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晋平太さんインタビュー『民生委員って、ラップミュージックのマインドに近い?! 』

このたび、民生委員・児童委員の広報戦略を担当させてもらいました。超高齢社会の地域において必要不可欠なボランティアが民生委員・児童委員。全国で約23万人の人たちが無償で関わっています。しかし現在、なり手不足に困っていて、その状況を改善していくための広報戦略を担当しています。民生委員ってなんか聞いたことあるような気がするけど、何しているのかわからない、そんな方、けっこう多いと思います。そこで今回、彼らがどんな人たちでどんな思いでやっているのか、を伝えるためにラップミュージックをつかった広報戦略を立案しました。民生委員は地域を愛して地域のことをなんとかしたいと思っている人たちです。それって地域を愛し、思いを伝えるラップの世界と近いと考えたからです。そして私たちは、たくさんの民生委員さんにお話を伺い、その思いをラップにしました。そのラップの監修を、日本を代表するラッパー・晋平太さんにお願いし、最高のラップが完成しました!ちょうど楽曲が完成したタイミングで晋平太さんのお時間がいただけるということで、いろいろとお話させていただきました。(聞き手:社会の広告社 山田英治)

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山田「このたびはご協力ありがとうございました!おかげさまで人生初のラップでしたが、民生委員の皆さん、ノリノリでやってくれました」

晋平太「それは良かったです。歌う本人たちが楽しい!ということを意識して曲の監修をさせてもらったので」

山田「最初に僕の方でラップを書いて、それを晋平太さんに改訂していただいて、すごく歌いやすくなったし、うわー、さすが、 参りました!って思いました」

晋平太「ラップって、どうしても文字数が多くなるので、できるだけ短くコンパクトに自分の思っていることを伝えるために、いただいた原案を基に、その本質を大切しながら枝葉はとっていくということをやらせていただきました。逆に、山田さんは、ラップを書くことはどうでしたか」

山田「いやぁ、難しかったですね。韻を踏むのは同じ語尾を使えばいいということではなくて、同じ母音でもいいんだ、とか、ほんとにラップの初歩も知らないまま、書いていったので。しかも民生委員さんたちの思いの本質がズレないように、かつ広報戦略上のコンセプトを入れ込みつつ作っていったので、大変でした。だからそれを生でフリースタイルでする方々ってほんとにすげーな、自分には絶対に無理って思いました。

今回、民生委員さんのマインドとラッパーは近いっていう仮説のもと、民生委員の思いを伝えるラップを作ろうって思ったんですが、そのあたりどう思われます?」

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晋平太「そこはほんとに一緒だと思いますね。ラッパーは「フッド」を大切にすることが基本なんです」

山田「フッド?」

晋平太「フッド(hood)は、brotherhoodとかneighborhoodからきた言葉で、『俺らのまち、地元』みたいな意味で使います」

山田「なるほどー」

晋平太「そもそもフッドを大切にするということは、ヒップホップとして当たり前の話なんです。自分たちの住んでいるコミュニティーとか自分たちの仲間や家族のためになることを、ラップを使って発信して自分たちの暮らしを豊かにしようというのがヒップホップのもともとの原点なんです。

地元の子供たちとか、困っている人とか、何でもいいんですけど、気持ちを伝えたいだろうなぁ、でもその方法がないな、という人たちに、ヒップホップをわかってもらいたいというか、やってもらいたいなというのはすごくあります」

山田「民生委員の皆さんも地域を愛する。地域で困ってる人たちによりそい、それを解決するために行政機関とか福祉施設とか学校とかを繋いで解決し地域をハッピーにしていく、その意味で一緒ですよね」

晋平太「そうですね、全く」

山田「実際に民生委員とラッパーとのコラボっていろいろできそうですね?例えば、民生委員って貧困とか生きづらさを抱えている子たちの支援をしたり、介護予防のためのサロンを開いたりしてるんですが、「ラップで健健康体操」とか、ラップで子供たちとおじいちゃん世代をつなぎ合わせるようなイベントとかできそうですよね」

晋平太「全然ありですね。実際に今、全国の自治体で地元の良さを発信するラップ講座のようなものを開いたりしているんです。 

出典 https://representlocal.jp/

僕らの大事にしている概念に、『レぺゼン』っていう『レプリゼント・代表する』というものがあります。だから、なぜ地元を大切にするかっていうと、自分を育ててくれたところ、自分の住んでいるところを大切にするということなんです。自分の出自、つまり自分がどこから来た、誰なのかというのがヒップホップでは、すごく大切なルールです。その地元を守ってくれている人たちが、自分たちの街を守ってくれているというのは、すごくリスペクトできるというか、すごく尊敬できるなと思っています。だからこそ、それぞれの地域で自分たちのいいところを出しあって、それをみんなでラップしていくというプロジェクトをやっています」

山田「おー、これは地方創生×ラップという試みなんですね! 素晴らしい! 
ぜひ今度、ラップ×全国民生委員で何かやりましょう!」

晋平太「そうですね!」

『PEACE・LOVE・UNITY・HAVING FUN !』それって社会の広告社が目指してることでもあるんです!

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山田「正直に言いますと、僕は今までラップをあまり聴いてこなかったんですが、今回、晋平太さんの本を読んだり、フリースタイルダンジョンを見たりして、いっぱい勉強させていただいたんです。そこで気づいたことがあって、なんか僕の中にあったラップのイメージがものすごく変わったんです」

晋平太「例えばどんなことが?」

山田「フリースタイルとかって、すごくバトルじゃないですか。喧嘩みたいな感じが際立つ。だけどすごく聴いていくと、ただの喧嘩じゃなくて、なんだろう、つなぎ合いとか、リスペクトがあっての、つながる手段なんだなという感じがしました。それぞれが抱えている孤立を知っているとか、いろんなものをつなげた手段で、ラップがあるんだなって。すいません、皆さん的にはそうだよ、当たり前だよってことかもしれませんが」

晋平太「ラップは自分のことを知ってもらう手段ですね。僕らは、最初は自分のことから始まって、それが地域のことになって、さらに自分たちの国のことになって、という発信のためのツールだと思っていて、バトルはなぜするのかというと、自分のことを知ってもらうためで、世の中に出るんだ、という思いももちろんあり、自分にはこういう優れたところがあるよというアピールでもあります。そのわかりやすい例として、相手をおとしめて自分を上げるということをします。ただ、それって、バトルの中でも初歩の技なんです。そればっかり際立ってしまいますが、本当は、それがやりたくてやってるわけじゃない。本当は勝つためとか、自分を知ってもらうために、仕方なく相手を悪くいったりしています」

山田「おー、そういうことかぁ。自分をアピールするために相手をおとしめる」

晋平太「最初はね。でもベテランになれば、そういう部分は減ってくるし、もっと美しいといったらなんですが、それこそ、つなぎ合いのようなバトルもあるんです。ヒップホップを深く知ってもらい、地域のために仲間のためにやっていこうね、というような」

山田「ちなみに、ディスり禁止のバトルってあるんですか?ほめ殺しバトルみたいな」

晋平太)お題でそういうのはあったりするし、スリリングじゃなくなったりもするんですけど、お題について誰が1番うまく話をまとめられるのかを競うものもあります。ラップというのは無限にどんなラップをしても本当は良くて、自分の生い立ちがハードだった人はそれを歌ってもいいし、今日、犬の散歩に行った人は犬の散歩に行ったストーリーを歌い、それを人が聞いてくれて、かっこよければそれでいいわけですよ。MCバトルに出たら、相手をディスり倒さなければいけないっていうわけではなくて、相手をほめて会場が盛り上がったらそっちの方がよいわけで、人の気持ちをキャッチするということが大切なんです。バトルと言うのはとても大切だし、ヒップホップの大切な部分ではあるんですけども、全部じゃないです。強烈な一部分でインパクトが強いけれど、全部じゃないよ、と」

山田「晋平太さんは、今、ラップは伝える手段だとおっしゃっていましたが、社会的なメッセージについてはいかがでしょうか。僕らは「社会の広告社」という会社を経営していて、まさに社会的なテーマやメッセージをクリエイティブに、歌にしたり、ときにはポスターにしたり、イベントにしたり、映画にしたりして伝えるということをしてるんですけど、晋平太さんは今後、ラップに込めてメッセージしたいなと思っていることはありますか。例えば社会テーマとか」

晋平太「例えば、社会テーマというと、ラップって社会的なメッセージだよな、というイメージもあると思うんです。例えば、政治家に文句を言うとか、そういう側面もありますし。ラップは、アメリカで生まれて、差別されてきた黒人、マイノリティーが始めた音楽だという側面はもちろんすごく大事だし、現場の不満や現場に対するアイディアとかを広げる役割をラッパーもすべきだと思います。そうした中で、日本で僕が生きていて、社会的なメッセージや何かを、もっと柔らかくじゃないけど、わかりやすく言うのがいいのかな、と思います。僕らがやっている活動も、社会的側面はすごくあると思うし、それも伝え方なのかな、と。

ヒップホップとかラップは、別に、僕が誰かに文句を言うためのものではなくて、コミュニティーのためにある参加型の音楽なんですよ。見ている人はプレイヤーの1人だし、例えばダンサーがいたらダンサーもDJも誰しも、役割は違うけれど、1つのものを作っています。僕は社会的なのかわからないですけれど、ヒップホップにはもともと、PEACE・LOVE・UNITY・HAVING FUN (平和・愛・団結・楽しむ)っていう原則で、ヒップホップが始まった時に、ズールー・ネーションと言う組織が決めた4つのルールがあるんです。それを僕は日本でもやりたいし広げたい。別にヒップホップの人だけがPEACE・LOVE・UNITY・HAVING FUNで、平和に愛し合って団結して楽しめばいいというわけじゃなくて、そういうマインドなんです。僕はそれが好きでヒップホップをやっているので、ヒップホップってそういうものなんだよ、と。

「PEACE・LOVE・UNITY・HAVING FUN」を提唱したのがAfrika Bambaataa  出典:Hip-Hop Legend Afrika Bambaataa Facing Allegations of Sexual Misconduct With Minor | Music | News | BETより引用

ヒップホップは興味なくても、平和に愛し合って団結して楽しんで、何か物事が悪くなるってことは絶対にないじゃないですか。それを伝えるのが、僕の社会的活動とかなのかな。いろんな側面を通して、いろんな、例えばこういう機会をいただいて、伝えたいメッセージっていうのは、PEACE・LOVE・UNITY・HAVING FUN なんです」

山田「お、それって社会の広告社が目指してることです。楽しく社会を良くしていく、という。HAVING FUNがないと続かないし、人を巻き込むことはできないと思っていて」

晋平太「僕もそうだと思います」

山田「PEACE・LOVE・UNITY・HAVING FUNは、民生委員さんとも繋がりますね。民生委員の今回のキャンペーンのキャッチフレーズが『つなぐ、ささえる、地域とともに』というもので、それをラップで伝える、ということは、まさにHAVING FUN!

今後ともよろしくお願いします!」

晋平太「こちらこそ!」

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これからも弊社の仕事について発信していきます。

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