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《い》伊坂幸太郎【50音で語る】

“あ”〜”ん”まで、50音の頭文字で始まるものを順番に語っていくシリーズ企画です。対象となるテーマは物事、人物、作品など様々。主に自分の根っこに息づく趣味嗜好を掘り下げて、不定期で自分語りをしていこうと思います。

《い》伊坂幸太郎

浸りたくなる会話たち

あまり本を読まなくなった(それでも今年は結構読んでる)最近ですが、子供の頃はかなりの本好きで夏休みは山ほど本を読める期間と捉えてるくらいには読んでいまして。で、中学生ぐらいの時にこれは!という思いになったのが伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」でした。この映画版に当時ハローバイバイだった関暁夫が出ていて、都市伝説大好き中学生でもあった私は大いに反応し、原作を読もうと思うに至ったのでした。今思い返すと、ヘンすぎる伊坂幸太郎の入口。

「アヒルの鴨のコインロッカー」のあのラストを初めて読んだ時はあまりにもびっくりしすぎて、母親に熱弁を奮った記憶がありますね。号外だー!っていうような。ミステリーともなんともわからない小説の最後に凄いトリックが押し寄せるあの刺激、中学生が浴びていいやつじゃないですよね。あの超展開にすっかりやられてしまった私はしばらく学校図書館と町の図書館で伊坂幸太郎を読み続ける日々を送ることになるのでした。

当時2006、7年頃で「ゴールデンスランバー」までの第一期が全部既に刊行されていたのは大きかったです。宝の山じゃないか、と思いました。「オーデュボンの祈り」はデビュー作にして奇怪すぎて面食らったのですが、「重力ピエロ」や「陽気なギャング-」などジャンルは多岐に渡るけど、読後感はいつも驚きと共にほのかにじんとなるあの一貫性が好きで、中学生なりの“沁みたい気持ち”を満たしてくれる作品ばかりでした。

特に好きな作風が「チルドレン」や「フィッシュストーリー」みたいな緩やかに繋がる連作短編ですが、特に「終末のフール」は人生の一冊に数えられます。世界の終わりの数年前をオフビートに描く、大作の影に置かれそうな営みを拾う物語は妙に刺さったものです。こんな風に”終わり“を描けるのか!と。この間、Netflixで韓国制作のドラマ版がありましたが伊坂幸太郎が捨てた全要素を掻き集めたような別物で驚きました。私のアンチ大作な嗜好は伊坂作品で育まれたのかも、です。


そういえば中学の時に「死神の精度」を読んで書いた読書感想文で賞をもらった記憶もあります。文章を書く自信になった最初のきっかけかも。あと、医学部受験の面接で【人生を変えた出会い】みたいなテーマで伊坂幸太郎の作品群について喋って合格しましたね。まぁこれは“子供の頃に診てもらった小児科の先生”みたいな安直なアンサーばかり聞いてたら面接官も飽きるだろうし、ちょっと変化をつけてやろうと狙って獲りに行ったわけなんですけどもね。あとnote読書感想文で頂いた伊坂先生のサインは家宝にしてます。伊坂先生の字で「月の人」って!!(ヘッダー画像です)




伊坂作品の最大の魅力。これはずっと細かい話を重ね続ける、なんか笑っちゃうようなやり取りを並べ続ける、浸りたくなる会話だと思います。ああいうムードの会話が好きだったので、ゼロ年代の邦画とかにハマれたんだろうなぁ。あと小説世界が各作品でリンクしている、というのも魅力。これはコワすぎ!シリーズや、果てはマーベルシリーズにハマることにも繋がっていて、まさにルーツ。アンチ大作だったはずが、大作まで好きにさせることに繋がる伊坂幸太郎作品の魅力です。

特にオチはないので、この辺りで終わりとします。「ゴールデンスランバー」以降は前ほど熱量高く読めてないのですが、これってそもそも新刊リリース情報をキャッチするのが結構大変なのが理由だと思います。リアルタイムで追えない、というか。本って追いかけるの、難しくないです?いつのまにかもう新刊出てる!みたいなこと多すぎる気がして。ナタリーはあの時おやつナタリーでなくブックナタリーを発足させていたら、今も続いていたんじゃないかと思っているのです。


#伊坂幸太郎 #エッセイ

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