてそれはいいことよりも悪いことの方がずっと速い。なんたって彼らは噂話が大好きだ。人口3000人という人たちはみんな血縁やその知り合いで親やその前の世代からのつながりだから実質的にほぼみんなが知り合いになる。そうなってくると町で出会った人とは立ち話、久しぶりに会ってもそうでなくても立ち話。みんなみんなが立ち話。狭い土地にいつも会うような、趣味ではなく土地と家柄によって縛られた人間が話すようなことは同じく縛られている、鎖でつながって人たちの噂話だ。その町の中で人と人を繋ぐ鎖は何かあれば振動してその振動が音となって瞬く間に伝わる。そして、つながったそれでひそひそと噂話をする。
彼らの生活の天井は待ちの、あるいは隣町のそれなりの企業に就職して町で行われる祭りに参加することでありそれが人生の最大の幸せなのだ。そしてその終わりの飲み会でまた「あいつはどーだ。こいつはどーだ。」
この村社会のうっすらと見えるカースト最上位は祭りに出ることであって、彼らの狭窄した視野ではそれ以上の発展はない。
それ故に、新しい人間、共作した視野の外から入ってきた人間を意図的かそうでないかは関係なく迫害する。それは血液の中で白血球が入ってきてしまった異分子を排除するかのように村社会の住人はこぞって白血球になる。
こんな地方社会はクソだ。人口減少とともに緩やかな死を選ぶ方がよっぽど現実的で衛生的だ。

大学生になって初めて親元から離れた地方都市、札幌市もクソだ。
一見都市の装いをして、そこに住む人は意識高くそれなりの都市型人間を演じているが、常に海の先に劣等感を抱き、海の先で生まれた文化を2か月遅れで模倣しておきながら「北海道は自然がいっぱい」だとか「北海道は食事がおいしい」だとか、「北海道は住みやすい」という土着信仰的幻想のアイデンテティにしがみついている。札幌の自然はクソだ。特に街中にある公園なんて誇れるもんじゃない。一度開拓によって壊されたその自然の上に海の先の人間が憧れる自然を人為的に作っただけじゃないか。製作者のどや顔が浮かぶような空間のどこに自然的美しさがあるというのだ。田舎の森も林もクソだ。それはそこにあるだけで別に誇るものじゃない。ただ未開である。それだけじゃないか。食事だって別に変らない。むしろ都市の方が選択肢があってずっといい。そしてそういったアイデンテティで北海道を誇っているくせに彼らは常に「でも、北海道にいるから」だとか「札幌にいたらできないし」と言い訳を人生の軸に置きっぱなしにしている。環境を言い訳にする奴は随分クソだが、北海道にいればそれが人生の軸になる。そんな人間たちばかりが跋扈す街も随分と僕には居心地の悪い場所だった。

地方社会にはさよならをしよう。
地方創生なんてクソだ。都市の人間が求めているような地方という幻想はない。
地方の食材で地産地消だなどと笑わせるな。それは都市の人間のエゴであって、地方の人間だって近所のイオンでマクドナルドを食いたい。
それでも片道1時間をかけていく不便さに目を瞑りながら、地方における便利さの塊たるイオンに入り浸ってマクドナルドを食べるしかできないアイロニックな人間と土地に地方創生をしてまで光を当てる必要はない。
緩やかな死を待つのがちょうどいい。

そもそも地方という金持ちの幻想に金を投資できるほどいまのこの国は裕福ではないじゃないか。

もちろんこれ自体が正しいとは思っちゃいない。
実際僕の育った町にだって札幌にだって尊敬すべき人もいるし、愛すべき家族や友人もいる。
だからこれは、個人的な復讐戦に他ならない。
この僕にとって最悪の世界に23年という長い時間閉じ込めていた北海道という土地、そして地方社会とそれを諦めずにフォーカスを当てようとする地方創生への復讐だ。

これは今自分が年に住んでいるから言っているのではない。都市の人間も棚に上げて地方の人間を悪く言えるほどいい人間じゃない。クソだ。
しかし、今北海道「ではない」土地に逃げ出すことができたが故に改めて感じているのだ。

さらば僕らの地方社会。

都市に憧れるわけじゃない。ただこの土地はなんだか違うと感じながらも若さゆえにそこを出ることのできない鬱屈とした人々へ向けて。

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