#52 銀色でない銀閣寺

金閣寺はこれでもかというくらい金箔が使われており、豪華絢爛な見た目であるのに対し、銀閣寺は地味な純和風高級旅館といった趣きである。一体なぜなのか。応仁の乱後の財政難で銀箔を貼る予定が貼れなかったという説もあるが、もともと貼る予定がなかった説というのが有力である。

金閣寺は、3代将軍足利義満が権力を示すために建てたとされる建物で、政庁としても使われていた。しかし、銀閣は8代将軍足利義政が引退後に趣味の世界を楽しむためにつくった建物である。そのため、当時の室町文化の特徴である「わびさび」を重視した質素なつくりになっている。
足利義政の跡継ぎ争いとして有名な1467年からはじまった応仁の乱だが、その時も義政は健在であった。世の中が戦国時代となっていくのを裏腹に義政は隠居して趣味の世界に打ち込み、銀閣が完成したのは1485年である。政治の世界から離れて静かに過ごしたいという人が銀箔を貼ったギラギラした場所で暮らすのは違和感がある。義政は質素な建物で落ち着いて暮らしたかったのだろう。

ちなみに教科書で必ずと言っていいほど銀閣とセットで登場する和室の写真は、東求堂堂仁斎という銀閣の隣にある建物である。銀閣の内部写真ではないので注意が必要だ。


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