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西加奈子さんと想像力の話

ツイッターにも投稿したけど、オードリーのオールナイトニッポン西加奈子ゲスト回が大好きで、ふと思い出す度に聴き返してる。

まさに西さんの魅力爆発!な内容で、この放送がきっかけで自分は西さんの小説に触れるようになった。

これまでに作品から作り手の人間がどんな人か気になって好きになることはあっても、作り手の人柄に惹かれてあとから作品のファンになったのは西さんが初めてだった。

直木賞受賞作の「サラバ!」はもちろん読んだし、最新刊の「夜が明ける」も買った。いつ読もうかな。今個人的に大きく生活を変えようとしてる最中なもんで、いろいろと身の回りのことが片付いて、ちゃんと腰を据えて読めるような環境をようやく整えられたときに訪れてくれるであろう、いつぶりかの平穏で静かなとっておきの夜に読み耽ようかと思ってる。

そんな西さんという人間のどんなところに惹かれるのかというと、他者への想像力が優しさに溢れてるところ。小説にもそれが凄く表れてる気がする。

西さんは若林と初対面の飲みの席で、会って早々に「若林くん童貞やんなぁ?」と発言して、この一言のインパクトが強すぎるあまりこの部分だけが切り取られて一人歩きしてる気がするんだけど、ちゃんと本意まで伝わってるのかなと、勝手な心配をしてしまってる。

「若林くん童貞やんなぁ?」という発言は西さんの言葉をそのまま借りると、ずっと売れてるという事は最上級の女性を抱き続けてるようなもんなのに、未だに初めておっぱいを触るときのような感覚を持ち続けてるから、そういう意味での「若林くん童貞やんなぁ?」になる訳で。初めてこの話を聞いたとき本当に素敵な想像力だなと思った。

若林が出した本に「社会人大学人見知り学部卒業見込」という本がある。もちろん紙が擦り切れるほど読んだ。安易な感想を述べるとしたら、この本は気難しい人からしたら生きづらそうな若林にたくさん共感できて、共感しながらもつい笑ってしまう、見下したような楽しみ方をする本だと思う。

ブレイクしたての頃の若林は世間的にも捻くれてるだとか、そういう表面的な見方しかされてなかったと思う。自分もそうだった。捻くれてるトークやコメントをそのまま受け取って、面白いなと感じるだけだった。

そんな若林に、西さんは社会人大学の帯にこんなコメントを添えてる。

愛に溢れてる西さんだからこその若林に対する見方であり、この力強いコメントだと思う。
つい見過ごしそうになる帯コメントもこれは特に目に付いたことを覚えてる。

西さんが番組内で話してたエピソードの中で、昔不良に数学の勉強を教えたことがあるというのがある。

要約すると、三角形の内角のXを求める問題を教えることになって、180度から2つの角の合計を引いたら出ると説明したら、不良は全然理解してくれない。何で分からないのか聞いてみると、不良は「何で180度なん?」と言った。それに当時中学生だった西さんは、この子は全然アホじゃなくて、何で180度なのかをそっから考えて、それを誰も教えてくれなかったから、そりゃ不貞腐れるよな、と思って衝撃を受けたそう。

この話に若林は、「そういう子って『180度って何でなの?』って価値観でずっと生きていくじゃん。したらさ、社会に出たらもっとよ。『なんでこれがこうなの?』って。で、それを『わかるよ』って言ってくれる女の子って、出会ったら奇跡ぐらいの確率だと俺は思うのよ」と言う。

でも西さんは、「もう視野、マジ狭いな!」と猛烈に否定した。

この歳になって少しだけ、西さんが強く否定した意味がようやく分かるようになってきた気がする。本当にやっと。

若林も今や結婚して一児のパパ。当時の放送を聴き返すと想像もつかなかった未来。

また機会があれば、あれから数年経った今の若林と一対一で話す西さんのトークをラジオで聴いてみたいなって思う。

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