見出し画像

秋の花~読書記録433~

秋の花 北村薫

幼なじみの津田真理子と和泉利恵を待ち受けていた苛酷な運命――それは文化祭準備中の事故と処理された一女子高生の墜落死だった。真理子は召され、心友を喪った利恵は抜け殻と化したように憔悴していく。ふたりの先輩である〈私〉は、事件の核心に迫ろうとするが……。生と死を見つめ、春桜亭円紫師匠の誘掖を得て、〈私〉はまた一歩成長する。シリーズ初の長編。


何故に、北村薫氏はこんなにも女性の目線で書けるのか?
これが素朴な疑問なのである。
安楽椅子探偵のような存在の円紫師匠であるが、どうしてこんなにも優しいのだろう。見事なまでの推理力。
私は、友を失ってしまった和泉さんの立場に感情移入しながら読んでしまった。罪の意識はきっと死ぬまで消えないのだろうな、と思うのだ。偶然の事故とはいえ、自分が殺したことに他ならないのだから。

人は生まれるところを選ぶことは出来ない。どのような人間として生まれるかも選べない。気が付いた時には否応なしに存在する自分というものを育てるのは、ある時からは自分自身であろう。それは大きな、不安な仕事である。
百年生きようと千年生きようと、結局待つというのは今という一つの時の連続です。もろさを知るからこそ、手の中から擦り抜けそうな、その今をつかまえて、何かをしようと思い、何者かでありたいと願い、また何かを残せるのでしょう。~本書より~

単にミステリー小説というよりも、深い人生観を感じる作品であった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?