見出し画像

目指せ!マンガ翻訳家

藤子Fノートでは「Fコンテンツ」と命名した藤子作品の考察記事をメインコンテンツとしている。

昨日までで224本のFコンテンツを書いたが、日ごろ僕が最も大事に考えている作業が、マンガのコマをどれだけ忠実に文字化できるかということである。

僕はこれを勝手に「マンガ翻訳」と呼んでいる。


マンガのコマは、絵とセリフで表現されている。セリフは基本的に抜き出せばいいのだが、時には要約が必要である。絵は当然絵なので、これを文字に置き換える作業は工夫を要する。

絵を忠実に文字化することも大切だが、コマの前後の文脈やキャラクターの心情、作者の隠された意図などを読み解いて、その上で文章に落とし込んでいかねばならない。

要するに「ネーム」全体を把握したうえで、個別のコマを読解する必要があるのだ。


この「マンガ翻訳」の正確さが藤子Fノートの肝であり、執筆者である僕自身の技量が試される。

「マンガ翻訳」の具体例として以前記事にした部分を抜粋してみよう。テキストとしては「エスパー魔美」『くたばれ評論家』の冒頭の数コマとなる。


_____________________

画像1

高畑が魔美の強力な協力者となる
自分がエスパーではなかったことで落ち込んだ高畑は、考えを転換させる。魔美に対して決意表明のようなセリフを残すので、引用してみよう。

「あれから考えたんだ。そりゃ、僕自身がエスパーじゃなかったのは残念だけどさ、君の中に眠っている能力を、引き出したり育てたり、エスパーのコーチってのも悪くないと思うんだ」

前線ではなくバックヤードからの支援を買って出る高畑。本当はプレイヤーとして世のため人のために働きたかった高畑だったが、それが叶わなかったとしても、コーチ役という形で世の中に貢献できるのだと考えたのである。

_____________________


『くたばれ評論家』は、この一つ前の話『友情はクシャミで消えた』からストーリーが繋がっている。頭脳明晰な高畑君だが、最初自分がエスパーだと思い込んでおり、実は魔美が超能力者だったことに多大なるショックを受ける。

そういう前提があったので「自分がエスパーではなかったことで落ち込んだ高畑は、考えを転換させる」という補足説明を加えた。

高畑の人柄が浮かび上がるセリフはそのまま抜粋した上で、淡々と語る言葉の裏側の意志を汲み取って「決意表明のようなセリフ」と表現した。


このように何気ない数コマでも、物語の背景は広がっていて、それをなるべく漏らさず拾い上げることが重要となってくる。しかも、しっくりくる言葉使いにしなくてはならない。

今回取り上げた「エスパー魔美」記事の一部は、それが自分の中で納得できた一例として引き合いに出したものである。


僕はこのnoteでは、何かの藤子作品を読んだ人が、振り返りのために僕の記事を読みにきてくれる読者を想定している。けれど、作品に触れてない方でも、記事だけ読んでも楽しめる作りにしたい気持ちも当然ある。

それには、原作漫画の一コマを忠実に文章に置き換える力や、前後の文脈を掴む能力や、新たな解釈を加えたりするオリジナリティも必要となってくる。この力こそ、マンガを翻訳する力に他ならない。

目指せ!マンガ翻訳家。

僕は何者でもない藤子F先生を敬愛するただのサラリーマンだが、マンガ翻訳家になった気持ちでFノートを続けていきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?