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音楽探索記#7 「トップランナーの背中」

7月末から始まったパリオリンピックも終わりを迎え、それぞれの選手が素晴らしい結果や試合を見せてくれました。

オリンピックでたくさんの選手が活躍しているが、私はある金メダリストの引退記事を読んだ。

この方は金メダルを獲ってからは体調不良による影響が続き不本意な引退ではあると思うのですが、世界記録を破られないまま引退するという偉業はなかなか成せる事ではないと思います。


この記事を読んだ時にわたしは1枚のアルバムを思い出しました。

ゆらゆら帝国 / 空洞です (2007)


わたしは初めてこのアルバムを聴いたとき、すごく気持ち悪い音楽だなと思ったのを覚えています。

特に「学校へ行ってきます」はこれは何のジャンルの音楽なんだ?となるほど理解しがたい音楽でした。
この曲で気分が落ちた後の「ひとりぼっちの人工衛星」が優しくすごく救われた気分になります。

今では自分の音楽の趣味に影響をあたえた大事な1枚になるほど好きなアルバムになりましたが、聴きこむにつれて無力感や虚無感のような空っぽさを表しているのかなという解釈ができるようになりました。


そしてゆらゆら帝国は残念な事にこのアルバムを最後に解散してしまうのですがその時の坂本慎太郎のコメントがすごく印象にのこっています。

この3人でしか表現できない演奏と世界観に到達した、という実感と自負がありました。しかし、完成とはまた、終わりをも意味していたようです

ゆらゆら帝国は完全に出来上がってしまったと感じました

これ以上続けてもルーティンワークになるだけだ

坂本慎太郎解散コメントより


わたしはこのコメントを見たとき、この3人でしか表現できない演奏と世界観に到達したに対して『そりゃそうでしょう。』と感じました。
極力シンプルにそぎ落とし、人力テクノのような音楽やお化け屋敷のような怖い音楽、どうやればこんなロックにたどり着くのか。

この『空洞です』の世界観は誰も追いつけないスピードで先頭を走りそのまま消えてしまうようなトップランナーの背中のような気がするのです。

このいい意味で気持ちの悪く没入感の高い音楽と世界観を2007年に出し解散した、このゆらゆら帝国も追いつけない世界観という記録を破られないまま解散するという音楽での偉業を成したのではないのかとわたしは思うのです。


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