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将棋の話をつらつらと

藤子F作品を愛して止まない私ですが、もう一つ愛していることがありまして、それが将棋です。

今日は週末から体調が優れなかったので、本日は仕事を休みにしていたのですが、午後はずっとある対局の棋譜を見ていました。それが、永瀬拓矢王座と羽生善治九段の対局です。

二人を含めたトップ棋士7人総当たりで王将戦リーグを戦っているのですが、こちら羽生さんが絶好調で現在までに4連勝中となっています。今日羽生さんが勝てば、王将への挑戦権獲得にかなり前進するとあって、将棋ファンにとって大注目の一番でした。


羽生さんは言わずと知れたタイトル99期、前人未踏の1500勝、七大タイトルの永世称号を獲得し、将棋界初の国民栄誉賞を受賞したレジェンドです。しかし平成が終わり令和の世の中になると、藤井聡太五冠らの若手の台頭に押されて、勝率を落としてしまいました。

タイトル戦にも登場しなくなり、昨年は4割台の勝率に留まり、トップ棋士の証でもあるA級からも陥落してしまいました。羽生さんにはタイトル100期というとてつもない大記録にあと一歩なのですが、最近の成績を見ていると絶望的です。

ところが、今年の王将リーグ戦では、渡辺名人らを破っての4連勝。このまま無傷の5連勝となると、かなり挑戦権獲得に近づくことになる非常に大事な一戦だったのです。

そして相手の永瀬さんは、軍曹というあだ名を持つ勝負師で7割以上の勝率をキープしながら、あらゆる棋戦で結果を出している今ノリに乗っている若手トップ棋士です。

そして対羽生戦の勝率が異常に高く、羽生さんから見て対戦成績は4勝12敗。羽生さんが8つも負け越しているのは、彼しかいません。羽生さんからすると難敵中の難敵なのです。

なので、今日の対局も将棋ファンの空気としては、戦う前から敗色の濃い一局でした。しかし、それでも今日だけは勝って欲しいと強く願っている日でもあります。

というのも、この王将リーグを勝ち抜き、タイトル戦に登場するとなると、その相手は藤井聡太さんになるからです。そう、私たち将棋ファンは、羽生さんがタイトル100期をかけて藤井聡太王将とのタイトル戦を実現させるかもと期待に胸を膨らませているのです。


さて、本日の対局結果の前に、先日ちょっとした将棋界を揺るがす事件がありました。それがマスク不着用による反則負け騒動です。事件は10月28日のA級順位戦。対局者は本日の羽生さんの相手、永瀬王座と佐藤天彦九段でした。

佐藤九段は、名人三期獲得の実力者で、羽生さんとの対戦成績も3つ差をつけている強豪です。あだ名は貴族。つまり、軍曹対貴族の一戦なのでした。

A級順位戦は持ち時間が長い対局で、終盤は深夜帯に突入することもよくあります。この日も深夜まで対局が長引き、立会人も帰宅してしまっている中、佐藤さんがマスクを長時間外したまま対局していたとして、永瀬さんの指摘を受けて、それが反則負けの裁定に繋がりました。

マスクを外していただけで反則負けとは乱暴ですが、コロナ禍を受けて連盟が臨時規定としてマスク着用を義務付けていたので、これが根拠とされたわけです。

一発レッドカード退場の処置に、将棋ファンだけでなく、一般人からも否定的な意見が出されていたので、ご存じの方も多いかもしれません。これについては、曖昧な規定をもとに勝敗を決めてしまった連盟の規約と運営に問題があると言えるでしょう。

ただ、ここでマスク不着用の指摘をした永瀬さんに、批判の声が出ている点には、それは間違いだと強く反論しておきたいところです。将棋の棋士たちはすべからく勝負師です。勝負によって日銭を稼ぐ個人事業主です。

曖昧な規約だろうと、過ちを指摘することは何も間違いではありません。今回の騒動では、まあいいやで許せなかった永瀬さんの、その真剣な態度にむしろ僕などは感動を覚えました。


さて、話を戻して、羽生さん対永瀬さんの一局です。王将リーグは、残念ながら無料の中継を見られない棋戦なのですが、何とか将棋連盟の携帯アプリでは観戦することができます。(アプリは課金制ですが)

永瀬さん先手番で始まった一局は、角換わり腰掛け銀という戦型となりました。ここ数年大流行している戦型で、隅々まで研究が及んでいることもあり、序~中盤はある種の研究勝負となります。

最近のトレンドは、研究で分かっている手順は、持ち時間を消費せずにどんどんと手を進めていきます。本局も午前中(開始から2時間)に60手まで進む超ハイスピードな対局となりました。

これには若手の永瀬さんはともかく、もう50歳を越えた羽生さんが最新形を深く研究していることに驚きを覚えます。そして実際に新手を繰り出したのは羽生さんの方で、永瀬さんは羽生さんの手に対応するような流れとなっていました。

プロの対局は、素人目にはどちらが優勢が全く分からぬまま進みます。将棋アプリでは、解説を入れてくれるので、これを読んで何とか、今盤上で何が起こっているのかだけは頑張ってついて行きます。

また素人として、どちらが優勢かどうかを図る基準として、残りの持ち時間に注目することがあります。劣勢の方が考える時間が一般的に長くなることが多いので、極端に持ち時間に差が出ると、少ない方が劣勢という風に思うというわけです。

この対局は、78手目のところで羽生さんの持ち時間は残り12分になりました。対する永瀬さんは1時間12分残しています。この状況となり、嫌な予感が走ります。だいぶ、羽生さんが押されているのではないか、と。

コンピューターソフトを持っている人なら、ソフトで棋譜を並べて評価値を見るというような芸当もできるのでしょうが、さすがに僕はそこまでのソフトは用意できていません。

ヤバいんではないか・・という感じだけで、対局を見ていくことになります。ところが88手目に羽生さんが本日のポイントとなる32歩を指して、永瀬さんの指が止まります。この時点で羽生さんは残り4分。永瀬さんは48分。

後でわかったことですが、馬と竜の挟撃態勢にあって、それが歩で受かってしまうという絶妙手が32歩でした。これを見て長考に沈んだ永瀬さんは、48分を使い切って、次の一手を指しました。状況的には、これは完全に逆転模様です。

実際にここからはパタパタと手が進み、94手で永瀬さんの投了となり、羽生さんはこれで王将リーグトップを確定させる5連勝となったのです。まだプレーオフの可能性もあるので、本決定ではないのですが、これで対藤井聡太さんとの夢のタイトル戦に一歩近づきました。


さて、思いの外長文となってしまった、将棋談義はおしまいにします。なぜこれほどに将棋に熱くなっているかと言えば、実は私、11月3日にコロナ禍以降初の将棋大会に出場予定だからです。

団体戦なので、チームのために頑張るということもありますが、人と実際に盤を挟んで戦うのは、本当に久しぶりで、今からワクワクしております。今の優れない体調が戻ってくれることを願いつつ、本日はこれで寝たいと思います。



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