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人生をゲームにする100の方法(16):IPと組み合わせる


若干更新が空いてしまったのは、「そもそも人生をゲームにする方法が100もあるのか?」と根本的な疑問に行き着いてしまったからだが(見切り発車にも程がある)、そんなことを気にせずに今思いついたものを書き留めていくほうが大事だと思い直したので再開する。


「人生のゲーム化」は既存のゲームと組み合わせる

で、IP(インテレクチュアル プロパティ、知的財産)の話である。というのも結局のところ、既存のゲームやキャラクターを組み合わせていったほうが、自分の人生はゲーム化しやすいのではないかと最近つくづく思う。

最近リリースされた『ポケモンスリープ』がわかりやすい。睡眠を推奨するアプリはこれまで山程出たし、使い勝手や正確性という意味では、これより優れているアプリは数多くあるだろう。僕はApple Watchを通して、より正確に記録できるAutoSleepのほうが使い勝手がいいと感じるし、『ポケモンスリープ』をただの睡眠記録アプリとして見れば、余計にやることがいくつもあって、正直めんどくさいとすら感じてしまう。

それでも、やろうと自主的に思えてくるところに、おそらく『ポケモンスリープ』の力、すなわちポケモンというIPの力がある。

世の中の「ゲーミフィケーション」の多くは、ゲームに本来なら内蔵されているであろうさまざまな要素が足りていないが、とりわけIPと物語の存在は軽視されがちだ。どんなにインセンティブを刺激するような設計を取ったところで、結局のところ僕たちが求めているのは物語であり、そこに登場するキャラクターである。なぜならそれこそが無機質なゲームに、アプリに、命を吹き込んでくれるからだ。

「人生のゲーム化」というプロジェクトを個人的にせせこましくやるにせよ(僕がそうしているように)、あるいはそれをアプリか何かしらの形で表現にするにせよ、一からキャラクターや物語を創造して組み合わせるのは、なかなかハードルが高いように感じる。

そもそも「人生のゲーム化」というのは、なかなかゲームのような娯楽性や刺激を得られない人生を、なんとかもっとおもしろいものに変えようというプロジェクトにほかならない。ゆえに、そこにさらに新たなキャラクターや物語を加えようとするのは、創作者にとってもユーザーにとっても認知的負荷が大きく頓挫しやすくなる。

結論、既存のIPと組み合わせるようなプロジェクトのほうが、人生のゲーム化をめざすうえでは効果的ということになる。

ゲームは優れたメタファーであることを思い出す

ではどのようなIPと組み合わせればいいのか?

ゲームというのは優れたメタファーであり、達成しようとしていること、行動しようとしていることにうまく紐づいたIPであることが望ましい。それこそ『ポケモンスリープ』の場合は、カビゴンというほぼ常に寝ているポケモンが存在しているため、直感的にどのようなアプリなのかわかりやすい。どういうことを表象したいのか、それを達成するIPは何なのかという視点から、IPを選んで物語を紡いでいく必要がある。

また『ポケモンスリープ』には、さまざまなポケモンの寝顔の写真を取ったり仲間にしたりできるというシステムがある。コレクションすることはゲーミフィケーションとしては基本的なメカニズムだが(→ポイントやバッジの獲得)、単に得られた睡眠時間を計測して可視化するのではなく、「ポケモン」という形に変換することによって、うまくモチベーションの行き先を「ずらす」ことに成功している。

言い換えると、『ポケモンスリープ』は睡眠を取ることに対して、従来とは別のかたちで目的を与えることに成功している。

ここで大事なのは、「従来とは別の形で」というところだ。睡眠が重要であることは、なぜか修学旅行先で「睡眠がいかに短いか」を自慢したがる中高校生を除けば、周知の事実であろう。

しかし僕たちはなかなか寝ない。少なくとも『ポケモンスリープ』が要求するような水準では。

理由はそれぞれだろうが、どんなに睡眠を取ることにメリットがあると説かれても、それが大きなインセンティブにならない人が少なからずいる。

でもそういう人たちの中には、一見すると本来の目的(=健康)や手段(=睡眠)とは程遠い要素である「ポケモンのコレクション」が、じつはめちゃくちゃ効くという人がいる。ひょっとすると、本来の目的を掲げるよりも、まったく直結しない目的を掲げたほうが、手段の実行は加速するのでは?と訝しがりたくなる程度に。

崇高な目的を掲げることは尊いことだが、それがプレッシャーになってしまい、行動が鈍るということはどんな場面においても起こりうる。

そうしたとき、あえてまったく(本質的には)関係のない目的を置いてみることが、行動を促し、結果的に目標達成に近づくということもある。

『ポケモンスリープ』を起動しながら、そんなことを考える最近である。




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