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3年ルール、無期雇用派遣、人手不足による時給上昇:変化する派遣労働市場

こんちは!副業社労士まさゆきです
派遣会社と話していると、最近の派遣市場は3年ルール、無期雇用派遣、人手不足による時給上昇:変化する派遣労働市場により大きく変化していると感じます。

2015年の法改正で派遣社員の3年ルールが制度化されました。派遣社員は3年を超えて派遣先の同じ部署で働けず、契約は終了します。派遣先が安い給与でずっと働かせるのを防止し「正社員化しなさい」と促す法目的でしたが、実際にはその通りにはなっていません。

同法改正で、無期雇用派遣も制度化されました。3年を超えて派遣先が派遣社員と契約したい時「期限を無期にして契約する」選択肢です。無期でも派遣先は契約を終了することが出来ますが、その場合でも、派遣会社は派遣社員を雇用し続けなければいけません。無期雇用派遣をする時“派遣会社は派遣社員を正社員にしなければならない(常用雇用と言います)ルールだからです。派遣社員の雇用安定と、派遣という働き方の維持を両立する契約形態です。

加えて人手不足による時給上昇です。2019年4月に1.53だった東京都の有効求人倍率は2021年4月の0.85から反転し、人手不足の中2023年7月現在1.29で高止まりしています。
東京23区の募集平均時給は一貫して上昇、2019年4月1,661円/時間から2021年4月には1,743円、この10月には東京都最低賃金は+41円上昇、まだまだ上がるでしょう。

人手不足による時給上昇が続く中「派遣という選択が正しいのか」検討する会社が出てきています。派遣のメリットは「人員増減の調整弁としての役割」です。ところが、定常的な人手不足の状況では、調整弁の意味は薄れます。優秀な派遣社員は正社員にした方が得です。選択肢は次の3つです。
1)派遣社員を継続する
2)派遣社員を正社員化する
3)有期雇用派遣を無期雇用派遣に変更する
2)と3)の選択肢を考えてみます。

《派遣社員を正社員化する》
3年ルールが制度化された際、我が社は数名の派遣社員を正社員化しました。2021年、同一労働同一賃金の適用が中小企業に拡大されました。正社員と派遣社員に不合理な給与差があってはいけません。現在許容される差は正社員:派遣社員=100対70程度でしょうか。
派遣社員の時給上昇により差が縮小すれば、会社は「優秀な派遣労働者を正社員化し教育した方が得だ」と考えます。派遣社員を正社員化検討する時給を試算してみましょう。

一般事務職派遣社員の契約料金は現在2400円/時ぐらいです(1)。同じ仕事をする正社員の時給は2500円ぐらいでしょう(月給26万円、賞与含)。正社員には①社会保険料会社負担分(給与の15%)②交通費・福利厚生費・社員を維持する間接費(給与の7%)③社員教育費(3%)の追加経費25%が必要です。2,500円×1.25=約3,200円(2)が正社員の時間費用です。(1)と(2)を比較しどちらにメリットがあるかで派遣社員と正社員どちらを選ぶかが決まります。

《有期雇用派遣を無期雇用派遣に変更する》
我が社でも有期派遣社員を無期派遣へ変更する検討を始めています。仕事を覚えて一人前になるのに3年かかります。人が替わってまた最初から仕事を教えるのは大変です。それなら無期派遣社員にメリットを会社は感じるでしょう。
ただ、無期派遣契約は派遣会社の正社員に限定されています。つまり、派遣先との契約が解除されても、派遣会社は継続雇用しなければなりません。
派遣会社にはメリットがないよう思えますが、派遣会社は契約単価をアップ(私の調べた範囲では+20%程度)し利益率を確保することで対処しています。大口顧客である自動車メーカーや家電メーカーは無期派遣社員を求めるそうで、無期契約は定着しつつあります。

では、無期契約は派遣社員や派遣先にとってはどうでしょうか。

[派遣社員にとって]
派遣先から契約解除されても派遣会社が雇用継続するため雇用は安定します。ただ、有期雇用の“働く職場選択の自由”は難しくなるかもしれません。「働いてもらわなければ困る」と言われれば、職場の好き嫌いを言いづらくなるでしょう。

[派遣先にとって]
優秀な社員を無期雇用できるメリットがあります。ただ、契約単価20%アップ?を覚悟しなければいけません。時給上昇リスクと「正社員化」、個々の案件で費用対効果を考え判断する必要があります。

《そしてこれから》
派遣労働市場の変化は、時給上昇が契機となっています。時給上昇が止まらないと変化は続くでしょう。
更に「AIが労働力を提供する」変化も派遣労働市場に加わります。AIの労働力が時給上昇に影響するかが鍵となります。
AIが人間の仕事を代替すれば派遣社員の時給上昇は止まる、という声があります。AIの進化を上回るペースで労働人口の減少は進むため時給は上昇し続ける、という見方もあります。
今後は不透明ですが、派遣社員、派遣会社、派遣先、どの立場でも変化に対応する力が必要です。

ではまた次回


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