今どき理系学生のリアルな将来観(1)社会に対する展望と、就活最前線
理系学生は地域に目を向けるのか?就活の現場をレポート
こんにちは、企業の一速ギアを上げるメディア ISSOKU GEAR編集部です。
みなさんは、最近の大学生が社会や仕事に対してどんな展望を抱いているか、ご存じですか?
昨今の就活事情は、「Z世代の仕事観」といったようにまとまったイメージで語られることも多いですよね。でも、それって本当に実態をつかんでる?
もしかするとメディアがつくった“印象”であり、現実とは離れている可能性もあるのでは?と思い、今回、実際に大学院に通う学生たちに、「今の大学生・大学院生の仕事観や就活事情」についてお話を聞いてみました。
インタビューしたのは、主に「東京の大学・大学院に通う、理系学生」。
かつては、ものづくり系企業への就職が一般的であり、地域の企業(製造業)などと親和性のありそうな「理系学生」は、今の日本社会に対して何を思い、将来に対してどんな一歩を踏み出そうとしているのでしょうか。
理系学生の主な分類と、キャリアに対する一般論
ただ、理系学生と一口に言っても、そのバックグラウンドや興味分野は非常に多様です。
まずは、理系学生がどのように分類されるのか、整理してみました。
工学系(Engineering)
機械工学、電気電子工学、土木工学など、モノづくりやインフラに関連する分野が中心。
興味の対象:新しいテクノロジーの開発、ロボット工学、持続可能なエネルギー、都市計画など
キャリア志向:大手製造業、インフラ系企業、ベンチャー企業での製品開発などが一般的情報系(Informatics/Computer Science)
ソフトウェア開発、データサイエンス、AI、ネットワークセキュリティなど、デジタル技術に関連する分野。
興味の対象:人工知能、ビッグデータ、ブロックチェーン、サイバーセキュリティなどの最先端技術
キャリア志向:IT企業、スタートアップ、データ解析企業、フリーランスエンジニアなど、幅広いキャリアパスがある生命科学系(Life Sciences)
生物学、農学、医学など、生命に関連する研究を行う分野。
興味の対象:医薬品の開発、バイオテクノロジー、農業技術の革新、環境保護など。
キャリア志向:医薬品メーカー、農業関連企業、研究機関、公的機関での研究職などが一般的。物理・化学系(Physical Sciences/Chemistry)
物理学、化学、材料科学など、自然現象や物質の特性に関する研究を行う分野。
興味の対象:新素材の開発、量子コンピューティング、エネルギー変換技術、宇宙研究など
キャリア志向:化学工業、エネルギー関連企業、研究開発部門、アカデミアなど環境科学系(Environmental Sciences)
環境保全、気候変動、持続可能な開発など、環境問題に取り組む分野。
興味の対象: 環境保護、再生可能エネルギー、気候変動の影響、資源管理など
キャリア志向: 環境コンサルタント、再生可能エネルギー企業、NGO、政府機関など
このような分類の中で、今回インタビューしたのは、3.生命科学系を学ぶ学生・Aさんです。学部時代は農学部に在籍し、国際協力や社会課題の解決に強い関心を抱いているとのこと。
修士課程では都市開発などを学ぶAさんの行動と思考性をまとめました。
国際協力に関心あり。NGOに興味もあるが、稼ぐのが厳しい印象
海外志向が強いAさんは、将来的に海外での活動も視野に入れています。ただ、新卒カードは有効に活用したいと考え、ファーストキャリアを外資系コンサルタントとしてキャリアをスタートさせることを決意。
特筆すべきは、「転職を前提としたキャリア形成」を意識しており、3〜5年ごとに職場を変えることを視野に入れていること。
大学院までに投資してきた時間と資金を、早いタイミングで回収できるキャリアパスを望みます。
一方で、地方への強い関心も。“国内の社会課題を解決したい”
海外志向の強いAさんですが、日本を見限りたいわけではありません。
実際に地方の課題解決に強い興味を持ち、夏休みや春休みなど、長期休暇のタイミングで参加できるプロジェクトを探しているとのこと。
学んできた分野で貢献できることや、体験することで自分の学びになることは、「リゾートバイト」のような感覚で、地方に中長期滞在して積極的に挑戦したい、と話していました。
職場選びは「ホワイトかどうか」を徹底的にチェックしている
また、職場を選択する際に重視するポイントとして企業の風通しの良さ、「ホワイトかどうか(ブラックじゃないか)」をかなり意識しているようです。
「ホワイト」や「ブラック」の捉え方は人それぞれですが、Aさんが考える“ホワイトさ”は、
理不尽な意思決定がなされないこと
人間関係の風通しの良さ、フラットさ
直属の上司がヤバい人じゃないか
などがあり、情報収集のために社会人コミュニティや就活コミュニティでチェックをしているそう。
自分がのぞむキャリアパスの「目的」にいかに近づくかがかなり大事で、そのためにはインターンシップやOB訪問も厭わないとのことでした。
地域の企業も選択肢に入るのか?
Aさんに「地域の企業って、働こうと思う?」と聞いたところ、以下のような答えが返ってきました。
「実際に、地域にも面白い企業はあるんだろうけど、正直出会うきっかけは皆無だし、自分に何ができるかもよくわからない。接点がないから、検討もしない。地域に関心はあるけれど、知るチャンスがない状態。
学生の間に、なにかのきっかけでその地域を訪れ、企業と出会って職場体験なんかをした場合には、就職先として視野に入れることもあるのかも。
友だちが、地元が全く異なる地域のベンチャーの建築会社に就職して、古民家の改修事業をしている話なんかを聞くと、意味のある楽しそうな仕事だな、って思ってはいます」
Aさんがもつ志向性の重要な要素の一つが「学び続けること」です。
今後も転職を視野に入れながら、自分の成長を追求していくつもりと語っていることからもわかるように、「地方で新しいことに挑戦することで、自分自身も成長できる」ことは、選択肢のひとつになりそうです。
この考え方は、Aさん以外の理系学生にとっても共感を呼ぶ内容だと感じました。
まとめ:自分の成長が社会の成長につながることに価値を感じている
Aさんのインタビューを通じ、社会的にZ世代の特徴と言われる「タイパ」や「コスパ」を重視する傾向は確かにあると感じましたが、それ以上に「自己成長」に対する欲求の高さを感じました。
東京本社の大企業に勤めていれば安泰と考えてはおらず、どんな環境に身を置いても、効率的に成長ができ、自分の成長が社会の成長につながることに存在価値を感じているようです。
今後も、理系の学生がどのように就職活動やキャリア形成を考えているのか、そして地域企業に対して(特に製造業に対して)どんなふうな見方をしているのか、レポートしていきます!
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