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「若さ」が通じなくなるように、「ベテラン」も通じなくなる

新年度が始まり、新しい職場、新しい仕事に就く人も多いだろうと思う。

この機会に、若くこれから働き出す人たちに贈る言葉は、noteでも溢れかえっているので、ここではそれについては述べない。

むしろ、この新年度という区切りのタイミングで、仕事人生の折り返し地点を過ぎている人たちに向けて、言葉を発してみたい。

それはもちろん、僕自身に言い聞かせる意味合いもあることを先に断っておく。


僕が管理職を務めていた時代に若手の人たちに良く言っていたのは、若さは特権だが、いずれその特権は失われるということだった。

最初は「若い人の意見も聞いてみよう」などと、年を食った人間が言い出したりして、何かと若手の意見が重宝される期間がある。

確かに仕事歴の浅い人間は、固定観念に囚われていない、組織や業界のしきたりに染まっていない考えや感覚を持っているので、意見を拝聴したくなる上層部の気持ちはわかる。

若手の人はそれに対して、臆せずにどんどんと意見を述べてもらいたいわけだが、気をつけるべきは、そうした若さを求められる時期は、数年も経てばあっさりと過去のものとなってしまうということだ。

どんな新人さんも仕事も覚えると共に、固定観念も芽生えていくと見做されるので、若さゆえの意見を聞いてもらえなくなっていく。そして、自分より若い人間が組織に加わってきて、「若者」という役割が別の人間に移り変わってしまうのだ。


だから仕事人としては、「新鮮さ」や「若者ならではの考え」という自分の売りに頼らずに、速やかに「経験値」というアピールポイントを獲得していかねばならない。

そして、経験を積むスピード感が、重要となる。漫然と仕事をこなすのではなく、自ら積極的に「経験」を作っていかないと、同時に社会人デビューした人間と比べて、アッという間に経験の差、すなわち実力差が生まれてしまう。

一定の経験を積んだ人間だけが、さらなる経験値を獲得できる仕事を与えてもらえるので、最初に生まれた実力差は、どんどんと開いてしまうことになるのだ。


ただし、順調に経験値を積み上げていき、ベテランの領域に達した時に、次なる大問題が発生する。突如「ベテラン」が通用しなく時期がやってくるのである。

例えば、今いる自分の組織を見渡してベテランの人を探して欲しい。案外と大勢のベテラン選手が揃っているのではないだろうか。5~6年も働いていれば、すっかりベテランの域に達してくるので、その意味でほとんどの人たちがベテランと言えてしまうのである。

こうしたベテランが大渋滞している状況が生まれている中で、経験値を積んだ人間の個性が際立たなくなってしまうのである。


僕が管理職になりたての頃、若手社員に「若さ」はいずれ通じなくなる、と偉そうに語っていたが、この時僕はとても重要なことに気がついていなかったのだ。

若さが経験に代わったとしても、その経験だって通じなくなる時が来るということを。


問題は、そのようなベテランの壁に到達した時、いかにその壁を超えるか、壊すかということになる。

僕自身、それは試行錯誤の繰り返しなのだけど、今考えていることは、経験値の半分を意識的に捨て去るということである。

培ってきたノウハウ・人脈が全て通用しなくなるわけではない。生かせる部分は確実に残される。しかし、今の仕事だけしか通じないような小手先の技術は、すっかり捨ててしまっていいのではないかと思うのだ。

僕は営業マン人生が長く、営業に特化した技術・経験を人並み以上に積み上げたと思っている。それは会社や業界内で役に立てることのできるものだった。

けれど、同じような経験を若い人も積み上げていく中で、僕としては全く別角度の知識や体験が必要だと感じることになった。

たまたま異動や、ポジションのチェンジなどもあり、それまでの経験が通じない領域も知ることになった。突如の異動は、それまでの仕事を取り上げられてしまうことになるので、少々複雑な思いがすることなのだが、今となってはそれが自分の良い意味での転換点になったように思う。

この4月からも、若干仕事のポジションや業務内容に変化があるが、新しいことには臆せず挑戦したいと考えている。これまで経験していなかったことを得るチャンスと捉えているからだ。


経験値を半分捨て去るという考えに至った時に、ベテランを超えた先の自分の在り方が少しだけわかった気がする。

これまでの経験とこれからの挑戦を組み合わせて、いよいよ自分独自の個性が発揮できるのではないかと思うのだ。

若さで戦う時期、経験を積んで戦う時期を経て、経験と挑戦を組み合わせた個性で戦う時期に差し掛かったと考えている。

この先の世界がどうなっているかはわからないが、ともかくもまだ終わるわけにはいかない。見出した自分の個性を武器に、まだまだ第一線で戦っていきたいと思う。




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