マハーバーラタ/2-おまけ「サバーの章」あらすじ、こぼれ話、個人的な感想

1章はたくさんの登場人物とエピソードが盛りだくさんでしたね。
後ほどそれらの伏線回収が待っています。
次の章は主要な登場人物はそれほど多くないし、新キャラもいない、かな?

この章は結構書いていて、しんどかったです。
五兄弟の悲劇の話ですから。最後は木の皮や鹿の皮だけを身に着けて森に追放されて終わるという。しかもドラウパディーまで一緒に。

普段使わないような荒っぽい言葉遣いを書くので、
登場人物の気分になって書こうとすると、自分まで荒っぽくなってしまう気がするんです。
小説とかの作家さんってすごいなぁと初めて感じました。

章の名前の「サバー」ってのはサンスクリット語で、「集会」とか「会議場」とかの意味です。

[2章のあらすじ]
前の章の最後、森を焼くエピソードの時に助けたアスラのマヤがアルジュナとクリシュナに感謝してお城を建設する。
五兄弟とクリシュナはもうすっかり仲良し。
クリシュナはアルジュナとスバッドラーの逃避行に使わせた馬車に乗って帰る。
マヤは一度ガンジス河の源流の湖に隠してある財宝を取りに行く。お城を飾る材料と、アルジュナにはほら貝デーヴァダッタ、ビーマには槌矛のプレゼント。
この新たなお城を見に来た来客の中で、残ってアルジュナから弓矢を習った代表がサーテャキ。クリシュナの親戚で、後の戦争で大活躍する人。

この頃、五兄弟に子供が生まれる。
アルジュナとスバッドラーの間に生まれたのがアビマンニュ。後に悲劇のヒーローとなる人。インド人は彼が大好き。
ドラウパディーは五兄弟それぞれとの間に一人ずつ子供を産む。
(だが、名前はあまり覚えられていない。なぜなら今後「ドラウパディーの息子達」としていつもまとめられて呼ばれてしまうから)

聖者ナーラダがやってきて、ユディシュティラに天界の話をする。
ユディシュティラは父パーンドゥがインドラの所ではなく、ヤマの所にいることを知り、どうすれば父をインドラの所へ送れるか聞いた。答えはラージャスーヤ。今までにハリシュチャンドラしか達成したことのない大きな儀式。全世界の王達に参加してもらう儀式(つまり、敵対する者がいない状態、敵対する他国を全て制圧するってこと)
争いが嫌いなユディシュティラは最初はあきらめていたが、弟達の協力で前向きになる。

[こぼれ話]
ヤマって時々出てきます。神様の名前。ヤマダルマって呼んだりもします。ヤマは仏教で言う閻魔様です。「ヤマ」が「エンマ」に変化したらしい。つまり死を司る神。ウパニシャドでの言い回しにこんなのがあります「うるさいな、これ以上ごちゃごちゃ言うならヤマダルマの所に送っちまうぞ!」って父から言われた息子は、父の言葉を偽りにしない為にヤマの所へ行った。つまり自ら死んでヤマの所へ行った。まぁなるべく避けたいのがヤマってこと。インドでは「ヤマハ」のバイクは売れないらしい。だって死神バイクですから。知らんけど。

[あらすじの続き]
ラージャスーヤをするにあたり、最も難しい敵はマガダ国のジャラーサンダ。クリシュナがいるヴリシニ一族でも勝てない相手。軍隊同士の戦いでは分が悪いのでビーマ、アルジュナ、クリシュナの三人だけで忍び込んで一対一の戦いを挑むなら勝機あり。狙い通りビーマとジャラーサンダの戦いとなり、ビーマの勝利。体を半分に引き裂いてもまたくっついて復活する恐ろしい敵だった。

一番の難敵を倒したので、その後はビーマは東へ、アルジュナは北へ、ナクラは西へ、サハデーヴァは南へ向かってそれぞれ手分けしてラージャスーヤへの招待、もしくは制圧をして回る。
サハデーヴァが南へ向かった時、ビーマとヒディンビーの息子ガトートカチャと会う。ガトートカチャにお願いしてランカのヴィビーシャナを説得。
(ランカは今のスリランカ。ヴィビーシャナはラーマーヤナでのラスボス、ラーヴァナの弟)
ナクラは制圧を終えて、もう一仕事。ハスティナープラへ行ってカウラヴァ達を招待。
弟達の協力で全方向制圧完了。

いよいよラージャスーヤの儀式本番。
が、ひと悶着。儀式の最中で必要になる来賓代表を誰にするか?
ビーシュマのアドバイスでクリシュナを指名。
納得する来賓もいれば、疑問に思う来賓も。
一人声を上げたのがシシュパーラ。皮肉たっぷりの反論。クリシュナをたっぷり侮辱。ビーシュマに対しても侮辱。

シシュパーラとクリシュナは元々因縁があった。
三つの目と四本の腕を持って生まれたシシュパーラ。
彼を殺す運命にある者の膝に乗せると余分な物がなくなるという予言。
判明したのはシシュパーラの甥にあたるクリシュナ。それが判明した時にクリシュナは叔母(つまりシシュパーラの母)をなだめた。100回侮辱されようとも彼は許してあげる、と。しかし、100回以上の侮辱をして、しかもクリシュナと戦おうとしたシシュパーラは敗れる。

もっと昔からの因縁があった。
ヴィシュヌ神(の生まれ変わりがクリシュナ)の付き人であるジャヤとヴィジャヤに賭けられた呪い。三回人間として生まれ変わるという呪い。その三回目の生まれ変わりがシシュパーラだった。なのでクリシュナはシシュパーラを人間という束縛から最後の解放をしてあげた。

ラージャスーヤの儀式が終わり、ドゥルヨーダナは弟ドゥッシャーサナ、シャクニ、ラーデーヤと共にユディシュティラの新しいお城を見て回った。アスラであるマヤが建築したそのお城には仕掛けがあった。嫉妬の気持ちを持ってその建物を見た者は欺かれるという。
水? いや、水面のようにきれいな大理石の床だ! と思ったらやっぱり水でバッシャーン。ずぶ濡れドゥルヨーダナ。出口だと思って通ろうとしたら壁でバコーン。ユディシュティラの弟達は爆笑。ドラウパディーも爆笑。ドゥルヨーダナは平静を装いながらも内心では怒り爆発。嫉妬全開。

何か方法はないか? パーンダヴァ達をこの世から追い出す方法はないか?
そこで悪知恵を授けたのが伯父シャクニ。
ユディシュティラの唯一の弱点を使う。
サイコロゲームが好きだけど、下手。
そして、年長者の指示は絶対聞く人。

こちらも新しいサバーを建築して、そのお披露目としてユディシュティラを呼び、単なる娯楽としてサイコロゲームに誘う。小さなものから賭けさせて、ユディシュティラを熱くさせ、最後には国を奪ってしまおう。そんな計画。
泣き落としで父ドゥリタラーシュトラを説得し、ヴィドゥラには無断で作戦決行。

ユディシュティラは裏にある悪意にうすうす気づきながらも運命には逆らえないとハスティナープラへ向かう。
予定通りサイコロゲームに誘われ、断れずに始める。
相手がドゥルヨーダナではなくサイコロの名人シャクニ。
絶対勝てるわけない。連戦連敗。

[こぼれ話]
シャクニが使っていたサイコロは彼の父の遺骨でできていて、絶対彼に有利な目が出る力が込められていたらしい。名人スキル持ちで、しかもイカサマだった。

[あらすじの続き]
負け続けるユディシュティラ。
宝石、金のコイン、ネックレス・・・どんどんエスカレートしていく。
ヴィドゥラが止めようとしたが、ドゥリタラーシュトラ動かず。
次に勝てばこれまでに奪われたもの全て返すと言われ、ゲームは続く。
持ち物全て、国も失った。
あなたの持ち物と言えるものならなんでもいいよと言われ、ゲームは続く。
弟ナクラ、サハデーヴァ、アルジュナ、ビーマを失った。
次に賭けたのはユディシュティラ自身。そして失った。
もう何もない。
記憶に残る名ゼリフ(限りなく気持ち悪い顔を想像して)
「まだだ・・・ドラウパディーが、いるじゃないか・・・彼女はまだ、賭けられていないよ」
妻も失った。

奴隷と呼ばれるパーンダヴァ達。
ここで議論となるのが、ドラウパディーを賭けた時はゲームが成立しているのかどうか。
ユディシュティラはその前に自分を賭けて失っている。
自分を失った者が妻を賭けられるのか?

ドラウパディーは奴隷呼ばわりされながらも毅然と反論。
でも力ずくで会場に引っ張ってこられる。
ドゥルヨーダナの弟ドゥッシャーサナがドラウパディーの髪を引っ張って会場に連れ込んだ。
五兄弟は沈黙。ドラウパディーを援護する者はなく、一人で論破しようと頑張る。(唯一の味方ヴィドゥラの意見は無視される)
ビーシュマは微妙な判定に悩む。
なぜかというと、夫はたとえ自由を失っても妻を所有するのがダルマだから。なので自分を失った後でも妻を賭けられる、と。(この論理は、現代の、日本人のセンスからするとうーーーん、って感じですよね)

五兄弟の中でも仲間割れが始まりそうになる。ビーマがキレて兄ユディシュティラの腕を焼いてやるとまで言いだすが、アルジュナに止められる。仲違いしたらカウラヴァ達の思うツボだと。

ここで一人、カウラヴァ側のいい奴登場。
ドゥルヨーダナの100人の弟の一人、ヴィカルナ。
一人反論するが、無駄に終わる。

ラーデーヤがトンデモ発言。(いい奴だと思ってたのにーーー!)
奴隷は奴隷らしい格好にしてやれ、脱げと。
五兄弟、服を脱ぐ。
ドラウパディー、お前も奴隷だ。脱げ。
(歴史に残る最古のセクハラ事件)
誰の助けもないドラウパディー。
着ているサリーを強引に引っ張るドゥッシャーサナ。

最初の内は泣き叫んで抵抗するが、最後は抵抗をやめ、この場にいないクリシュナに祈り始める。するとびっくり、サリーが伸びる伸びる。
クリシュナの恩恵で、どこまでも伸びるサリー。
サリーを引っ張り続けるドゥッシャーサナの後ろには虹色に輝く布の山。
疲れ果てて引っ張るのをあきらめる。肌をさらさずにすんだドラウパディー。

ビーマ、耐えきれずに激怒。誓いを立てる。ドゥッシャーサナの血を飲んでやる。(こえぇ。)

ドゥルヨーダナ、ドラウパディーに太腿を見せて合図。
(お前は俺の女だから膝に乗りな、的な侮辱ですかね)

ビーマ、また誓いを立てる。ドゥルヨーダナの太腿を破壊してやる。弟達も全員殺してやる。

アルジュナ、誓いを立てる。ラーデーヤを殺してやる。
サハデーヴァ、誓いを立てる。シャクニを殺してやる。
ナクラ、誓いを立てる。シャクニの息子ウルーカを殺してやる。

あわわあわわとなったのがドゥリタラーシュトラ。
うそうそ。怒らないで。全部返すから今日のことは忘れて、って。
全部返してもらったパーンダヴァ達は帰ろうとするが、それを知ったドゥルヨーダナが父ドゥリタラーシュトラを説得して、もう一回だけサイコロゲームをする提案をさせる。
勝った方はしばらく全世界の統括者。
負けた方は12年間森へ追放&13年目はかくれんぼ。
見つかったら12年間の追放からやり直し。
ユディシュティラ、運命に逆らえず、負け。

結局負けた五兄弟は森へ。
木の皮や鹿の皮を身に着けて準備。
母クンティーはハスティナープラに残り、ヴィドゥラがお世話することになった。
ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァ、ドラウパディー、ダウミャ(五兄弟の司祭)それぞれが復讐を暗示させる振る舞いをしながら森へ出発した。
ユディシュティラが顔を隠したのは、怒りの顔で町を焼いてしまわないように。(弟達とは違い、彼だけは復讐ではなく、町の人々を守る為)
ビーマが手を見ていたのは、復讐心を忘れない為。
アルジュナが砂を雨のように蹴り散らしたのは、矢の雨を降らせてやるの意味。
ハンサムな弟二人は町の女性に変な気を起こさせないように、顔を隠し、みすぼらしくした。
ドラウパディーが髪を結わなかったのは、カウラヴァの妻達がこんな風に悲しんで葬式に出席することになるよ、の暗示。
ダウミャがサーマヴェーダを唱えたのはカウラヴァ達の葬式が近いぞ、の暗示。

[冗談盛り盛りの裏話]
集会ホールに残った虹色に輝くサリーの山。
「なんとたくさんのきれいな布。どうしましょうか?」
「そうだな、これだけあればドゥルヨーダナの兄弟それぞれの奥さん100人分のサリーが作れるね。合同で結婚式をするらしいからこれで作ろう」
結婚式当日。
見事に光り輝く100人の花嫁達。なんとも見ごたえをある美しさの披露宴。
その時クリシュナが思い出す。
「あ、そうだった。あのサリー、もう要らないか」
パチンっ(クリシュナが指を弾いて術を解く)
「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
(100人の花嫁の叫び)

(3章へ)

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