見出し画像

企画(者)に徹底的に寄り添うこと/エンタメコンテンツ営業心得③

25年間エンタメコンテンツを届ける仕事をしてきた中で、最も大事たと思っていたのは「お客さんをきちんと意識すること」でした。送り手側の論理ではなく、あくまでエンドユーザー、消費者、コンテンツを受け取る側の意思が尊重されるべきだと思うからです。

そして、もう一つ同じくらい重要なことがあると思っています。それは「企画者の企画ときちんと寄り添うこと」です。


営業の仕事は、できあがったコンテンツをいかにしてお客さんに届けるかが重要なミッションですが、そもそもお客さんにとって魅力的なコンテンツでなければ、営業がいくら頑張って届けようとしたも、恐ろしいくらいに世間に広がっていきません。

優秀な営業マン、伝説的なセールスマンでも、お客さんが求めていないものを売ることはできないのです。

よって、営業の体質として、売り物についてきちんと意見を言わねばならないというマインドが身に付いています。売れないことを自分のせいにされてはたまりませんから、きちんとそのコンテンツが商売になるのかどうかを、厳しく問うことになります。

そうなると、コンテンツの作り手や仕入れのセクションに対して、時として強いダメ出しをしていく場面が出てきます。真面目なセールスマンだったり、自分の仕事にプライドがある人であればあるほど、ダメ出しの語気は強まります。


その結果どうなるのか。

企画者と営業マンの深刻な対立が始まってしまうのです。

本来、作る人と売る人は一体であるべきだと思っています。どんなエンタメコンテンツも、作る人と売る人が分業してはいけないと考えていて、一緒に物を作り上げ、一緒にお客さんに届けていくことが重要だと思います。

では、具体的に作る人と売る人が一致団結するためには、どういったことが必要となるのでしょうか。

それが、本稿の冒頭に書いた、営業が企画者ときちんと寄り添うことなのです。


もちろん、営業現場経験の長い人たちから言わせると、企画者側から事前に営業に相談してこいよ、という気持ちは常に持っています。マーケットを見ないで、勝手に作るなよというモードなのです。

ですが、企画者からの相談を待っているだけの営業マンは、僕から言わせれば二流です。営業、特にエンタテインメントを扱う人たちであれば、営業側から企画者側に寄り添って、共に作り上げる気持ちを共有しなくてはなりません。

企画者は自分の企画にプライドを持っていますから、たいした議論もなく営業部門にダメ出しされることについて、非常にナーバスになっています。営業に厳しいことを何度か言われていると、自分自身を否定されたような気持ちになってしまうからです。

よって、営業側は、企画者のそうしたか弱い部分を理解してあげなくてはなりません。相談して来いよの姿勢ではなく、こちらから寄り添ってあげることが肝要と思っています。


僕は企画者側の部門にも所属していたので、営業も企画も双方の気持ちを理解できているつもりです。

その上で例えると、一つの「企画」における営業マンの立ち位置は、子供たちを預かる学校の先生・塾の講師みたいなものです。一方で企画者にとっての「企画」は、家庭での我が子のようなものです。

企画者は、あくまで我が子(企画)が一番であって、その他大勢の中に組み込まれてしまうことを以上に嫌がる人たちなのです。

営業(先生)からすれば、企画者の無理な要望はモンスターペアレントのクレームのように聞こえるかもしれません。けれど彼らは我が子がともかく大事。ここを無下にしてはいけません。

よって、営業マンの負担は大きいと思いますが、自ら教壇を降りて、子供たちの家庭訪問をしなくてはなりません。その子の親にはなれませんが、親子に対して、心から徹底的にコミットすることが求められます。


営業はお客さまに寄り添い、企画者にも寄り添わなくてはならない大変な仕事です。ですが、その分やりがいもありますし、高い視座で物事を見ることのできる役割だと思います。

その経験はきっと、エンタメビジネスに関わり続ける限り、とても貴重なものとなるのではないでしょうか。


これまでのシリーズ記事。

目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?