ワークライフバランス



この世界はカッコ良いことばで溢れている。




 
「環太平洋戦略的経済連携協定」

「ノンオイルドレッシング」

「天国へのカウントダウン」



 
視覚的・聴覚的に魅力を感じさせる言葉は多く存在する。



人はカッコつけたがる生き物である。




社会人になった途端、多くのビジネス用語を覚えさせられた。



「PCDAぶん回せや!」

「よし、さっきの合コンのフィードバック始めるぞ。」

「おい、聞いたか?SODオンデマンドとプレステージがアライアンスを組むらしい。」



知っていることが前提とした会話が次々と繰り広げられる。




僕が入った業界は専門用語が多く、「アトリビューション」「フリークエンシー」などの横文字だけでなく、「CPC」「CTR」「CVR」「CTA」「LP」「imp」「VtCV」「DSP」「SSP」「RTB」といった英略語が当然のように使われた。




言葉を覚えるのも大変だが、意味を理解するのすら難しいものも多かった。





僕は純粋に「カッコつけとんちゃうぞ。」と心から思った。





これは多くの人が感じたことだと思うし、僕は今でも普通に思っている。




専門用語については仕方のないものかなとも思うが、明らかに横文字にする必要が感じられないビジネス用語は多く存在する。



結構同じ意見の人も多いかと思うので、簡単にいくつか僕が嫌いなビジネス用語を発表する。
 





まずは“アジェンダ”という言葉である。



恐らくこれは僕が社会人になる前の大学生の頃に「ん??」と思った。


就職活動のために、ある会社の定時株主総会の映像見ている時に、司会の人が「本日のアジェンダはこちらになります。」と発言し、「アジェンダ???」と普通に理解できなかった。


そこでネットで意味を調べたところ、“議題”や“予定”という意味が出てきて、「なんだコイツは?わざわざ分かりにくいかつ長い言葉で表現してやがるぜ。」といったアメリカ人みたいな言い方で僕は呟いた。
 




次に嫌いなのは“フィックス”である。



意味としては“決定”や“確定”だが、個人的には“決定”や“確定”という言葉の方が響き的にカッコ良いと思う。



あと初めにすごく思ったのだが、fixという英単語には“修理・修正する”という意味がある。


受験勉強の時には“修理・修正する”や“記憶にとどめる”という意味で問題に絡むことが多かった気がする。


となると、「この会議の時間フィックスね。」と言われた場合は、それで確定なのか、修正するのかどっちか分からないではないかと思った。


実際には、接続詞や語尾の漢字で判断できたし、ほとんど“決定”の意味だったのだが、僕は嫌いだったので一度も使わなかった。



「これでフィックスね?」と言われても、「はい、これで確定です。」と絶対に言い換えて答えていた。
 




と、僕はビジネス用語が嫌いなのだが、そもそもビジネス用語が使われるようになった理由は、最初抱いた感情で間違いなくカッコつけるためだろう。




グローバルな仕事をしている感を出すため、もしくはグローバルな仕事をしている人に憧れている奴が中途半端に要所に英語を散りばめたせいで始まり、さらにそれをカッコ良いと勘違いした奴が影響を受け、しまいには全くグローバルに関係の無い仕事にも使われている。



楽天のように社内の公用語が英語ならカッコ良いと思うが、中途半端に使うのがダサいと思ってしまう。




 

そもそも高校生の時にも同じことを思った。





僕の高校ではそれまで“宿題”と言っていたものが、なぜか急に“課題”と呼ぶようになっていた。



やっている内容は何ら変わらないのに、なぜか急に名称だけが変化した。
しかも、周りの人達も何ら違和感なく使うようになっている。



僕は当時から「なにカッコつけとんねん。」と思い、大学を卒業するまで“課題”と呼ぶことはなかった。






 
もう一つ、大学にから授業で使う用紙のことを“プリント”ではなく“レジュメ”に名称が変わった。




大学に入学してすぐくらいの授業だったと思うが、教授が「大学では、“プリント”とは呼びません!“レジュメ”と言います!用紙のことを“レジュメ”と呼ぶことで、世間では大学に行っていた人だと思ってもらえます!」と笑い交じりに説明していた。




「なんやコイツは。へらへら何を言うとんねん。」と僕は授業が終わるまでその教授のことを睨み続けていた。





 
 
 
このように、僕は別に単純に横文字が嫌いなのではなく、余計にカッコつけることが嫌いなのである。






 
そもそもスポーツなどでは基本的に横文字が使われることが多い。




野球で言えば「ストライク」や「ボール」、サッカーで言えば「ドリブル」や「オフサイド」など横文字の用語が使われる。


これは当たり前のことで、そもそも海外で生まれて日本に輸入されたものだからである。



そもそものルールが海外で作られ、用語も日本に取り入れられて広まったために、そのまま英語の用語が使われている。


逆に、日本が発祥の相撲や柔道では横文字が使われることはほとんどない。
 
 




と、ここで思ったのだが、性行為は横文字のものが非常に多いのではないか。
(※以降、卑猥な表現等が含まれるため18歳未満の読書の方はお控えください。)




生命の営みの根源となる性行為には、日本語より横文字が使用されることが多い。





 
 
始まりはアダムとイヴという海外の方という説はあるものの、日本という地においても海外との関わりがない太古の昔から性を追い求められていた。


しかし、いつの間にかほとんどの行為が横文字で埋め尽くされている。




男性が○○を○○する行為や女性が○○を○○する行為、男性と女性があーなって○○のような体勢になって○○する行為など、大半が横文字になっているのだ。




仕事関係の言葉と同様に、性行為においては日本語と英語のバランスがアンバランスな状態となっている。




どうしてだろうか。





恐らく仕事関係と同様に、カッコつけたいがために誰かが横文字を使い始め、それに感化された人間が多く広まっていったのだろう。









仕事と性行為はカッコをつけたくような共通点があるのだろうか。









どちらも堅い方が女性から評価が高いからなのだろうか。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 水瀬
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?