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【シェア街住民インタビュー】年齢・性別・障害の有無…みんなまぜこぜで生きやすい空間を・野口亜弥さん(後編)

前編に引き続き、元プロサッカー選手で、スポーツを通じた社会課題の解決を目指す活動をされている大学教員の野口亜弥(のぐあや)さんに話をうかがいました。後編はのぐあやさんの現在の活動や、大切にしている思いについて。聞き手は元アスリート同士ということで、競泳の元パラリンピック選手でもある森下友紀(もりしー)さんが務めました。

「思いを届けたい相手がどう思うか」を大切に

前編では、のぐあやさんがスウェーデンでプロサッカー選手となり、その後、ザンビアで学んだことなど、人となりやこれまでのことについて話をうかがいました。そんな中、ご自身として大切にしていることは何かありますでしょうか。

一番は、何にしても、思いを届けたい相手がどう思うか、ちゃんと届いているか、ということを大切にしたいと考えていますし、絶対的にそうしなければならない、と考えています。
今は大学で教員をしていますが、大学にはどうしてもヒエラルキー社会という部分がありますし、一方で、大学経営のためにも「学生を獲得しないと」という部分もあります。
そうしたどうしてもできてしまうしがらみのようなものの中で、自分に都合よく「学生のために」という言葉を使っていないか、それが本当に学生のためなのかについてちゃんと自分として考えながらやりたい、と思っています。

授業でも、学生たちが望んでいることがちゃんと伝わっているのか、ということを気にしますし、私が共同代表として、共生社会づくりを目標に立ち上げた一般社団法人S.C.P. Japanの方でも、関わる子供たちに対してそれがちゃんとできているのか、について気をつけます。
とりわけ、子供や学生は弱い立場になりやすいところがありますが、自分が彼ら彼女らの立場に立たずに「上から目線」になっていないか、ということを自制して考えます。

上から目線、というのは指導者が忘れがちな部分があると思います。それを大切にしているのは、とても素晴らしいと思います。

自分では、本当にそれができているか、分からない部分もあるのですが。

シェア街に参加されたきっかけや理由を教えてください。

シェア街主宰の柚木理雄さんとイベントで一緒になったことがあり、柚木さんがやることには興味があったので、様子を見ていました。
あと単純に、(ヤドカリ夫婦による)似顔絵が欲しかった。すごい可愛い、欲しい、と思って、クラウドファンディングに参加し、それでシェア街に入れる、ということもあって、「柚木さんのやっているコミュニティーに、似顔絵をもらえるついでに入れるならば」と入りました。

シェア街では、どんなことをしたいと考えていらっしゃいますか。

今の時点では、ちょっと遠くからどんな感じなのかを見ているだけなのですが、どうやってオンライン上でコミュニティーづくり、人とのつながりづくりをするのか、興味があります。
共通の何かを持つ者たちが集まっていて、いろんな人たちが場を作っていこうとしている。そういうのを、もっと参加しながら関わった方が良いのだろうな、とは思いながらも、今は遠くから見ていて、その中では研究職として物書きをしているので、シェア街メディアをやってみたら何か分かるかな、と考える部分があります。
シェア街では、Slack上でのやりとりが活発ですが、どうしてみんな自発的にしゃべるんだろう、主宰が何かをやって集まる、という形ではなく、その他の参加者たちが主体的。何がきっかけで、どういう動機でそういうことをやるのだろう、という点に興味があります。

シェア街について、面白いと思うことや、面白いと思う人について教えてください。

シェア街メディアの発信なども見て、単純に「いろんな人がいるな」と思っています。
自分は「コミュニティラボ」の拠点にいますが、そこで話されているトピックについて面白そう、と感じています。
「コミュニティラボ」の集まりには出てはいないのですが、ここに参加する人たちはどんなモチベーションで参加するのだろう、というのは気になっています。

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やりたい人がやっていることに色をつける

それをのぐあやさんに直接聞いていただけるような形になると、嬉しいな、と思います。コミュニティーに関わる際に大切にしていることは、何かありますか。

S.C.P.Japanはメインが3人で、その他、プロボノで参加している人たちとでやっています。
そこも自分にとってとても大切なコミュニティーで、そこの共同代表をやる中では、「興味あることをやればいい」と考えています。
「やりたいことを、やれる分だけやればいい」と思っていて、私はそれをやりたいし、やりたい人がやりたいことをやれる場を作りたい、と思っています。
「3年後にこう、5年後にこう」と私自身が決めすぎると重荷になるし、上手くできなかったら「やっていないじゃん」ということになる。
自分はバックキャスティング(未来予測をする際、目標となるような状態から想定し、それを起点に現在、何をすべきかを考える手法)で決めたいタイプだけれど、自分がやっているコミュニティーでは、やりたい人がやっていることに色をつけていければ、と考えています。

バックキャスティングはスポーツ選手がやりがちな部分がありますが、どうして現在のような考え方をするに至ったのでしょうか。

この団体を1年前からやっていて、やりたくて、作りたくて作ったので、私自身、やりたいことがいっぱいあったのですが、それが、メインで一緒にやっている他の2人のやりたいこととあまり合わないところもあるんです。
向こうもやりたいことがあるし、お互いテンポも違う。
でも、そのメンバーと一緒にやりたいからやっているので、そのメンバーが何をやりたいのか、そのメンバーのやりたい状況を整える方を優先したいと思いました。
私がやりたいことを言うと、「いいね」とは言ってくれるので、それもいつかはやると思うのですが、私を含めた3人のメインメンバーそれぞれと、プロボノの人たちが楽しい、やりたい、と思うものをやり続けた方が、上手く行くと感じました。


無理がなくて、「できなければ、仕方がない。できたものをやる」という方が、仕事をやっていてやりやすい。でも、何も軸がないとワシャワシャになっちゃう。どこかで軸みたいなものを作れば良いんだ、と思って、昨年の12月の終わりから今年の1月にかけて、共生社会のビジョンに対してどのアプローチでやっていくのか、を決めました。
私は共生社会について理論的に、いろんな本を読んで勉強しているから、その方向性から考えるけれど、他のメインメンバーは自分なりにプロジェクトサイクルマネジメント(PCM)手法を用いて整理してみて、その結果、「このアプローチでやりましょう」という部分について同意できたので、それに則って自由にやっていこう、という形にしました。

人と作る、回し続ける場所を作って行こう。そうすると、誰かと出会う仕組みができるし、対話も生まれる。あとは、何をしても良い。
そうすることで私もストレスがなくなるし、メンバーもこれさえやれば、あとは自分の思いの通りにやっていけば良いんだな、と考える。
なぜそういうスタイルになったか、というと、コミュニケ-ションの本を読んで、「コミュニケーションは、伝えようと思っても100%は伝わらない」ということを知ったから。
私も体験を通じて物事を語っているので、なかなか100%は伝わらないのですが、お互いに共感しているものがあるわけなので、何となくは伝わっている。それでいいんだ、と。100%やろうとしすぎるから、それに対して「できていない」と考えたりするけれど、そもそも100%伝わらなくて良い。「何となくでいいし、コミュニケーションとはそういうものだ」と書いてある本を読んだので、それに挑戦しているところです。

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今後のビジョンとして、どのようなことをやっていきたい、というものはありますか?

仕事としての自分のプロフェッショナルな領域で、開発途上国のジェンダー・セクシュアリティの課題についてスポーツがどんな役割を果たせるのか、という分野できちんと専門家としてご飯が食べられ、学生に教えられるように、柱を立てたいと思います。
仕事としての軸が自分の中にしっかりあって、その上で、仕事とライフの中間が私にとってのS.C.P.Japanです。共生社会におけるスポーツの役割についての「実践の場」がある。教育だけではなく、実践の場がある、ということが大事で、そこは、自分の好きな人たち、思いを共有して頑張ろうと思える人たちと作っていきたいと思います。
仕事としてプロフェッショナルな部分を構築していきつつ、今のS.C.P.Japanを、持続可能に多くの人たちが関わりやすい形で、障害の有無、貧富の差、年齢や誰を好きになるか、女の子男の子関係なく、まぜこぜで生きやすい空間を作りたい、というのが、自分が今、やりたいと思っていることです。

共感します。

一緒にやりましょう。

シェア街でも、共感する人がいっぱいいると思います。その他、シェア街の人たちに伝えたいメッセージがございましたらお聞かせください。

まだまだあまり、どんな人がいるのか分かっていないところもあります。森下さんもそうでしたが、話したら面白いし、面白い方々がたくさんいると改めて思いました。
「私と出会ってください」という気持ちです。
私も出会いに行かないといけないけれど、いつでもウェルカムで、いろんな人と話したいし、皆さんと出会いたいな、と思います。
私たちの活動の方向性も、シェア街と共通するところがあると思います。
シェア街はコミュニティーを作りたい、という取り組みですし、興味関心の合う人もいると思うので、一緒につなげたいと思います。

【クレジット】
編集・執筆:Atsushi Nagata Twitter / Note / Youtube
聞き手:森下友紀
写真:提供写真

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