#200 北朝鮮と韓国の建国神話

1910年から第二次世界大戦が終わるまで、朝鮮半島は日本に併合されていた。日本の敗戦後に朝鮮半島でつくられた国が北朝鮮と韓国だ。北朝鮮はソ連を後ろ盾として、韓国はアメリカを後ろ盾として建国されたことから、朝鮮半島は社会主義陣営と資本主義陣営によって二分された対立地帯となってしまった。

北朝鮮を建国したのは金日成(キムイルソン)。現在北朝鮮を統治している金正恩(キムジョンウン)の祖父である。実は、「金日成」は本名ではない。本名は金成桂(キムソンジュ)。1912年に生まれた金成桂は、朝鮮と中国の国境付近にある白頭(ペクトゥ)山のふもとで抗日運動を行っていた。日本の治安部隊に追われるとそのままソ連へと逃げ込み、大尉としてソ連軍の中にある朝鮮人部隊を率いるようになった。

このような過去から、ソ連が自分たちに都合の良い国家を建国する際にリーダーとして選ばれたのである。その時に利用したのが「キムイルソン伝説」だ。「日本の統治下に日本軍と勇敢に戦い続けた将軍がいる、1919年の三・一独立運動の際にも運動の先頭に立って朝鮮の人たちを指導した」というキムイルソン伝説は都市伝説のようなものだった。1919年と言えば金成桂は7歳である。さらに、金日成は日本軍と10万回戦ってすべて勝利したという伝説もある。1日10回、365日戦い続けたとしても27年かかる計算だ。

このような伝説を通して金日成は神格化されていったのだが、自分が王朝を打倒したわけでもなく、国民から選ばれたわけでもない金日成は、反対派を粛清したり朝鮮の武力統一を目指すことによって自身の権力を高めて行くことになった。

さて、韓国ではアメリカの支援のもと李承晩(イ・スンマン)が大統領になった。李承晩はアメリカの大学に通っていたことがあり、キリスト教徒でもあったため、アメリカ人と同じような価値観で政治を行うことが可能だと考えられたのである。

韓国が建国神話に利用したのは三・一独立運動である。韓国の憲法である大韓憲法前文には、「悠久な歴史と伝統に輝く我々大韓国民は、3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し」という一文がある。

三・一独立運動では、弾圧された朝鮮の人々が中国に渡って「大韓民国臨時政府」を組織した。しかし、200人ほどの小さな軍隊の運営費を含めて、臨時政府の運営費用は中国(中華民国)がすべて負担していた。独立した政府とは名ばかりの組織だったが、その組織を建国のルーツにすることで、大韓民国の正統性を主張したのである。

【目次】

【参考】※とくに第2章・第3章を参照


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