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新潟の大雪と、「のび太の結婚前夜」と、子供が生まれた日のこと

新潟県では、大雪によって、高速道路上で千台以上の車が立ち往生となっているいう、心配なニュースが伝わってきている。豪雪地帯で雪慣れしているはずなのに、この大騒ぎということは、余程の想定外の積雪量と積雪スピードだったのではないかと想像される。被害に遭われている方々がご無事であることを願わずにはいられない。

新潟地方だけではないが、豪雪地帯では、まず12月に一度ドカ雪が降ることがある。

ちょうど6年前の12月中旬に、新潟に大雪が降り積もったことがあった。


この時、僕の奥さんは出産準備で新潟の実家に居たのだが、そんな大雪の積もる深夜に、突然、産気付いた。

慌てて義父が車を出して病院へ向かうのだが、まずは車庫の前の雪かきから始めなくてはならなかった。相当慌てたことだっただろう。

そして何とか車を出して、身重の奥さん(娘)を乗せて、雪道をゆっくりと走る。ちょうど、目の前を除雪車が走っており、後についていく形で病院へと向かったのだという。

僕は深夜に第一報を聞いたが、その時は千葉県にいた。居ても立っても居られなかったが夜なので何もできない。そのまま夜を明かし、朝いちばんの新幹線に飛び乗った。

幸いというか何というか、僕が翌日の早くに病院に着いた時には、いったん奥さんの産気は引いて落ち着いている状況であった。

そしてしばらくした後再び奥さんが産気付き、難産の果てに、その翌日の早朝、子供は産声を上げたのだった。

出産後、すぐには部屋に入れない。そこで手持ち無沙汰の僕は、病院の外に出てみることにした。

12月の早朝はまだ暗く、既に大雪は降りやんでいたが、病院のエントランスには雪が白い高い山のように搔き出されて、車寄せの脇に集められていた。

誰もいない暗く静かな空間で、僕は寒さも忘れてぼうっと空を眺めた。

僕は、ここでふと、「のび太の結婚前夜」を思い出した。

のび太と結婚式を迎えるその前夜、しずちゃんは、ドラえもんの道具「正直電波」を受けて、お父さんに結婚を止める、と言い出す。

しずちゃんのパパは、そんな娘をたしなめる。この時のセリフは全て抜き出したくなる名文で、これが大好きだというドラえもんファンは非常に多い。

僕はその中で、しずちゃんのパパが、娘が生まれたときの話をしている部分があって、そこが溜まらなく好きである。抜粋したい。

「最初の贈り物は、君が生まれてきてくれたことだ」
「午前3時頃だった。君の産声が天使のラッパのように聞こえた」
「あんなに楽しい音楽は聴いたことがない」
「病院を出たとき、かすかに東の空が白んではいたが、頭の上はまだ一面の星空だった」
「この広い宇宙の片隅に、僕の血を受け継いだ生命が、今生まれたんだ」
「そう思うとむやみに感動しちゃって」
「涙が止まらなかったよ」

僕は、このしずちゃんのパパの言葉を、思い出していた。泣けはしなかったが、静かな感動が心の奥底から沸き上がってくるのを感じた。

院内に戻ると、すぐに「サルのような」赤ちゃんと、長い出産を終えた安堵のママに対面することになった。


あれから6年が経った。息子は、毎日のように「ドラえもん」を読み漁っている。

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