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イスラーム化する世界と孤立する日本の宗教 関口義人~読書記録349~

2022年 関口義人氏による著書。


幼少の頃からキリスト教徒として生き、長年、欧米の一神教(キリスト教・イスラーム)の世界を渡り歩いてきた著者が追い続けてきた、宗教とは何か。日本人にとって宗教とはというテーマを自身の体験から語り尽くす。日本と世界のおもな宗教の起源から日本の新宗教までの基礎を振り返り、近年の動向から、世界の宗教はどこに向かうのかを考える。世界四大宗教(キリスト教、イスラーム、ユダヤ、仏教)にくわえ、ヒンドゥー教や日本の多々ある新宗教、そして神を否定する世界の無神論まで、データや起源、文化的背景、時代性や政治性などの基本情報を整理しながら、神の存在と不在、将来の世界の宗教までを読者とともに考えていく。

著者について
1950年、東京生まれ。3歳より両親とともにプロテスタント教会に通う。19~23歳までアメリカで音楽留学をしつつ、アメリカのキリスト教徒の実態を体験。1979~97年までヨーロッパ(東欧)でキリスト教正教会、カトリック、ユダヤ教などを体験。99年以降、バルカン、中東、アフリカ、アジアへの取材の中、イスラーム、ヒンドゥ、その他アニミズムや民族宗教を体験。日本の宗教事情の特異性を痛感したことが今回の著作につながる。


著者については、こちらに。

宗教学者は多いが、宗教をどう見るかは、その人の育った背景が深く関わってくると思うのだ。
団塊世代で大学紛争に巻き込まれた、実家がお寺、または神社。などなど。
偏った見方ばかりをするのではなく、色々な立場の著書を読むべきだと思っている。何が正しいかなど多分わからない。人それぞれ、選んだ道に満足すればいいと思うからだ。

著者はお祖父さまの代からのクリスチャン一家で親戚もクリスチャン。日曜日は教会に行く、キリスト教的な生き方が身についている人だ。
その視点から書かれている。
キリスト教、ユダヤ教、イスラームなどの一神教については詳しいが、日本の各宗教については、島田裕巳先生の本を参考にされている。
根っからの善い方なんだろうな、と思う。
一般人なら「これ、カルトだよね」「そうか、そうか」とか言っている宗教を悪く言わないのだ。
エホバの証人についてもカルト扱いをされないし、私のようにキリスト教会でイヤな目にあったことがないのだろうな。

又、イスラームについても、飯山陽氏のように
「全てのイスラム教徒はーー!」
と一括りにしない。そこは私も同じだ。
今現在、コンビニエンスストアで働く人を見ると、多分、イスラーム圏だよね?というような方が多くなっている。
その人が全員、飯山陽氏が言うように過激なのかなあ?
と、Twitterでコメントしたら飯山氏に速攻ブロックされた。
過激なのは、アルカイーダなどの一部の人だけだと思っている。
あまり行き過ぎて、Twitterやらで煽ると、ひろゆきを面白がらせるだけだろう。

著者が考察したように、イスラム教徒の人口比率が世界的に増えるのは出産によってだろう。
ヨーロッパ、日本などは少子化だ。ということは、教会のメンバー、寺の檀家さんは減って行く。

私なりに追加して考えた。
宗教教育もあるのではないだろうか。
戦後の日本は、仏壇、神棚のない家が増えてきた。自分の菩提寺を知らないという人も多い。
そして、ヨーロッパは教会離れが進んでいるという。
元クリスチャンで仏教徒のドイツ人僧侶なんかもおられるくらいだ。
それは、中世ほどの教会(特にカトリック)の権威がなくなってきているからだろう。
イスラム教徒は生活の中に宗教が根付き、ずっと守られているのではないだろうか。

著者は、イスラーム増加については、インターネットの普及をあげている。
難しいアラビア語で書かれた教典も翻訳ソフトで読めるようになった、と。
一方、キリスト教の場合、教会で言う事が絶対!ではなくなり、ネットを通じての見方が出来るのだろう、と。
私は最近、禅寺でヨーロッパ人の姿をよく見かけるのだが、ネットの普及もあるような気がする。
禅を始めとする仏教は哲学的なところがあるから。

とはいえ、この視点で語られる本も面白く、すらすらと読めた。

書かれた時期が2021年であるから、日本会議、並びに当時は影響力のあった安倍晋三氏について批判的に書かれていたが、もしも1年後に書かれたものだったらどういう本になっていただろうか。書物というのは、その時代にも左右されるのだなとも思うのであった。




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