見出し画像

複数の経済圏を行き来する力が、未来の必須スキルになる

「経済」って聞くと何をイメージするだろうか?今回は、経済をメタに(俯瞰して)眺めながら、多種多様な経済圏を行き来することについて書いてみる。

執筆:丑田俊輔(シェアビレッジ代表)

前回の記事はこちら

いま自分はどの経済圏で生きているか?

「経済」と聞いてぱっと思いつくのは、お金のことかもしれない。「金銭のやりくりをすること」というその意味からすると正しい。同時に、経済という言葉には「人間の生活に必要な財貨・サービスを生産・分配・消費する活動。また、それらを通じて形成される社会関係」という意味もある。

こう捉えると、経済は必ずしもお金による交換だけじゃない。"economy"の語源は「家計の管理」だ。シンプルに言うと、暮らしの中でよりよく生きるために必要な営みともいえそうだ。自分以外との社会関係で成り立つもの(=経済圏)でもあるから、コミュニティや共同体ともがっしりと結びついている。

お金による交換はとても便利。明日からお金なしで生きてねといわれるときつい。でも、価値をはかるモノサシや、生きるために必要な営みが、お金と生産性一辺倒だと、結構しんどそうだ。(人にもよるけれど)

昨今、「貨幣経済」との付き合い方もいくつもあるし、貨幣以外の経済圏もある。どれが優れているというよりかは、「いま自分はどの経済圏で生きているか?」を眺めてみると、新たな選択肢も生まれていくと思う。

画像2

多種多様な経済圏と「暮らし」

田舎暮らしでよく言われるのは、「自給経済」や「贈与経済」という視点だ。

例えば、田んぼでお米をつくるとか、山で山菜をとったり薪を調達したり。これらをコミュニティで共有したり、おすそ分けし合ったり。里山から材を切り出し家を建て、薪でエネルギーを賄い、集落で管理する茅場から屋根の材としてすすきを調達して皆で住まいをととのえる茅葺古民家はその具体としてわかりやすい。

これらの経済圏を暮らしの中に増やしていくと、貨幣経済への依存度は下がっていく。一番振り切った場合は、お金がなくても生きていける状態が生まれる。

だけど現代は、(ごく一部を除いて)どこに住もうとも国家や自治体というシステムにもつながっているし、田舎までインフラもインターネットもつながっているから、複数の経済圏を、どのような塩梅でバランスをとっていくかも問われる。

同じ田舎でも、グラデーションはある。地方都市や田舎の中心市街地で暮らして多くを貨幣経済に依存している場合は、田舎だから生活コストが安くなるわけでもなく、逆に人口が少ない分、一人あたりのインフラコスト(水道ガスや医療など)が高く付く場合もあるだろう。

画像3

「貨幣経済」との向き合い方も、一つではない。

資本主義を乗りこなして爆速で成長するスタートアップ的な向き合い方もあれば、拡大成長を必ずしも前提としない数百年続く地域企業(酒蔵など)や、地域内でお金を循環させていくローカル経済圏(まちのカフェや温泉など)もある。コミュニティでお金を循環させるケース(町内会やコープなど)や、市場化しにくい領域は寄付や公民連携で成り立たせるケースもあり得る。

ここ数年は、「シェアリングエコノミー(共有型経済)」という言葉の認知も広がってきた。共助やつながりをベースにしつつ、背面に資本主義の力も活かしながら成長している企業は各国で生まれてきている。

そのたどり着く先として、『限界費用ゼロ社会』(ジェレミー・リフキン著)では、売り手・買い手の境目が溶けた「生産消費者(プロシューマー)」による「協働型コモンズ」、と予測している。

経済圏によって組織のかたちも変わる

どの経済圏で生きるかによって、組織のあり方も変わってくるはずだ。

スタートアップであれば、株式会社として資本政策を組み立てていきながら、投資家への金銭的リターンとも向き合っていく必要がある。NPOや一般社団法人、合同会社、任意の組合など、様々な組織体が法的にも整っており、目的に応じて使い分けをしていけばいい。

新たな経済圏を生み出したい場合は、現行の法律とも真摯に向き合いながら、一定のハックをしていくこともありだ。

自分の関わっているものを例にとると、2004年に公民連携で生まれた「ちよだプラットフォームスクウェア」を運営しているプラットフォームサービス株式会社は、地域の社会関係資本(つながりの資本)を豊かにしていくことを目的とし、「非営利型株式会社」という形態をとっている。

法的には株式会社だが、定款で独自のルールを定め(株主配当・役員賞与なし / 収益は事業や地域社会に還元)、これに共感してくださった人達からの出資や参画を得ることで、一定の資金調達を元に事業を運営している

また、「Share Village」を運営しているシェアビレッジ株式会社は、「協同組合型株式会社」として誕生した。参加する一人ひとりのオーナーシップを基盤としたプラットフォームの育成(Platform Cooperative)を目指していきたいと、株式会社のルールに則りながらも、議決権を有する普通株式(一人一票)と、議決権を有しない優先株式の二種類の株式を発行している。

経済圏を乗りこなすツールの発明は黎明期

経済圏によって、扱うツールも変わってくる。

国家で発行しているお金でやり取りするのがシンプルに便利なものはたくさんある。そんなシーンではばんばんお金を使うのがいいと思う。

デジタル技術の普及も手伝って、共感コミュニティ通貨「eumo」や、地域通貨「まちのコイン」といったサービスも生まれており、これからの展開がとても楽しみだ。ブロックチェーン上で新たな貨幣をデザインできる「PEACE COIN」をはじめ、様々な仮想通貨も百花繚乱な時代。

Share Villageでは、メンバー同士でお金を持ち寄る要素と、コミュニティのつながりを豊かにするコミュニティコイン(法的な通貨ではない)の発行を用意している。

まだまだ黎明期だ。

経済圏をホッピングする

人間も、生きるということも、とても複雑なもの。「一人の人間=一つの経済圏」である必要は決してない。誰もが、複数の経済圏を自分の中に同居させているはずだ。無理に統合しようとせず、共存・併存させておく、くらいでよいと思う。

暮らしの中で、「いま自分はどの経済圏で生きているか?」「どのような組み合わせになっているか?」を眺めてみよう。人生のフェーズによっては一つに振り切るのもいいかもしれないし、働き方を変えてみたり、もう少しお金以外の経済圏を取り入れてみるのもいいかもしれない。

複数の場所で暮らしたり、複数のコミュニティに所属することが当たり前になれば、今まで以上に選択しやすい時代になってくるだろう。

これからの時代に必要なものは何か?と問われたら、

「複数の経済圏を軽やかに行き来すること」

と答える。

さあ、経済圏をホッピングしよう!(エコノミーホッパー?)

画像1

皆で持ち寄って育む、“村”のようなコミュニティをつくってみませんか? コミュニティをつくりたい方、コミュニティに参加したい方はホームページをご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?