きょうのさんぽ
今日は大切な日だったので、ライブのTシャツを着てお気に入りのネックレスをつけて出勤した。
ここ最近まったく思うようにオタクできてないけれど、身につけているだけでも気持ちがとても落ち着いた。
今月の給与明細をもらった。
バイトの時給が30円上がっていた。
たった30円でもけっこう嬉しくなれるもんだ。
1円・10円単位のお金に対する有難みを感じられるのって実は大人になってからなんじゃないかな、と思う。
例えば、ガソリンが3円安くなるクーポンがあるだけで全然ちがう、とか。
1人でガソリンを入れられたとき、運転中に車へ道を譲って運転席から軽く会釈をされたとき、自分は大人になったんだなと感じる。
でもまだ運転は少しこわい。
帰宅して数分、ベッドに腰掛ける。
無駄な時間を過ごせるのは、貴重。
だからわざと時間を置くときがある。
無駄を過ごすことに気が済んだら、いぬたちにハーネスをつけて散歩に行く。
肌から香る虫除けスプレーの匂い。
夏だな。
キャッチボールをしている近所の男の子たち。
怖くて苦手だったピアノの先生の家から音楽が聞こえてきた。
いぬの尻尾はくるんと上がっている。
いつも電気が消えているケーキ屋さんの灯りがついていた。
毎朝散歩に行っている父の方ばかりをこいぬが見る。
そりゃ当然なんだけど、くやしかった。
遠くの空が青と黄色のグラデーションを描いている。
夕空の色がピンクの時と黄色の時があるのはなんでなんだろう、と思った。
最悪のあだ名をつけてきた同級生の家の前にある坂道を、上る。
こうやって嫌な思い出ばかり掬いとって反芻してしまう癖をなんとかやめたい。
掬い取った灰汁ばっかり見つめたって意味なんかないのに。
でもこの散歩ルートを通る度に、嫌でも思い出してしまう。
だから本当はルート変えたいんだけど、いぬはもうこの道しか歩かないので仕方がない。
いぬが金網をジャンプで軽やかに飛び越える。
帰り道のいぬあしは、犬一倍チャカチャカと速く動く。
朝ごはんのときに思い切り噛んだ下唇が、未だにすごくいたい。
きょうのさんぽ、おわり。
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