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震災ボランティア活動報告(福島県相馬市・宮城県山元町)


今回は2011年の東日本大震災の震災ボランティアをされた石崎卓先生の活動報告として、『積聚会通信』No.67 2011年9月号に投稿していただいた記事を紹介いたします。
※内容は2011年時点のもので、活動等終了しているものもあります


『積聚会通信』No.67 2011年9月号掲載
新八柱はり・きゅう院 院長 石崎 卓

今回のボランティア活動に対して多くの方々からご寄付を頂きありがとうございました。
 
1. 活動内容
東京路上鍼灸チームとして4 月16 日から7月24 日まで、福島県相馬市はまなす館及び宮城県山元町中央公民館にて以下のようにボランティア鍼灸治療をして来ましたのでご報告させて頂きます。
 
① 延治療日数:21 日(相馬 11 日、山元10 日)
② 延参加スタッフ数:87 人(相馬 41 人、山元46 人)
③ 延患者数:322 人(相馬 172 人、山元150 人)
④ 基本活動パターン:東京を土曜日午後、車にて出発、福島市内のホテルで1泊、日曜日朝相馬市及び山元町に入り4~5 時間治療後東京へ帰る。
⑤ 活動主体:東京路上鍼灸チーム(主として月に2 回、NPOてのはし鍼灸班として池袋の公園にて路上生活者を対象にボランティア鍼灸治療をしている鍼灸チーム)
⑥ 治療方法:相馬・山元双方とも避難所の中にテントを張り、折り畳み式ベッド3 台にて鍼灸のみによる治療、カルテは共通使用、治療方法は参加者各自の治療方法。
⑦ 人員配置:受付=1 人、治療者=3 人の4人を1 グループとし相馬と山元に配置。
 
2. 活動をするに至った経緯
地震発生後東京武道館等に避難されて来られた人たちに対して友人たちが治療を始めましたが、この時点ではまだ東京路上鍼灸チームの力が最も発揮できることが何かはっきりしていませんでした。
 
3 月26 日、相馬にボランティアに入って瓦礫の撤去をしている土建業の友人が、「相馬の避難所の人達が、毎日固い床での寝起きで心身ともに疲れておられる。もし鍼灸をしてもらえるなら、東京・相馬を往復しているトラックに便乗してもいいし、相馬の宿舎も食事もガソリンも提供できる」との話を持って来られました。
 
相馬なら距離的にも実現可能と考え、まず4 月7 日に行って様子を見、その後具体的スケジュールを立てようと決めましたが、そのグループが私たちの行く寸前に3週間連続での作業に疲れ切って急遽撤退することになりました。
 
そこで、せっかく相馬に焦点を当てましたので独自に相馬に行くことにし、同行してくれる鍼灸師と車付運転手、そして今回話を持ってきてくれた土建業の人と計4 人で4 月16 日(土)17 日(日)に相馬に様子を見に行くと同時に治療に行きました。
 
3. 高かった鍼灸の需要
まず、はまなす館に行って驚いたのは、鍼灸の需要がとても高かったことです。段ボールに書いた「はり・きゅう 無料です」の看板を横においてテントの設営をしていると次々と治療を申し込まれました。当初相馬市内の避難所で人数の一番多いはまなす館と旧相馬女子高校の2 か所(どちらも約500 人)で始めようと思っていましたが、女子高は建物が古いため数日後に閉鎖となる予定と分かったのと、はまなす館での需要が高いということで、ここ1 か所に絞りました。
 
4. パターン化して継続、賛助金も40 万円超
(1) パターン化
今回は阪神淡路大震災の時と違い長丁場になると思っていましたので、毎週土曜日の午後福島に行き、日曜日治療して帰ってくるというパターンを作り、東京路上鍼灸チームを中心に同行して頂ける鍼灸師を募集しました。2 回目以降も当日館内にまったくアナウンスをしないでも治療ご希望の方が多く来られ、治療者は4~5 時間休みなく治療をし、昼食も食べられない日もあるほどでした。
(2) 賛助金
賛助金については特に募集しませんでしたが、治療に行けないがその代わりにと10 万円のお金を送って下さった人もいますし、私が土曜の午後と日曜に休んだので患者さんに知れ、患者さんから頂いたり、積聚会をはじめ参加鍼灸師の所属研究会からとか職場の仲間からとか普段治療している患者さんからとか頂いたりしました。
(3) 山元町へも
そのような形で賛助金も徐々に集まりましたし、相馬に6 回行った頃には同行してくれる鍼灸師の人数に余裕が出てきましたし、南相馬市の鍼灸師のご協力もあり、7 回目には県境を越えて山元(ここも約500 人避難)にても開始できました。往復の高速道路で工事や交通渋滞、そして台風に巻き込まれたりしながら、それでもちょっと足を伸ばして温泉に寄ったりして気分転換を図りながらの継続でした。
(4) 終了
そのような中で避難者が徐々に仮設その他に移られ、まず相馬の避難所が閉鎖され、その後山元の避難所が閉鎖されたことによりどちらも終了することにしました。
 
5. 患者さんについて(相馬・山元計)
① 患者さん数:128 人
延患者さん数:322 人
② 主訴:「肩こり・肩痛」=44.1%
「頸痛」=10.2%、「背部疾患」=3.4%
「腰痛」=42.5%、「膝痛」=19.9%
③ 鍼経験
なし=40 人、あり=34 人、不明=54 人
灸経験
なし=48 人、あり=26 人、不明=54 人
 
6. 活動を終えて
(1) 鍼灸単独で入ったこと
今回多くの三療関係や柔整関係の団体がボランティアで入りましたが、鍼灸のみで入ったと言う話はまだ聞いたことがありません。もし情報をお持ちでしたら教えてください。マッサージも一緒にするかどうかはいろいろなご意見がありどちらが良いとは言えませんが、私たちは鍼灸のみでここまで需要があったのですから、それなりの役割を果たしたと思っています。
上記 5③のように鍼灸が初めての人も大勢来られました。
(2) 活動開始がスムーズだったこと
私たちが動きやすかったのは、日頃から路上生活者に対しての鍼灸治療を公園にてしているためでした。どんな条件下でも(室内でも室外でも、暑くても寒くても雨が降っても)治療できるノウハウを持っていたことです。
 
当初避難所は避難されておられる方でいっぱいでした。特に山元町に初めて行った日は雨が降っていたし到着するまで施設の中でできるかどうかも分からない状態でした。その為、もし施設内が使えなくても外にテントを張って暖房もできるという体制で行きました。もちろんガソリンや食料・水も十分考えてです。でも、それらは毎月の公園での治療の延長線でしかありません。
(3) 開始時期について
私たちが開始したのは震災後37 日目で少し遅かったと思います。
 
上記 2 のように当初は27 日目に開始しようと思っていましたが、それでも遅かったと思います。医師たちが、薬がない、検査器具がない等々言っている時にもっと鍼灸師は活躍できたのではないかと思います。
(4) 若い鍼灸師の皆さんに感謝です
今回、原発事故の近くであるにも関わらず20代30代の若い鍼灸師の人達が中心になって参加してくれたことはとても心強かったです。でもまだまだ多くの鍼灸師に参加して頂ければと思っています。震災に限らず、路上生活であっても、誰もが当事者になりうるということを考えてお願いできればと思います。
 
今からでも遅くありません。まだ多くの患者さんが仮設住宅等で苦労されておられます。
 
7. これからのボランティア鍼灸治療
(1) 宮城県山元町
東京路上鍼灸チームとしては今は動いていませんが、“「まげんde ネット・みやぎ」山元町鍼灸プロジェクト”が山元町中央公民館での治療を継続するような形にて仮設住宅内で行っています。現地で知り合った仙台市の平山さんが運営しているボランティア団体で、ご推薦します。現地の鍼灸師さんの迷惑にならない限り、そして需要のある限り毎週日曜日の治療を継続されるとのことで、側面から支援したいと思っています。
 
毎回 30 名以上の患者さんが来られ、鍼灸師が足りなく治療しきれない人にお帰り願うこともあるとのことです。一応マッサージもしていますが、鍼灸のみの治療者も勿論歓迎と言うことです。
もしご希望の方がおられましたら、石崎までご連絡いただくか、代表の平山さんに直接メールしてください。

※現在、平山氏の治療は終了しています。
 
日曜日の日中に治療していますので、土曜日夜までに仙台のホテルに入って頂くか、夜行バス等で日曜日の朝仙台に着くようにして頂ければ、仙台から山元町へは車に同乗できます。日曜日の夜には東京に帰れます。1 回だけのご参加も歓迎です。
(2) 池袋
池袋の公園においての路上生活者に対する鍼灸治療は、毎月第2 第4 土曜日の夕方に継続して行っておりますのでご参加を歓迎いたします。ここでの経験も今後来たるべき大災害時の治療にきっとお役にたつと思います。