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プロとして

マーケティングをしている人間が言っては駄目かもしれないが、マーケティングデータとか過去の実績とかを鵜吞みにしては絶対にいけないと思っている。

データを活用するのは大事だが、それはあくまで参考値に過ぎない。過去の例や机上のデータと全く一致することはないし、前提となる時代の空気だって刻一刻と変わる。その都度、案件ごとに頭を回転させて、何が正しいのかを見極めていかなくてはならない。


僕がエンタメ業界に惹かれたのは、案件ごとの創意工夫が必要な業界だと考えたからだ。

通り一遍のやり方を何も考えずに続けたり、過去の成功パターンをそのまま踏襲したり、かと言って失敗したことを全面否定してしまったり、そんな安直なことをしていけない業界だと思ったのだ。


そして、実際そういう世界だった。

例えばヒット作が生まれたとする。ところがその続編がもう一度ヒットするとは限らない。むしろ同じようにやっているだけでは、7掛け・6掛けの数字に落ち込んだりする。

「こうしておけばいいんだ」といったある種の思考停止が始まると、途端にエンタメコンテンツは、輝きを失ってしまう。コンテンツは生き物だし、置かれる周辺環境でも色合いが変わる。


では、過去の経験やデータが100%通用することのない世界において、私たちはどうやってプロであり続けたら良いだろう。

プロとは、その道で飯を食っていける人を指すが、よりどころとなるのは、過去に学んだノウハウや人脈、仕事の考え方であるはずだ。

ところが、過去の知識・データを使うと間違った結果となってしまう業界において、一度プロとして認められたとしても、そのままプロで居続けることは難しい。


僕は曲りなりにエンタメコンテンツ業界に25年近く生き残っているが、プロフェッショナルであり続けるために必要なことは、情熱を持ち続けることと同義なのではないかと考えている。

誰でも仕事を続けていれば、それなりの知識、経験、データが備わっていくが、情熱を保ち続けられる人は、実際にそれほど多くはない。

僕はフリーの経験がなく、ずっと組織の中にいるが、どこかで妥協したり、忖度したりしているうちに、情熱を失っていく人を多く見てきた。

情熱を失っても、仕事が急になくなったりはしない。けれど、少しずつ、新しいことに対応できなくなって、やがて時代に「取り残される」。そんな厳しい現実がある。


情熱を持ち続けるのは本当に難しいことだ。僕自身、何度もルーティンに陥ったこともあるし、惰性の中で判断をしてしまうこともある。

けれど、やっぱりそれじゃダメなのだ。

熱いものを心の奥底にたぎらせておかないと、困難な場面で萎えてしまうし、逆境から適当な言い訳をして逃げてしまう。

プロとは情熱を保ち続ける人のことを指すと、今の僕は思う。それはキャリアやマーケティングでは身につかない。


もっとも、年中熱意を出し続けるのも、疲れるといえば疲れる。そんな時に格好な方法は、周囲の情熱をたぎらせている人間に近づくことである。自己発電が難しいのであれば、他者の電源を借りるしかない。

そういう意味で言うと、人の情熱を我が事として吸収できる人間は、長くプロフェッショナルの道を歩めるタイプかもしれない。

僕自身、色々な熱い人間に出くわし、その都度パワーを貰って来た。25年間、一応我が業界の最前線で戦えているのも、そんな周囲の人たちに助けられたからなのである。



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