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誘引罠を用いたカメの捕獲と注意点

近年, 在来生態系や農作物に多大な影響を与える外来種ミシシッピアカミミガメ (以下アカミミガメ) の防除対策が日本各地で進められるようになりました. 

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問題になっているアカミミガメ

耳のあたりに赤い模様があるのが特徴です

アカミミ幼体

幼体の時期はこんな感じで全身緑色です. 

そのため, 通称ミドリガメとして販売されています.

このアカミミガメの防除対策として, 主に海鮮魚を餌とした誘引罠を水中に設置し, 翌日に罠を引き上げることで一気に捕獲してしまおう, といった捕獲作業が進められています. 

カメもんどり

カメ専用の捕獲罠(カニかごを改良したもの)

地域によっては, 「せん」と呼ばれる漁具に分類されています

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罠で捕獲されたアカミミガメ(ちらっとクサガメも)

罠を用いたカメの捕獲方法に関する, 詳細な説明は以下の手引きに載っていますので, 気になる方はこちらをご覧ください

日本各地で進められているアカミミガメの捕獲作業ですが, 誘引罠を使用する際にはいくつかの注意点があります. この注意点に関して詳しく書かれた手引きなどが見当たりませんでしたので, 今回まとめることにしました. 

注意点は, 内水面における誘引罠の使用許可捕獲される個体の溺死防止対策の2点です.


内水面における誘引罠(漁具)の使用許可

1つ目として, 河川等の内水面に誘引罠を設置して水生生物(魚類, 甲殻類, カメ類など)を捕獲する際には, 各地方自治体より誘引罠(漁具)の使用許可を取得していなければならない場合があることです. 各地方自治体によって, 内水面漁業調整規則により, 違法となる漁具が決まっているので, 漁具を用いてカメ類を捕獲する際には, この点を必ず確認する必要があります. 

例えば, 一般的にカメ類を捕獲する漁具(カニかごを改良したもの)である「せん」ですが, 千葉県では河川等に設置する際には許可を取得する必要があります(特別採捕許可など). この点に関しては, 千葉県内水面漁業調整規則をご確認ください.

ある地域では違法ではないものが, 別の地域では違法になっていたりします. そのため, 確実に事前の確認を取りましょう. さらに, 調査河川が漁業権管轄区域であった場合は, 管轄の各漁業協同組合から同意書を取得する必要があります. 

簡単にまとめると, 調査地のある地方自治体において, 1) 使用したい漁具に使用許可が必要でなければそのまま使え, 2) 採捕許可が必要であり, かつ漁業権がない場合は, 各自治体の担当部署に特別採捕許可等の許可申請を行い, 3) 漁業権管轄区域である場合は, 管轄の漁協より同意書を取得し, その同意書を取得したうえで各自治体の担当部署に特別採捕許可等の申請を行います. 

なお, 調査後には調査結果とともに発行された特別採捕許可証等の必要書類を提出する必要があります. また, たいていの場合, 捕獲した生物は調査後に全て逃がすことになりますので, 商業目的や個人的な飼育目的のための許可を得ることは出来ないでしょう.


混獲される個体の溺死防止対策

カメ類は肺呼吸であるため, 罠に捕獲されたカメが息継ぎできるような状態でないと, 溺死してしまう恐れがあります. そのための対処法として, カメが息継ぎできるような通路が付いたカメ専用罠を使用したり, 息継ぎ通路がないカニかごを使用する際には, ペットボトル等を入れて罠全体が沈まないようにするなどの対策が取られています. 

また, 夜や翌日に雨が降ったことで対象河川が増水し, 罠全体が水没することでカメが溺死してしまう恐れもあります. この点に関しては, 事前に天気予報を念入りチェックし, 少しでも雨が降る可能性があるのであれば, 調査を延期するなどの措置をとるべきでしょう.

これは混獲される日本固有種ニホンイシガメが巻き込まれて溺死する可能性を減らすことにもなりますし, 駆除対象の外来種であるアカミミガメであったとしても, 溺死といった苦痛を伴う可哀想なことはできる限りしたくないという個人的な考えがあるためです.

大きく2点(罠の使用許可溺死対策)の注意点を紹介してきました. 今回紹介した溺死対策以外にも, カメ類を溺死させないための注意点があります 

例えば, カメ調査用の罠と知らない人が, 興味で罠を引き上げ, 引き上げた後に罠全体を水中へと戻してしまう場合です (カメが肺呼吸であることを知らないのでしょう). 

また, 1つの罠にカメが入りすぎることで, その重さで罠全体が水中へと沈んでしまう場合です (ペットボトルがあっても重さで沈み, 息継ぎ通路も含めた全体が沈むこともあります). 

このようなことに対処するために, 私はペットボトルを使わずに (入れると安心してしまうため), 息継ぎ通路が絶対に沈まないように罠を設置するようにしています.

罠設置方法

カメの重みで罠全体が沈まないように, 呼吸用の通路は太い木などに巻き付けて, この通路が絶対に水中に沈まないように設置しています. 

今後, カメ類を対象に誘引罠を用いた捕獲調査や防除対策を行う方は, 上記のことに注意していただけますと幸いです.

ではでは~

カメは売らずにカメでお金を稼ぎたい。そんなお年頃です。