見出し画像

詐欺師の誤算 笹倉昭 読書感想 ややネタバレ有

下町に開業して10年の個人経営の居酒屋の女将が何食わぬ顔で
常連として店に通ってきてた詐欺師に騙される話。
実際の殺人事件や他の事件もだけど「まさか、あの人が!?」パターンの
入り方で、警察から電話があって当惑する女将の場面から始まる。

他の常連の話や別に騙された被害者とも連絡を取り、詐欺師の足跡や
「そう言われてみれば、そんな事あったね」という断片を繋げていって
詐欺師から何とか少しでも被害金額を取り戻そうとするのだが、
そんな簡単に取り戻せたら詐欺師稼業は儲からないんだな。

この詐欺師と一緒に暮らしてる女が普段はアホのフリしてるんだけど
最終的に全部を持っていってしまうのが「詐欺師の誤算」なわけ。

実際に騙されて1円でも多く取り返そうとしてる被害者の心情が
ページを進める度に汲み取れてくるのだが、非常に暗く重い気分になる、という意味ではとても良く出来てる作品だと思うし、誰にも金銭的な救いが
無いというのは本当に詐欺師に掛かった人の手記みたいであった。

ただ、ここまでケチな詐欺師はいないだろうというのがフィクション、
この物語の救いかなと。

読みやすい文体でページ数も多くなく読みやすかったのも救いだね。