マハーバーラタ/5-9.「5つの町」の真意
5-9.「5つの町」の真意
ドゥルヨーダナは父を慰めるように話しかけた。
「父よ、恐れなくてよいです。
私はパーンダヴァの軍の大きさを完全に把握しています。スパイから詳細に聞いています。
13年前であれば、確かに私は打ち負かされるかもしれないと思っていました。
あの頃、クリシュナは軍隊を連れてカーミャカの森にいるパーンダヴァ達の所へ行き、私達を殺そうと提案したそうです。クリシュナはサーテャキやドゥリシュタケートゥ、ドゥリシュタデュムナ、ドゥルパダもと共に戦う準備を整えていました。
その頃は私には人望が無く、全ての王がユディシュティラの味方になっていたかもしれません。世界は彼と共にあるかのようでした。
私にはたった一人の友人、ラーデーヤしか味方がいないと思っていました。
しかし、ドローナは無敵のビーシュマがいるのだから恐れる必要はないと慰めてくれました。
親愛なる父よ。今はあの頃とは違います。
私達の方がたくさんの援軍を得ています。
しかも彼らの援軍は家系のしがらみによる結束で、
私達のように愛情で結束しているのではありません。
ビーマも恐れる必要がありません。私の方が強いですから。
私の師バララーマが言っていました。
ドゥルヨーダナこそ自分に匹敵する最強の戦士だと。
クリシュナとアルジュナもそれを分かっています。
ビーマの戦い方は力任せで、まだまだ未熟です。技がない。
彼の一撃は私の鎚矛を磨くだけで私に当たることはない。
彼と戦うのを楽しみにしているのです。
ビーマを倒したなら、パーンダヴァ軍の背骨を破壊したようなものです。
生意気で自惚れの強いアルジュナでさえ、私は殺すことができる。
そして私の軍隊を見てください。
偉大なビーシュマがいます。
彼は自分が死を願った時だけ死ぬ恩恵を授かった、まさに神のような人だ。
ドローナ先生がいます。
彼は凡人とは異なる生まれを持つバラドヴァージャの息子です。皆の先生である彼に戦いの技術で勝るものなどいない。
アシュヴァッターマーがいます。
シャンカラの恩恵によって生まれた彼は死ぬことはない。
クリパ先生もまた死ぬことはない。
これらの不死の戦士達がいるのに、何を心配する必要があるというのでしょう?
彼ら一人一人が天界の神に立ち向かえるのです。
アルジュナにはできません。
そしてラーデーヤがいます。
彼はバガヴァーン・バールガヴァに匹敵すると本人から言われています。
カヴァチャとクンダラを失ったから弱くなったと言う人がいますが、そんなことはありません。その代わりにどんな恐ろしい敵であっても確実に殺すことができるシャクティを手に入れました。
ビーシュマ、ドローナ、アシュヴァッターマー、クリパ、ラーデーヤ、バールヒーカ、ブリハドラタ、バガダッタ、シャルヤ、ヴィンダ、アヌヴィンダ、ジャヤドラタ、ドゥッシャーサナに続く私の弟達、そしてシャクニ。
敵の7アクシャウヒニに対して、こちらは11アクシャウヒニです。
まさに勝利は我が手の内にあります」
ドゥルヨーダナの演説は自信に満ちていた。
そして、皆が賛同してくれると思っていた。
ドゥリタラーシュトラ王はサンジャヤの方へ向いて質問した。
「サンジャヤ、パーンダヴァ達は戦争についてどう考えているのだろうか?
我が息子と同じくらい希望を持って綿密に計画を立てているのか?」
サンジャヤはわずかに笑った。
「計画ですか? もちろん戦争の計画を立てています。完全な準備ができています。あなたの息子と違う点は、彼らはそれを楽しみにしていないということです。それどころか彼らは可能な限りそれを避けたがっています。
ユディシュティラは私に頼みました。全力を尽くして戦争を避けるよう助けてくれと。
彼はこれまでの苦難や侮辱を全て耐え忍び、約束を守り、自分の国を返してほしいと言っています。
そしてそれすらも拒否されるのであれば、返還するのは5つの町でもよいとまで言っています。
その5つの町とは、インドラプラスタ、ヴリカプラスタ、ジャヤンタ、ヴァーラナーヴァタ、そして5つ目はドゥルヨーダナに任せると言っています。
彼の所にやってくるブラーフマナを食べさせていく為の最低限の富です。
それすれも叶わないのであれば5つの村でもよいと。
それほど譲歩してまで親族同士の戦いを避けたがっています。
カウラヴァ達とパーンダヴァ達が共に幸せに生きられる方法を探しています。
それが叶うなら、王国は放棄してもよいと。
18アクシャウヒニとして集まった者達や英雄たちの死を引き起こしたくはないのだと。
彼は誰に対しても秘密を持たないので自由に軍を見せてくれました。好きなだけ調べてよいと言いました。
軍の中で私は身元を明かしたにもかかわらず、何でも話してくれました。総司令官にはおそらくドゥリシュタデュムナが任命され、私達の側の一人一人に対して誰が相手するかも決められていました。
ビーシュマにはシカンディー。
シャルヤにはユディシュティラ。
ドゥルヨーダナと弟達にはビーマ。
ラーデーヤ、アシュヴァッターマー、ジャヤドラタと彼らの援軍にはアルジュナ。
トリガルタはマラヴァとサールヴァができるだけ食い止める。
ブリハドバラ、ドゥルヨーダナの息子達、ドゥッシャーサナはアビマンニュの餌食となる。
ドローナには当然ドゥリシュタデュムナ。パーンダヴァ兄弟も支援に回る。
ソーマダッタにはチェーキターナが一人で立ち向かう。
クリタヴァルマーには怒りに燃えるサーテャキ。
シャクニにはサハデーヴァ。
シャクニの息子ウルーカにはナクラ。
これが彼らの計画の概要です」
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