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ニホンイシガメの乱獲問題

本州、四国、九州及び周辺島嶼などに広く分布する日本固有種のニホンイシガメが様々な人為的要因によって各地で激減しています。本来、いたるところに生息する普通種でしたが、現在でも個体数が多い地域は非常に少なくなってしまいました。

この原因の一つとして、商業目的の乱獲があげられます(その他に河川改修、外来カメ類との競合や交雑、外来捕食者アライグマによる捕食がある)。ある商業利用目的のために、ある地域にたくさん生息していたニホンイシガメたちが根こそぎ採集されてしまった。ということが、分布域の各地で起こっています。


なぜカメは乱獲されるのか?

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そもそも、ニホンイシガメに限らず、アジア周辺を中心に様々なカメ類の過剰な商業利用が行われています。世界各地でかき集められたカメたちが、異常な量のカメたちが、売られてしまっています。

その結果、世界のいたるところから、昔はたくさんいたようなカメたちがいなくなってしまいました。このような野生個体の過剰利用によるカメ類の減少は、Asian turtle crisisと呼ばれています。

カメ類の乱獲は食用、薬用及びペット用といった様々な目的のために行われています。特に、中国では食糧や漢方薬などに利用されているようで(近年はペット利用目的も多い)、非常に多くの個体が取引されています。

一方、日本においても、海外から輸入された多種多様なカメ類が多く取引されています。しかし、日本では食糧や漢方薬に使うことはほとんどなく(日本国内に生息するニホンスッポンやウミガメ類の食用利用はある)、主にペット用に多くの個体が取引されています。

近年になり、日本においてもカメの過剰な商業利用の実態が認識されるようになりました。それは、冒頭で紹介したニホンイシガメです。現在、野外で収集された多くのニホンイシガメたちがペット用に取引されるとともに、最近まで多くの個体が輸出されていました。


過剰な商業利用の実態と輸出規制の実施

2015年になると、環境省の調査により、平成25年8月から平成27年9月の間に約28,000個体のニホンイシガメが輸出されていることが分かりました。特に一部の地域からの捕獲個体の輸出が多いことから、地域個体群が絶滅する恐れがあり、将来的に見ると種の存続を脅かす過剰な利用が行われている状態だと判断されました。その結果、輸出可能な個体は背甲長の小さい未成熟個体(野外採集個体)と飼育繁殖個体のみに限定される、といった輸出規制が行われることになりました。


輸出規制だけで十分なのか?

背甲長や飼育繁殖個体であることを基準に輸出規制をかけていますが、これでは過剰利用を防ぐには不十分であると考えています。理由は①虚偽申請による生体の輸出が行われる恐れがある、食用に加工した状態や漢方薬等にした状態で輸出が続く恐れがある、③日本国内での商業利用に制限がないことです。

1点目の飼育繁殖個体であればどのような背甲長の個体でも輸出可能な状態は、虚偽申請による生体の輸出が行われる恐れがあり、非常に危険です。これは、飼育繁殖個体と野外採集個体を外見から判別するのが困難だからです。見た目で判断することはまずできないでしょう。この問題を解決するためには、飼育繁殖個体であることを判断できる客観的な方法を作る必要があります。

2点目はそのまんまで、生体ではなく加工した状態であれば制限なく輸出されてしまうことが予想されるためです。輸出先において、ニホンイシガメがどのように利用されていたのかは分かりませんが、主要な利用目的が食糧や漢方薬などであるならば、輸出の際にカメが生きている必要はないでしょう。

3点目が最も優先的に検討すべき問題だと思います。ニホンイシガメの輸出に制限がかかったとはいえ、未だに国内での商業利用のために乱獲されています。ペットショップ、熱帯魚店、即売会やホームセンターに行くと、衣装ケースに山積みにされたニホンイシガメ(おそらくほとんどが野外採集個体)たちをみることが度々ありました(最近は減っています)。

山積みにされた個体の中には衰弱しているもの、怪我をしているものが紛れていました。このような個体は数日の間に死んでしまったことでしょう。

大した需要もないのに根こそぎ捕られてしまったカメたちは、飼い主に引き取られる前に死んでしまっているのではないでしょうか。

それに、現在はブリーダーの方たちおかげでニホンイシガメの繁殖が成功し、状態の良い飼育繁殖個体(孵化幼体)が数多く出回っています。それも比較的安価な値段(1,500~3,000円程度)で手に入れることができるし、飼育のポイントも教えてもらえます。

安く状態の良い繁殖した孵化幼体が手に入るのに、なぜ乱獲されたニホンイシガメが国内で売られているのか未だに疑問です。野外採集個体の多くは背甲長の大きな成体であることが多く、屋内で飼っているとケースをガタガタさせて非常にうるさいうえに、餌付きにくい個体も多いです。

そんなわけで、商業利用される個体の多くが飼育繁殖個体になることを願っています。俺は持続可能な商業利用になっていくことを求めています。


今後起こり得る問題

輸出規制が行われるようになりましたが、上で紹介したように「虚偽申請による生体の輸出」、「加工品の輸出」や「日本国内での利用」といった問題が付きまといます。その他に懸念している問題として、日本にカメの食用や薬用の文化が入ってきてしまう恐れがあると考えています。

日本からカメが輸出されないのであれば、日本に食べに行けばいいといったことを考える人が出てきてもおかしくありません。日本ではニホンイシガメの採集に制限がないのだから、日本に来て乱獲し、そのまま日本で食べてしまえと考える人が来てもおかしくありません。

ニホンイシガメがどの程度のおいしく、また薬用の効力があると信じられているのかは分かりませんが、海外においてニホンイシガメに大きな価値があった場合、今後過剰に消費されてしまうかもしれません。ニホンイシガメがめちゃくちゃまずく、むしろ延命に有害であるといったことがあれば嬉しいです笑。

とにかく、野外採集個体の商業利用がなくなり、飼育繁殖個体のみが商業利用可能になってくれれば良いですね。


ちなみに、今の私にできることとして、飼育するカメは繁殖個体に限定するようにしています。少しでもできることから。


ではでは。

カメは売らずにカメでお金を稼ぎたい。そんなお年頃です。