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第78期名人戦第4局 ホテル椿山荘東京と名人駒

こんにちは。くわっちです。

第78期将棋名人戦第4局が7月27日、28日にホテル椿山荘東京で行われました。


個人的に前回と大きく異なるのは、撮影機材を変えたことです。これまでは自前のiPhone Xで写真を撮影し、それを元にイラストを起こしていたんですが、対局室でスマホをパシャパシャやるのはやっぱり気が引けるんですよね。

ということで、初のミラーレス一眼カメラを購入しました(月賦で!!)。購入したのは初心者でもプロ並みの写真が簡単に撮れてしまうということで評判のソニーα7IIIです。

正直、本体にレンズ付いてないの? レンズ高すぎ! とか思ってしまうくらい初心者なので、宝の持ち腐れにならないかと思ったのですが、そんな初心者でもこういう写真が撮れてしまうんですよね。

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というわけで、初の実戦投入となったカメラを抱えて江戸川橋からひぃふぅ言いながらホテル椿山荘東京までの坂道を登りました。

今回は写真やイラストを交えながら、第4局を振り返ってみたいと思います。はてなブログと違ってこちらは長めの文章を書き連ねる場所にしているので、お暇な方向けです。

対局会場となったのは東京都文京区にあるホテル椿山荘東京です。朝日新聞社と毎日新聞社の共催となった第66期から、4月初めに名人戦の第1局の舞台としてすっかり定着したホテルです。

しかし今年は新型コロナウィルスの影響で開幕延期。対局日程と椿山荘との日程調整の兼ね合いで、7月に第4局として開催する異例の事態となりました。

いつもなら桜の花びらが川面に浮かぶ春の景色だったのですが、今年は梅雨も明けきらぬ7月末。雨が降ったり、うだるような蒸し暑さと蝉の声が降り注いだりが刻一刻と入れ替わる名人戦となりました。

椿山荘は都会の中にありながら豊富な自然の残された庭園があります。ここは一般開放されていて、ホテルの利用者でなくても自由に散策することができるスポットです。今回はほとんど雨が降っていましたが、雨が途切れた朝にチャンスとばかりに一巡りしてきました。

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庭園の中腹にあるこの赤い橋は、映画『3月のライオン』で桐山零が走るシーンとして印象に残っているかもしれません。

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椿山荘の三重塔は国指定有形文化財として登録されています。室町時代に広島県の竹林寺に建てられたものを、藤田男爵が移築したものだそうです。

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京都の下鴨神社から社殿を移築したという白玉稲荷神社。

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紅葉の季節になると赤い橋から見下ろせる川が紅葉の赤に染まります。

また、桜も種類が豊富で、咲く時期が少しずつ違うので、割と長い期間桜を楽しむことができます。5月下旬から6月にかけて、蛍を見ることもできます。四季折々の楽しみ方ができる庭園ですので、お近くにいらした際には是非散策してみてください。

椿山荘での対局と言えば、名人盤と名人駒。特に名人駒は奥野作・宗歩好島黄楊赤柾盛り上げ駒の双玉(二枚とも玉将)として有名です。

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第4局の記録係を務めたのは、秋田県出身の田中大貴(たいき)三段。記録係のお仕事のひとつとして、対局に使われる駒を大切に預かり、毎朝駒磨きをするというものがあります。

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普通の駒(王将と玉将がある駒)の場合は、上位者(豊島将之名人)が王将、下位者(挑戦者の渡辺明二冠)が玉将を持ちますが、名人駒は両方とも玉将です。

田中三段によると、作者の名前が入っている方を豊島名人が持ち、書体が入っているものを渡辺二冠が持つのだそうです。

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こちらは対局室検分の様子。駒の山にある玉将の底の書を確認している豊島名人。

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この駒は長年名人戦の舞台で名局を演出してきた歴史ある駒であるため、それぞれの底面に入った「奥野作」「宗歩好」の文字の真ん中部分が見えにくくなっているんですね。このため、検分の際に豊島名人がしっかり確認をしたようでした。

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こちらは豊島名人から見た玉将の底。「奥 作」と辛うじて判別できます。

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豊島名人の扇子と懐中時計。

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対局前にクルクルっと鎖を巻くのが豊島名人のルーティーンです。

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こちらは渡辺二冠側。「宗 好」と辛うじて判別できます。

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渡辺二冠の扇子。


こちらは対局室に入室する前の両対局者のイラストです。椿山荘内の料亭錦水での対局ということで、ふたりともスリッパです。

廊下の奥の方から歩いてくるシーンを写真で撮り、そこからイラストを起こして色を入れたんですが、渡辺二冠の袴は群青色っぽく見えたんですね。

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しかし、実際に対局室で見ると濃い茶褐色のような色合いでした。照明の具合や角度で、着物の色はいろいろ変化して見えるのですが、基本的に写真の印象に近い色をパレットから選んで着色しているので、絵によって違った色味になってしまうんですね。

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対局中は基本的に対局室に入ることはできません。写真を撮影していいのは、朝と昼食休憩明けのタイミングです。

というわけで、二日目の昼食のブツ撮りをしてから対局室に向かいます。

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昼食休憩が明けて、両対局者が戻ってきました。対局再開です。

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二日目の18時からは夕休です。両対局者にはサンドイッチやおにぎりが出されます。渡辺二冠はマスタードやわさびが苦手ということで、サンドイッチではなくおにぎりを出すことにしています。

豊島名人はサンドイッチにおにぎりを追加。

それにしても椿山荘のサンドイッチもおにぎりも、私たちが想像するのとはちょっと違いますね。

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有休前には、形勢がどうやら渡辺二冠の方に傾いていたようです。急遽、副立会人の中村太地七段に朝日新聞デジタル用の生解説をしていただきました。こちらはそのときのイラストです。

渡辺二冠が、一見すると危険な隘路の先に勝機を見出した瞬間を、中村七段がわかりやすく解説してくれました。受けがないと思われた先手の玉が、逃げながら相手の玉の逃げ道を防ぐ攻めの駒になったというのですから、将棋はほんとうに面白いです。

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有休が明けて約30分後には、豊島名人が新しいマスクを装着し、羽織を着て投了しました。

以下は終局後の写真です。

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感想戦は一時間ほど続きました。

感想戦終了後、ABEMA中継向けに、マスクを外してカメラから距離を取ってインタビューが行われました。

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以上、名人戦第4局のこぼれ話をお届けいたしました。

豊島将之名人竜王の2勝1敗で迎えた第4局は、先手の渡辺明二冠が勝ち、2勝2敗のタイとしました。

第5局は8月7日、8日に東京将棋会館で行われます。8月決戦です。



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