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大いなる眠り レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳~読書記録377~

1956年に二葉十三郎が翻訳したが、2012年、村上春樹が新たに翻訳した。
レイモンド・チャンドラーといえば、探偵マーロウだ。
かなり昔に翻訳されていたが、村上春樹訳はやはり読みやすい。

十月半ばのある日、ほどなく雨の降り出しそうな正午前、マーロウはスターンウッド将軍の邸宅を訪れた。将軍は、娘のカーメンが非合法の賭場で作った借金をネタに、ガイガーなる男に金を要求されていたのだ。マーロウは話をつけると約束して、早速ガイガーの経営する書店を調べはじめる。「稀覯書や特装本」販売との看板とは裏腹に、何やらいかがわしいビジネスが行われている様子だ。やがて、姿を現したガイガーを尾行し、その自宅を突き止めたものの、マーロウが周囲を調べている間に、屋敷の中に三発の銃声が轟いた―アメリカ『タイム』誌「百冊の最も優れた小説(1923‐2005)」、仏「ル・モンド」紙「20世紀の名著百冊」に選出の傑作小説。待望の新訳版。

レイモンド・チャンドラー
作家。1888年シカゴ生まれ。七歳のころ両親が離婚し、母についてイギリスへと渡る。名門ダリッチ・カレッジに通うも卒業することなく中退。1912年アメリカへ戻り、記者などの職を経て、第一次世界大戦に従軍した。その後、石油会社の役員となるが、大不況や私生活の問題で解雇され、作家で生計を立てようと決意する。1933年にパルプ雑誌「ブラック・マスク」に寄稿した短篇「ゆすり屋は撃たない」で作家デビュー。

やはり、村上春樹独特の言い回しと言うか、文体は感じられた。それが気になる人もいるだろうが、村上春樹が訳しているから読む!という人がいるのも事実だろう。私もその1人であるが。
翻訳家はただ単に語学堪能だけでは務まらない。日本語も上手でないと、と思うのである。

村上春樹専門家とも言われている内田樹氏によると、村上春樹はレイモンド・チャンドラーの影響を多分に受けているようだ。
「羊をめぐる冒険」の羊はレイモンド・チャンドラーの「ロンググッドバイ」の村上春樹版なんだとか。

村上春樹自身、何度も読む作家としてチャンドラーをあげている。

個人的な意見を書かせてもらうなら、僕がチャンドラーの作品を読み続けているのも、やはりそこにある自由さに心を惹かれるからではないかという気がする。我々は誰しも自由に憧れる。しかし自由であるためには、人は心身共にタフでなくてはならない。孤独に耐え、ことあるごとに厳しい判断を下し、多くのトラブルを1人で背負い込まなくてはならない。(訳者あとがきより)

作品としては、え?結局、誰が殺したのよ?とか、ツッコミたいところはあったのだが、何しろ主人公のフィリップ・マーロウの存在感が強くて、それだけで満足してしまうのだ。
フィリップ・マーロウのファンは案外多い。
仁木悦子さんの探偵小説に出て来る三影はマーロウをかなり意識しているようだ。仁木悦子さん自身も、ハードボイルドが好きと言われていた。
ドラマ「相棒」にもマーロウ好きな探偵が出て来る。多分、相棒の脚本家がマーロウを好きなんだろうと思う。
何よりも、主人公の魅力。それがこの作品の一番だと思うのだった。

葉山にあるこの店のオーナーもマーロウ探偵ファンなのだろう。


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