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同じボールを追わない

サッカーに全く詳しくない自分ですが、一つのボールをみんなで追いかけることが、愚かなことくらいはわかります。

フィールド上の11人が、それぞれ与えられたポジションや役割に準じて、それぞれが有機的に動いていくものだと思います。

さらに知ったかぶりして話を進めると、全体を指揮する監督は、刻一刻と変化する試合の状況を見ながら、作戦を変えたりメンバーの入れ替えをしたりするはずです。

「ゴールを決めて勝つ」という大方針は揺るがないのでしょうが、その目的達成のためには、きめ細かなメンバーの動きが必要なんだと思います。

少なくとも、みんなでボールを追って、みんなでゴールせよとはならないのは確かでしょう。


ところが仕事の組織においては、ボールをみんなで追ってしまうような愚かなことが時々まかり通ります。

例えば、何か全体で強めの方針が出された時に、必要以上にスタッフを同じ方向に向けて、同じ動きをさせたがります。野球で言えば「全員野球」といった感じで、一つのことを皆で徹底的に突き詰めたりします。


本来、点を決める者、守備につく者、中間で動き回る者、そういう個々の役割がきちっとあって、全体として組織の方針が達成できるように人員配置をしたり役割分担をするのが当然です。

ところが、一見、ボールを追っていない人間を見つけては、全体の方針と違う動きをしていると決めてかかる人が、一定の比率で存在します。

ゴールするという目的に対して、ボールを追っていないと批判するのは、目的と手段を取り違える典型的なパターンですが、こういう輩が意外に組織に多くて困ります。


僕はわりと天邪鬼な性格だったこともあり、組織が一つの方向だけを向き始めた時に、敢えて別動隊のような動きをしてきました。

違う角度から攻めて、別の結果を獲得するやり方です。これは場合によっては、本流よりも大きな成果が出せたりして、その際には自分の存在感を出すことができます。

もちろん、誰かがメインスタッフとなって、ボールを追ってゴールを決めなくてはならないのは確かです。みんながみんな別動隊になっては、これも組織として不健全となります。

全体を見渡して、適正に配置する。人を動かす。そういう鳥瞰が大事なんだと思います。


僕自身、10年くらい管理職をしてきましたが、現在プロ職となり、フィールドを走り回る役回りになっています。そこで思うのは、自分に降りてくる指示が、全体を見渡した上でのものなのか、そうでないのかは、すぐにわかるということです。

指示だしをする立場から離れたことで、いかに愚かな議論が上の方で行われているのか、目的と手段を取り違えた指示がいかに現場を混乱させているかが、よくわかります。


そんな現場が混乱に巻き込まれた時、僕はこれまでのキャリアから学んだことを再活性させて、自分で方針を立てて、仕事を全うさせるようにしています。大事なことは、目的を見失わないようにすること、そして指示を鵜呑みにしないことです。

これは天邪鬼な僕が、常に人と違う動きを意識してきたことが、役立っていると感じています。みんながボールを追っている時に、ふと立ち止まって、周囲を見渡してみる。すると、フリーになれそうなスペースがポッと見えてくるものです。

管理職の立場を利用した仕事の仕方があり、それは貴重なものなのですが、たとえ立場が無くなったとしても、これまで現場で培ってきたキャリアやノウハウ、人脈は失われないと考えています。


そしてもう一点押さえたいこと。それは「動く」ことです。変な指示や方針が出てきた時に、思考停止したり、様子見を決め込むのはあまりお勧めしません。

ともかく、自分の考える仕事を全うしようとしてみる。その後、組織の方針とアジャストしていく。いち早く動けた人間が、結局は勝ち残れるのだと僕は確信しています。




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