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喫煙と私

タバコを始めてもう十年になる。
私の銘柄はキャスター。十年のうちにキャスターはサブネームになってしまって今ではウィンストンだ。
吸い始めたのは、大人になりたかったから。

過干渉、ネグレクト、無視、ヒステリー、そんな母親に育てられたので私は箱入りで、無知で、無気力で、どこにも行けなかった。

一人暮らしを始めることが出来たのは、引きこもりの私が三流以下の大学に通う事になったのがきっかけだけれど、まあお互い「逃げ出せた」「追い出せた」と思っていただろうな。

一人暮らしを始めても過剰な臆病さは消えず、むしろ増大した。

友達が羨ましかったんだ。
年齢とともにナチュラルに成長していく友達が。
彼女はどこへでも行けそうだった。
危ないことだって、なんだって。
だからタバコを教えてもらった。

初めてのタバコは私がお願いして買ってもらった。
もう成人していたのになんだか悪いことをしているみたいで自分では買う勇気がなかった。

すぱすぱ吸ってけほけほむせて、美味しいものではないけれどなんだか嬉しかった。
喫煙者だと周りに言うと「意外だね」と言われることも嬉しかった。

私はもう過去の、親に造られたいい子の殻を破ったんだ。

百害あって一利なしなんて、そんなの嘘。

私にとってのタバコは人生を変えたんだもの。

愛するキャスター、よっぽどのことが無ければ辞める気はないよ。

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