あの国民的有名TVアニメも担当!日本で初めての障害者の就労支援B型施設でのアニメーション制作!?ソーシャルアクティビストの生き様ドキュメンタリー 沢田知也さん

この記事は、上記インタビュー動画の書き起こし記事です。

合同会社ふくろうグループ代表 沢田知也さん
聞き手・撮影  山田英治(社会の広告社)

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沢田さん
沢田知也と申します。合同会社ふくろうグループをはじめとしたいくつかの法人の代表をさせてもらっています。母体となる会社は介護福祉サービスの会社をやっていまして、ケアマネージャーの事業、訪問介護の事業、デイサービス、グループホーム、そして障害者向けの就労支援サービスをさせてもらっています。

山田
今日、是非お声をいただきたいと思ったことは、皆さんがされている中で、障害者の方がアニメーションを制作するということはあまり聞いたことがなく、すごく面白いと思って今日うかがったのですけれども、その業務自体はどんな仕事になるのでしょうか。


【「ちいかわ」「ジャンプ系アクション漫画」のアニメ作画などを、全国で初めて障害者の方(就労支援B型施設)が担当】


沢田さん
実はあまり聞いたことがないとおっしゃったのはそのとおりで、調べてみたら全国で初めての事例(就労支援B型施設にて)と分かりました。弊社でさせてもらっているのは、テレビアニメの作画をする仕事と、企業さんから引き受けたコンセプトをもとに、企画脚本から撮影編集まで一貫して商業アニメを作るというような2つの仕事をさせてもらっています。

山田
それを、障害を持った方がされているということですよね。

沢田さん
そうですね。

山田
どういった障害をお持ちの方が多いのでしょうか。

沢田さん
うちに通われている方の多くは、精神障害の方もしくは発達障害の方がほとんどですね。

山田
アニメーションってすごく細かい作業ですし、きちんと世の中に流れているものを作るということは、納期を守らなければいけないとかいろいろな厳しい制約があると思います。そういった中で精神障害の方たちにとって、それは可能なことなのでしょうか。

沢田さん
実際にその納期に関しては本当に厳しいので、利用者さん単体でクリアするというよりは、職業指導員という会社のスタッフが側について納期のやりとりをしたり調整をしたりします。納期がちょっと厳しいなとなった時はスタッフも手伝いに入ります。

テレビアニメというのが元々、製作委員会という大きい会社さんたちがお金を出し合う(形で)できています。そこから元請の制作スタジオさんがその仕事を受けて、元請けの会社さんから下請けの動画制作などいろいろな会社に振っていくというふうになるのですが、弊社の場合はそこの下請けの一部として、絵をワンカット担当させてもらうというようなことで、企画とかではなくあくまで作画の一部を担当させてもらっているという形になります。

山田
今すごく有名な作品も実はされているのですが、名前を出してもいいのでしょうか。

沢田さん
出していいものと出してはいけないものがあって、「ちいかわ」さんは名前を出していいと言ってもらいました。あとはまだ名前は出してはいけないのです。他にはジャンプ系のアクション漫画のアニメ化は、もう何本かさせてもらっていますね。有名な作品に関わらせてもらうということで、利用者さんたちは本当に生き生きとやりがいを持って仕事に取り組んでもらえたのかなというふうに思いますね。


【ハイレベルな絵を描く人が集まったので始めたアニメ事業は、B型就労にぴったり】


山田
それはどういったきっかけで始めたのでしょうか。

沢田さん
アニメを始めたきっかけは、もともと就労支援B型自体のパソコンを使った就労支援というのを立ち上げていたのですね。きっかけは滋賀県内では内職型の就労支援がほとんどだったので、デスクワーク自体をすることによって生産性の向上でその工賃を上げられるのではないかなという思いで始めました。

パソコンを使って仕事をするB型就労の方を立ち上げたところ、イラストや絵を描くのが好きというか、普通に頑張ったら仕事として成り立つのではないかというレベルのクオリティの方達が集まってきたので、そういう方達が継続してこの仕事を受注できる内容といったら、アニメの事業がB型就労としてぴったりだなというふうに思いました。

絵のクオリティー自体がもう素人目で見ても、これ欲しいな、買いたいな、と思うくらいのものもあったりしました。でも実際に障害者とか関係なく絵で飯を食うということが本当に大変だということは調べれば調べるほど分かったのですよね。そういう中で、なんとか彼らの絵を描くという強みを活かした仕事は何かないかなと探していたという方が近いかもしれないですね。

その時アニメの需要があるということが調べて分かったので、じゃあアニメの事業をうまく回すにはどうしたらいいかと考えて、ビジネスモデルを組み立てていって準備を半年間くらいやり、その後に走らせたというところです。

山田
需要があるというのは、どういうところで感じたのでしょうか。

沢田さん
アニメコンテンツの販売の展示会みたいなものがあったのですが、バイヤーはいろんな国から大企業が集まっているけれども、出展者がいないという状況でした。ということは、需要はあるけれど供給はない状態だなと考えました。じゃあアニメって今、求められているのだなという感じでした。

チーム集めとしては、まずアニメを描ける人間はある程度は社内にいました。その前から動画の編集の仕事をやっていた人間がいたので、アニメの中の動画編集の部分もできるなというのは思ったのですよ。あとは仕組みの部分です。アニメの経験者がいなかったというようなところがネックなのですけれども、ただそれをいってしまったらそもそも、自分が福祉の経営の経験をしたことはないですけれどできたので、そこは問題ではなく経験は後で何とかなるということで始めたということですね。

山田
すごいですね。経験は後で何とかなるというその精神、素晴らしいですね。できるようになるまではそんなにすんなりいくものだったのでしょうか。何か大変なこととかはなかったのでしょうか。

沢田さん
大変なことだらけでしたね。ただみんな障害はありコミュニケーションは難しいですけれども、優秀な人たちはたくさんいます。それぞれが同じ方向を向いて、みんな勉強して手探りでやったというところですかね。

スタッフも自分達で勉強しないといけないので、そこの部分のプレッシャーはありましたし、僕自身も何とか売上を上げないと工賃を払えないという感じで本当に必死にやっていました。とにかく勉強したとしか言いようはないのですけれども、やったことないことでも手を出してみて、勉強できそうなセミナーはどんどん行ってみて、書籍もたくさん買ってというところですね。

山田
アニメが元々好きな子達が集まっているから、より一致団結したチーム感が出てくるのでしょうか。

沢田さん
それはあると思いますね。ちょっとした休み時間でもアニメの共通話題が多いので、そこの部分で仲間意識というのはすごく強いのではないのかなと感じます。


【ひきこもりの人も、アニメの仕事で自分の絵がお金になるのを体験】


山田
どんな方がアニメ制作に関わられているのでしょうか。

沢田さん
最初はひきこもりで、趣味で絵を描くだけで仕事なんて考えたこともないという方が、アニメで仕事ができて自分の絵がお金になるということを体験しました。仕事が終わった後でも絵の練習などをして、めきめきと上達していっているという方がいらっしゃいました。そういう方たちというのは、健常者と変わらないくらいテレビアニメの仕事をこなし、成果を出しているのではないかなと思います。

アニメというのは1秒で何枚もの絵を書かないといけないので、描いている時は同じ絵みたいな感じだと思うのですが、実際に映像として流れたら、本当に自分(本人)が描いた絵が動いているように感じます。しかも自分が描くのは線を描くのですけれども、その後に色がついて特殊効果もついて声も乗っかってきてとなったら、自分が描いた絵に魂が入るような表現などがされています。アニメが流れているのをTVで見た瞬間というのは、その子達は満たされるのではないかなと思います。

山田
一緒にみんなで、職場で(アニメの放送を)見ようというようなことはあるのでしょうか。

沢田さん
あります。勉強会なども開いているので、そういうのを流しながら感想を言い合ったりとか、この技術をいいねと話し合ったりというところですね。

山田
他にはどんな方がいらっしゃるのでしょうか。

沢田さん
元々ひきこもりだった方で弊社の事業所に通い始めて、最初はウェブデザインなどの方に行っていたのですけれども、趣味で絵を描いていたのでアニメの方にも行きたいなということで、アニメの部門に移ってきた方がいらっしゃいますね。その方は去年の4月から始めてちょうど1年くらい経つのですけれども、もう今はイラストを描くのが好きだったというところから納品するところまで成長したなというふうに思います。

山田
先ほど聞いたのは男性も女性も半々ぐらいですかね?

沢田さん
そうですね。

山田
いわゆるひきこもりという方も多いのでしょうか?

沢田さん
そうですね。ひきこもりになって障害が分かるっていうよりは、社会に出てから何かしらの精神障害や鬱を患って外に出られなくなってしまったという後天的なパターンが多いのかなというふうに思いますね。

山田
精神障害の方の就労支援ということだからこその苦労や、気にしなくてはいけないことはあるのでしょうか。

沢田さん
すごく頭の回転が早い方が多いのですよ。ですので、自分(私)が意図せずに何気なく言った言葉が、頭の回転が速すぎて、いろいろ考えすぎて誤解を招くみたいなことがあったりしますので、言い回しの表現だったりとか、相手に送る文章、指導の仕方というのはかなり気をつけていますね。

山田
個性はみんな違うのですか?

沢田さん
もちろん違います。

山田
それぞれに合わせた伝え方というところを意識されて経営されているということですね。先ほどピアサポーターの方がいらっしゃっていましたけれど、あの方は元々ひきこもりの経験があったのでしょうか。

沢田さん
そうですね。彼も社会に出てから自分の障害に気づいたパターンなのですが、よくある子供の時から何か変わっているな、というようなことを感じていたようです。でも芸術系の学校で、ちょっと変わっているだけだから芸術肌なのかなくらいの感じだったのですが、社会に出て働いてみたら何かおかしいみたいな感じになり、検査をしたら発達障害や多動症、自閉症を持っていて、そこから付随するような形で鬱も発症してというところですね。精神病院に入院するところまで行って、そこから退院してリハビリする流れで、うちのB型を利用するようになったのですね。

山田
彼は普通にご利用者として参加されて、一緒にアニメーションを作る中で、今は逆にサポートする側に回れるくらいになったっていうことでしょうか。

沢田さん
そうですね。

山田
どのぐらいの期間でそこまで成長されたのでしょうか。

沢田さん
2、3年くらいですかね。


【ピアサポーター※として、支援者として働きながらアニメの制作にも関わられている河合さんにお話しを聞きました】

(※ピアサポーター:障害や病気の経験や共通することを通して、同じ境遇にある仲間をサポートする人のこと)


河合さん
デスクトップに(フォルダが)汚く並んでいるのですが、多くの人はデスクトップを隠した方がいいじゃないですか。ただ私の場合は病気の症状の特性上、フォルダに入れてしまうとやっていたことを忘れてしまいます。視界に入らなくなると忘れてしまうので、画面に並べて目に入るようにしています。

山田
そうなのですね。そういった障害特性のところを自分自身で把握しているということが大事なのでしょうか。

河合さん
自分の特性というのがこういうものなのだと把握できているというところは大事だと思うのですけれど、その事象で起こる対処法の方が結構大事かなと思ったりしています。例えば転んだら怪我するじゃないですか。転んで怪我をする事を防ぐのは、かなり難しいのですが、転んだ後に消毒液をつけて絆創膏を貼って跡が残らないようにすることに似ているというか(怪我することを防ぐよりは大事だと思いますね。)

山田
アニメ制作はアフターエフェクト(動画制作ソフト)でやっているのですか?

河合さん
そうですね。アニメの合成作業は基本的にアフターエフェクトが多いですね。

山田
アニメ制作には監督の指示書みたいなものがあるのでしょうか。

河合さん
そうですね。よくタイムシートと言われます。

山田
タイムシートは何が書いてあるのか私にはさっぱり分からないです。最初は読み取れないですよね。読み取れるようになっていくのは慣れでしょうか。

河合さん
そうですね。1枚1枚の絵になる前の設計図的なものですね。場所が書いてあって天候がこうでカメラワークとか撮影効果とかが指示されています。(作業にかかる時間は)1カット大体3時間から4時間ですね。

山田
1カットで!大変だ!


【アニメーターの方にもお話しを聞きました】


山田
この親子の絵を描かれたのでしょうか。

アニーメーターの方
ラフの状態でスタッフさんが描いてくださっていたのを元に、背景とキャラクターの書き込み、色塗りまでしました。

山田
もともと絵はされていたのですか。

アニーメーターの方
絵はもともと趣味でイラストを描いていました。

山田
アニメ制作はやってみてどうですか。

アニーメーターの方
イラストとは全然違うのですけれど、すごく速くクオリティ高く描くみたいな感覚です。それがすごく絵の練習になって上達するのを、月単位ぐらいで自分でも感じられるのでそれがすごくいいなと思っています。自分1人で練習したら、ダラダラしてしまうので。

山田
こちらに来てからどのぐらい経つのですか。

アニーメーターの方
私はここのオフィスには去年の6月くらいから来ています。

山田
ここに通い始めてどうですか。

アニーメーターの方
自分の目的の絵の練習をするということも1年近くいて達成されているし、現在進行系ですごく上達も感じられています。あとアニメという動く絵というのは描いたことがそれまでなかったのですけれど、それも面白いなと思っています。描いたものが動くとか、実際に放映されて自分の名前が載ったりしているのがすごく嬉しいなと思います。

山田
それは嬉しいですね。テレビ番組を見ていて自分の名が出ている訳ですね。それはご家族や友達とかにも自慢しましたか。

アニメーターの方
家族にはちょっと恥ずかしくて言ってないですけれど、機会があったら言うかもしれないです。


【就労支援に来る彼らが、世の中の産業を担っているのだというところまで持っていきたい】


山田
これからチャレンジしてみたいことはありますか。

沢田さん
今は障害のある方がマイノリティという感じではあると思うのですが、実際に日本経済はどんどん人口や労働力が減っています。海外の方たちに入ってきてもらって何とか持つかどうかみたいな中で、逆にそういった障害特性を持っている方たちの特性を生かすことで、日本経済の復興といいますか、プラスの効果はあるのではないのかなと思っています。

就労支援がただの居場所ではなくて、彼らが世の中の産業を担っているのだというところまで持っていきたいなと思っています。さらに言うとアニメという日本文化を海外に輸出して、そこで売り上げに変えて還元したいなということは目指しています。

山田
具体的に海外に輸出するアニメは作っているのですか。

沢田さん
今度マレーシアに行く予定で、そこでカンファレンスに参加して広告代理店の方たちと話をして開拓しようと思っています。実際に今一番求められているのは、シンプルに日本のコンテンツ作品を求められています。ただ僕らはそこまで大きいアニメを作ることができるわけではないので、企業さんの広告としてのアニメであったりとか、教育で使うような短いショートアニメだったりを考えているところですね。

―障害を持つ方たちの特性を活かしたアニメ制作で
日本の産業を盛り上げていきたいー
合同会社ふくろう代表 沢田知也


◆沢田さんが運営するB型就労施設でアニメーション制作をしている
「Shake Hands」サイト はこちらです⇨ https://www.shake-hands.info/


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