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今後法改正が見込まれるものver2

こんにちは。

社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆(@sharoushisignal)です。

※このnoteは、2020年1月26日に公開したnote記事に最新の情報を踏まえて加筆・修正したものです。

随時、表形式でお伝えしています「注目の法改正等」ですが、それ以外にも今後法改正が見込まれるものもあります。こちらも、最新の内容をバージョンアップした表とともにお伝えします!

note.本文用-今後の法改正2


<1.中途採用比率公表義務化>


労働施策総合推進法の改正により、労働者数301人以上の大企業について、「中途採用比率」を公表することが義務付けられるようになる予定です。
なぜ大企業向けの義務付けなのかというと、大企業になるほど中途採用の比率が下がる傾向があるからです。

今回の改正の背景には、いわゆる「就職氷河期世代」対策や高齢者雇用の確保という狙いがあります。
この改正は「全世代型社会保障改革」の一環として行われます。

就職氷河期世代の方々や、高齢者の方々にできるだけ就業してもらいたい。そのために大企業に対して重い腰を上げて、中途採用に積極的に取り組んでもらうためのきっかけにしたい、というわけです。

それに加えて、比率が公表されることで、「あの会社は中途採用に積極的なんだな、だったら応募してみるか」というように、経験者の転職が活性化することも狙いの一つです。

「働かないおじさん」が注目のワードになったりしていますが、現在の雇用の流動性が低いままでは、その問題はなかなか解決できないでしょう。
政府が雇用の流動性を高める方向に舵を切ると、「働かないおじさん」の中にも、「俺も転職に向けていろいろやってみるか」と能力開発に目覚める人が出てくるかもしれません(もちろん、男性に限った話ではないですが)。この法改正が、新たな環境で活躍しようという人材の活性化につながるきっかけになるかもしれませんね。


<2.3社会保険の適用範囲拡大>


社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、所定労働時間の3/4以上(一般的には週30時間以上)の労働者が加入することになっています。

加えて、政府は医療保険や年金の財源確保のために、社会保険に加入している被保険者数が501人以上の会社においては、2016年10月1日から適用範囲を拡大させました。要件としては、所定労働時間が週20時間以上、月額賃金が88,000円以上の人が対象になりました(その他の要件としては、勤務期間1年以上見込みがあり、学生ではないというものです)。

政府は、さらに医療保険と年金の財源確保をするために、被保険者数501人以上の会社となっている要件を、2022年10月から101人以上、2024年10月から51人以上とする予定です。


<4.高年齢継続雇用給付の段階的縮小>


政府は2000年代に入ってずっと、65歳までの雇用確保に取り組んできました。雇用の確保のためには、企業の対応が必須となりますが、企業の経営面への配慮も欠かせません。

そこで、高年齢継続雇用給付金の制度を設けて、60歳到達時点で賃金が低下した場合に、一定の基準を満した60歳以上65歳未満高年齢労働者に給付金を支給するという形で企業を側面支援してきたわけです。

時は流れて、「70歳までの雇用確保努力義務化」が現実的なものとなりました。それは同時に、「65歳まで働いて当たり前」「65歳まで雇って当たり前」の社会が到来したということを意味します。

そうなると、高年齢継続雇用給付金という「特別の配慮」はもはや不要ということになります。いきなり廃止すると影響が大きいため、2025年度から現在の半分程度の水準とし、その後段階的に縮小していくのが政府の方針です。

この改正も、やはり中長期的なタイムテーブルが必要なものですね。
将来、高年齢継続雇用給付金がリニューアルして登場するのではないでしょうか。


<5.複業者の労災における休業補償等の合算給付>


政府の「働き方改革」の目標の一つが「柔軟な働き方」の実現です。
「柔軟」とは何かということになりますが、①契約形態、②就業時間・場所の柔軟性に加えて、③複業(副業・兼業)に関する柔軟性がその内容となります。

複業のなかでも一番イメージしやすいのが「副業」ですね。
一般的には企業に安定的な立場で雇用されている方が、その企業の労働時間外に副収入を得るような働き方を意味します。

大企業でも「副業解禁」をされるところが増えつつあります。副業という越境で得た知見を自社に持ち帰ってもらうことを期待するなどの理由があるそうです。「パラレルキャリア」(「仕事と仕事」、「仕事と学び」、「仕事とボランティア」などを同時並行的に行う生き方)の1つとして語られることも多くなってきています。

政府も企業も副業推進に向けて動き始めていますが、ここで問題になるのが、先ほどの、「仕事と仕事」という働き方をされている方に、万が一にも労働災害(労災)が発生した場合です。

現在の仕組みは、複業を前提としたものとなっていないため、労災保険の支給に関する労働時間や賃金の算出の結果による補償が、柔軟な働き方をされる方にとって十分なものとならない面がありました。

法改正により、この点について例えば複数の会社での残業時間について合算されることになり、過労死ライン超えによる労災認定が受けやすくなる予定です。
もちろん、過労死など労働災害は起きてはならないものですので、この法改正を機会に、各企業の経営者やHR担当者の方々は、自社がどのように複業(副業・兼業)を位置づけるかについて、抜本的な検討をなされることをおすすめします。

<6.雇用保険関連でいくつか議論中>


雇用保険の失業給付における給付制限が5年の内2回までは3か月から2か月に変更する制度、離職票の支払基礎に日数だけではなく労働時間による基準も補完的に設定、雇用保険の65歳以上対象者に2つの事業所を合算して週所定労働時間が20時間以上の基準を適用する制度が議論されています。



それでは、次のnoteでお会いしましょう。
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