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【有給問題】#03 ~有給休暇義務付けのその先へ~

こんにちは。社会保険労務士法人シグナル 代表有馬美帆です。
 

【有給問題】シリーズも今回で3回目です。
♯01 ~今だからこそ改めて有給休暇の本質を見よう~

#02 ~有給休暇と働き方改革 法改正対応へのアドバイス~


2018年10月23日に最新の厚生労働省の調査(平成30年「就労条件総合調査」)が発表になり、2017年の日本の年次有給休暇(有給)取得率は51.1%、取得した日数は9.3日となり、やっと50%超になりました!(パチパチパチ㈷)

…と喜びたいところではありますが、この連載記事をご覧の方ならお分かりの通り、5割でも低いというのがグローバルスタンダードなのです。

「でも、そんなに休まれたら経営が…」と経営者の方はおっしゃるかもしれません。

 ですが、働き方改革、そして外国人労働者受け入れと、時計の針はどんどん進んでいます。 今のままではいられない日がすぐそこまで来ていますので、 有給問題を今のうちに考えることで、次の時代の先頭に立ちましょう!


それにしても、なぜ日本の有給取得率は低いのでしょうか。
「世界と日本、そして自社」という3つの視点で考えてみましょう。


1 今こそ真似る時!連続した有給制度

まずは、世界、つまり国際的な視点から有給について見てみましょう。

わが国で有給が法制化されたのは、戦後に労働基準法が制定された1947年(昭和22年)のことです。

ところが世界では、戦前の1936年にはすでにILO(国際労働機関)で、有給休暇条約(第52号)が採択されていました。

その内容は、勤務年数が1年を経過した者は、連続した6日の有給を与えるというものです(現在はこの内容が改正され、さらに連続有給日数が増加しています)。

労働基準法を制定するにあたり、ILO条約が当然参考にされましたが、「連続した」という部分は抜け落ちて成立し、今日に至っています。

幕末の開国以来、欧米の真似をして発展してきた日本ですが、なぜか有給のスタイルは真似しなかった。

それだからこそ、昭和の「モーレツ社員 」の方々が朝から晩まで働き、休みも満足に取らなかったことで戦後の高度経済成長を成し遂げられたという面もあるのでしょう。

しかし、今や日本は経済大国となって久しく、もうすぐ平成時代も終わろうとしています。

平成時代は、「平成不況」「失われた20年」の時代でもあったわけです。
それは、経済成長を成し遂げた日本が、目標を見失いさ迷った時代かもしれません。

もちろん、日本は新たな目標を自力で見つけなければならないのですが、その前に、「真似し忘れたもの」に目を向けてみてはどうでしょうか。

それが、「連続した」有給取得です。

学ぶの語源は、「真似ぶ」と言われています。
戦後、日本が各国を真似て高度経済成長を成し遂げたように、各国の連続した有給休暇を真似るべき時です。


2 働き方改革とは休み方改革のことだ

現代の日本社会は、政府の「働き方改革」にどう対応するかが大問題となっています。

「働き方」とは、1日における労働時間の問題だけを意味するわけではありません。

「働き方」を考える際には、「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の視点から考えることが必須になります。

もちろん、1日の中でのバランスという面もありますが、1年間のスケジュールや人生の中でのバランスという面もあります。
時には、「ワークが多め」の時期もある代わりに、「ライフが多め」の時期があれば、それはそれでバランスが取れているとも言えます。


ご存知の通り、日本は長寿大国であり、人生100年を生きる中で、今までのように「教育・仕事・老後」期間を切り離して生きていくのではなく、お互いの期間を行ったり来たりしながら、場合によっては掛け持ちしながら生きていくことになるでしょう。

仕事部分に特化すると、これからは長時間労働というのは確実に減少していくでしょう。

「連続した」有給を取ることは、どうしてもワークが多めとなりがちな私達が、「ライフ」とじっくり向き合う時間を確保する良い機会です。


現在は、企業に65歳までの雇用確保が義務付けられた結果、多くの人が65歳まで働くようになってきています。そして、政府は70歳までの雇用延長確保も検討する方向 にあります。

これだけを見ると、「ワークが多め」の時代が来るようにも思えますが、「連続した」有給が取りやすいようになれば、高年齢になっても、ワークとライフのバランスを取りつつ働けるようになるのではないでしょうか。

1日だけの有給では、「マイナスをゼロに」するくらいですが、連続した有給なら、プラスに体調を整えることもできるでしょう。
その効果は、年齢が高いほど大きくなると思います。

2030年には、日本の人口の3分の1が高齢者になるそうです。
高齢になっても元気で健康に働ける社会を実現するために、日本は「休み方」から見直す必要がありそうです。


「休み方」を考えることは「働き方」を裏から考えることだと思います。

「働き方改革」のために「休み方改革」に取り組むことも考えられて良いのではないでしょうか。


3 人材確保にもつながる「休み方改革」

「休み方改革」は人材確保にも大きな効果を発揮すると考えられます。

人材確保は、有望な人材の採用という攻めと、有能な人材の離職防止という守りの両面を強化することによって達成されます。

(長期)休暇の取得率が高いことは、他企業が低い現在であれば、採用面では有利な宣伝材料として働きますし、離職防止の面では、ワークライフバランスが達成された結果としてのエンゲージメントの向上という点で有利に働きます。


企業としては、働き方改革を「休み方改革」としても捉えるべきでしょう。

人事労務担当者の方は、ともすれば法改正の「後追い」に忙殺されがちですが、それだけではなく、自社の労働者の働き方や休み方を「先取り」して考えることも大切な仕事です。

ちょうど先日、2019年のゴールデンウィークは、10連休になることが発表されました。
月末・月初業務を前倒しで行う必要があります。
この10連休は、将来的に実施する(長期)休暇のシミュレーションの絶好の機会ともいえます。

長期休暇を取りやすい「休み方改革」をするには何が必要かをぜひ考えてもらいたいと思います。

「休み方改革」は経営者や人事労務担当者にとって、今後大きな課題になってくるはずです。

次回は、有給問題の総まとめとして、この問題をさらに掘り下げます。


【有給問題】シリーズ
#01  ~今だからこそ改めて有給休暇の本質を見よう~
#02 ~有給休暇と働き方改革 法改正対応へのアドバイス~
#03   ~有給休暇義務付けのその先へ~


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