スペースの必要性

前回まで、「整理整頓」について述べ、スペースの無駄を減らそうという話をしてきました。
ところで、スペースの無駄を減らした効果を、単なる時短、残業削減にとどめてしまっては、会社・組織としての生産性向上につながりません。かといって、単純に仕事量を増やしたり、別なものでスペースを埋めてしまったのでは、従業員は「頑張って改善してもかえって忙しくなるだけだよね」と受け止め、満足度はかえって低下しかねません。

ここで提案したいのは、できたスペースは「アソビ」に使うのがよいということです。
「アソビ」と言っても、単にサボることや仕事と関係ないことをする、という意味ではありません。新たなアイディア、仕事の「芽」を生み出すことに使いましょう、という意味です。

サッカーを例に出すと、得点はボールをゴールに入れること(当たり前)ですが、ゴールに入れるためには、「とにかくボールをゴールに近づければよい」と考えがちです。
しかし、明らかに力の差がある場合を除き、皆がみんなひたすらゴールに向かって突進し、ボールを蹴り込んでも、相手も人数をさいて守るので、そうそう簡単に得点は入りません。むしろスペースがなくなることで得点が入りづらくなるとも言えます。

そのため、サイドチェンジをかけたり、ある程度相手を誘い出したりすることで、スペースを生み出す作業をしながら、より「得点しやすい」状況をつくるのが基本、とされています。(ひところまでの日本代表とアジアのチームの試合でよく見られる光景)

これはサッカーに限らず、たいていのスポーツや、囲碁や将棋などのボードゲームにも通じるものがあると思いますが、いくら陣地を占領しているつもりでも(それ自体は有利なことですが)、そこに相手の意表を突く「アイディア」が加味されないと、必ずしも得点あるいは勝利につながらない、と言えるのではないでしょうか。

そのアイディアは、(情報と経験の裏打ちがあった上での)アソビ、つまりこれまでと異なる提案に他ならないのですが、日々時間に追われて自由度の無いところではなかなか生まれるものではありません。
だからこそ、アソビが生まれるためのスペースをつくるためにも、整理整頓の必要性を今一度強調しておきたいと思います。

なお、アイディア出しのプロセスについて、トヨタ式「TPS」というものがありますが、これについては別途述べたいと思います。

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