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【意外】TVアニメ「ドラえもん」は、第1回目に何を放送したのか?/考察ドラえもん⑧

今回はTVアニメ化された「ドラえもん」の初回は、どの作品を原作に選んだのか。調べてみると、かなり意外な事実がわかりました。


「ドラえもん」のTVは大きく3つに分けることができますまず、日本テレビで1973年4月から半年間放送された”幻”の旧バージョン、次にテレビ朝日で1979年4月から放送された大山のぶ代声優バージョン、そして2005年4月から声優陣を一新して現在も放送されているリニューアルバージョン、です。

この3バージョンの放送初回の作品について、それぞれどの原作をアニメ化したのか見ていきたいと思います。

まずもっとも有名な、79年放送開始の大山のぶ代バージョンですが、その第1回目は「ゆめの町ノビタランド」でした。原作は「小学四年生」1974年7月号に掲載(藤子・F・不二雄大全4巻収録)。

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幾度かTV番組でも取り上げられていて著名な作品ですが、子供たちが家の中でも空き地でも遊べなくなってしまったことから、ミニチュアで町を作り、「ガリバートンネル」を使って体を小さくして、思う存分その町で遊ぶことにする、という夢いっぱいのお話です。

「ウエストサイドスーリー」にオマージュを捧げたミュージカル表現を取り入れるなど、アニメならではの魅力を詰め込んだ作品となっています。素晴らしい原作をきちんと活かした上に、アニメーションの表現を加味していく、理想的な作品であったと思います。

なお、テレビ朝日での放送に先立つ形で、パイロット版が製作されています。タイトルは「勉強べやのつりぼり」(「小学二年生」1976年11月号:初掲載時「おざしきつりぼり」/藤子・F・不二雄大全集8巻収録)です。

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この作品は、バラエティムック本「ぼく、どらえもん」(2004年刊行)の創刊号でDVD特典として封入されていました。この原稿のためにもう一度見ようと思ったのですが、「ぼく、どらえもん」のシリーズは実家に送ってしまっていたので見れずじまい…。本作は、声優陣が本シリーズと同じ方々を使っていたこともあり、初めてのスペシャル放送時に特別に放映しています。

ところで驚くのは、この「勉強べやのつりぼり」が日本テレビ放送前からにもパイロット版として作られていた、という事実です。モノクロ版と敢えて同じタイトルのパイロット版を制作することで、前作との差を明確にして、今度のドラは一味違うと示したかったのでしょうか?

その流れで、日本テレビ版(富田耕生/野沢雅子バージョン)の初回(1973年4月1日放送)を調べてみると、「出た! ドラえもんの巻」というタイトルでした。

旧バージョンは封印されているので、今本作を見ることは難しそうですが、伝え聞くところによると、この原作は「小学一年生」1970年11月号掲載の「おかしなでんぱ」(藤子・F・不二雄大全集3巻収録・初掲載時「クルパーでんぱ」)なのだそうです。この話は初期ドラの中でも、かなり異色の作品でして、これを選択する感覚が今ではまるで理解できないところです。

なお、日テレ版は2話×15分で構成されており、初回の二本目は「ペコペコバッタ大騒動の巻」(「小学四年生」1970年10月号:掲載タイトル「ペコペコばった」/藤子・F・不二雄大全集1巻収録)でした。こちらはドラえもんらしい、ギャグ満載の良作を原作にしたものと思います。

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では続けて、リニューアルスタートとなった永田わさびバーションの初回はどうだったのでしょうか。

リニューアル一発目は、2005年4月15日OAのスペシャルで、3話を一挙に放送したのですが、その初回はなんとまたもや「勉強べやの釣り堀」なのでした。

日テレ版、大山のぶ代版の両方のパイロット版で制作した同名タイトルを、リニューアルに当たっての最初の作品に選んだのは、もはや偶然ではないように思われます。見比べさせる目的ではなく、遊び心での選択であったとは思いますが。

初回SPではこの他に、「タイムマシンがなくなった!!」(「小学三年生」1980年5月号/藤子・F・不二雄大全集11巻収録)と「思い出せ!あの日の感動」(「小学六年生」1982年8月号/藤子・F・不二雄大全集10巻収録)が放送されました。

「タイムマシン~」は、毎日10分間の放送だったのぶ代バージョンにおいて、2日にまたがる前後編で放送された大作で、個人的に当時観たことをしっかりと記憶している一本です。これを選んでくるセンスは、ドラえもんのことよくわかってるなと、上から目線で称賛したいと思います。

「思い出せ!~」は、残り少ない小学校生活を送っている6年生に向けた、初心に戻る大切さを訴えるメッセージ性の高い一本です。雰囲気としては「ムード盛り上げ楽団」に近い感じでしょうか。

新ドラ初回の3作は、一本一本が秀作である上に、バランスもきちっと取れている組み合わせだったように思います。

まとめ①
日本テレビ版初回の作品は、原作選びを失敗。これがシリーズが短命に終わった原因か?
まとめ②
ドラアニメを作る方々は「おざしき釣り堀」が大好き。

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